携帯を伏せて枕に顔を押し付ける。目から勝手にこぼれていく水分をカバーに吸わせながら、喉の奥からねじり出すような、獣のうめき声にも似た慟哭を同じように枕カバーのシミにした。
油断していた。侮っていた。「所詮娯楽」という油断があった。だからこんなにも苦しい。ノーガードの腹にプロのボディブローが入ったに等しい状況なのだから当然だろう。わかっている。わかっている。わかっているとも。

"fin"という表記が暗い画面にぷかぷかと浮いている。波の動きに合わせて上下するような、その些細な揺らめきにさえ涙腺が刺激されて、それでも惜しくて画面を動かすことが出来ない。ひとまずスクリーンショットを撮って、それを型落ちのスマホが保存するまでの数秒を余韻に浸るために使った。
指先で画面を弾けば、きらりと星が輝いて画面はトップページに戻り、オープニングムービーを流し出す。そのオープニングのそこかしこに伏線を見つけてまた泣いて、それも終えればようやく人心地ついて今度はSNSを立ち上げた。

「これは泣いた……やって……みんなやって……早く…………」

語彙の全てを放棄した文面と先程のスクリーンショットを投稿すれば、もう良いだろうと言わんばかりに腹がエネルギーの催促をする。そういえば昨日の夜からなにも食べていない。のそのそ起き上がってとりあえずペットボトルの水を飲む。水分補給が終わるといよいよお腹に形のあるものを入れたくなって、けれど料理をするようなテンションではないので菓子パンの袋を無造作に開いた。

窓の向こうの空はすっかり茜色だ。もう一日は終わる。寝て起きれば朝が来る。
起きた私は社会人と呼ばれる生き物で、出社して働いて退社して寝るというのが一日の中枢を占める。

だから今日はこんな風に使うと決めていた。明日社会人と呼ばれる私のために、今日は決して社会人ではない使い方にしようと決めていた。

明日の自分へ、これはガソリン補給だ。
頑張ろう。明日も頑張ろう。今日のガソリンで、明日もしっかり生きていよう。