sideY
「で、デート?普通にショッピングじゃなくて?」
「いやいや、デートでしょ!由依は彼女が好きなんだから。好きな人と出かけるならそれはデートだよ?」
「…女の子同士の仲良しお出かけショッピングじゃダメなの、、?」
「いや、それにしても1ヶ月で由依も中々口答えするようになったねぇ、、」
あの昼ご飯の時から1ヶ月。
私と森田さんは違うクラスだから頻繁に会って話したりはできないけど、たまに一緒に昼ご飯を食べたり、メッセージは毎日送りあっている。
私たちはまだ1度も休日とかに遊んだことはない。
だから、そろそろ誘い時かなって思ってはいたけど、、中々勇気が出なくて拗らせていたら、ついに痺れを切らしたのか理佐が…
「んでも、とにかく誘わないと始まらないよ。」
「そうだよね、分かってるけど…」
「ほらほら、見ててあげるからさ!今文章考えなよ!」
「えー、でも、、」
「でもじゃない。なら1人でも書けるの?」
「…書けない、、。」
「それなら今書く!」
またもや理佐の圧に負けた私は、メッセージアプリを開き、彼女のトーク画面を開いた。
そして、そのメッセージボックスに文章を打ち込んだ。
"もし都合が合えば、今週の日曜日お出かけしない?"
結局いつものようにしか書けなかった。
しかし、理佐はこれでいいと言ってくれた。
送ったすぐには既読はつかなかった。
この間の時間が私にとってはとっても緊張する時間なんだ。
その日の夜のこと、メッセージアプリを開くと、彼女からの返信が来ていた。
内容はメッセージ一覧からは確認できないため、ドキドキしながら一覧から彼女の名前を選んで開いた。
"こちらこそ、よろしくお願いします。"
「…!やった!」
お出かけに誘うことに成功した私はベッドの上で足をバタバタさせて喜んだ。
日曜日は明後日。どんな服を着ていこう?その日は何をしよう?
そんなことで頭がいっぱいになった。
「…(そして、、)」
そう、彼女にこの気持ちを伝えようか…。
伝えたらもしかしたら、せっかくのこの関係が崩れてしまうことだってある。
今までの楽しい思い出も、嬉しいことも、全てがなくなってしまうかもしれない。
それは怖いし、、嫌だ。確かに、ここから踏み出さなければ、私はずっと彼女の隣に居ることはできそうだ。
でも、心が隣にいられるのは1人だけ。
彼女の心を掴むことができるチャンスは明後日だと私は思った。
本当に私は彼女が好きなんだ。
誰にも負けないくらい、、好きなんだ。
私らしくない、と言えばそうかもしれない。
理佐に言わせれば笑いものかもしれない。
だけど、私は踏み出すことを決めた。
もし、、壊れたとしても…
後悔したとしても、、それさえも思い出にしてしまえる程に、、。
それくらいの覚悟はできている。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「…よしっ、、。」
お出かけ当日、私は待ち合わせの駅のトイレの鏡で顔を確認して、頬をパチンと叩いて覚悟を決めた。
メイクもコーデもバッチリ。
自分の中では高得点な容姿で待ち合わせの場所へと急いだ。
待ち合わせ場所付近に着くと、そこには白いワンピースを身につけた一際輝く少女が佇んでいた。
間違いない、間違えるわけがない、、。
あんなにも輝いているんだから、どんな人混みにいたとしても必ず見つけられる。
「お待たせ、ごめんね、遅れちゃって、、。」
「小林さん、そんな、待ってなんていませんよ。私も今来たところです。」
「…そっか、、」
「…?」
「誰か、男の人とかに話しかけられたりはしてない?」
「いえ、、そんなことはされてませんよ。そもそも私みたいなのに誰も話しかけませんよ。」
「そっかー、それなら良かった。森田さん、あまりにも可愛いくて輝かしいから、、狙われてないか心配になっちゃって。」
いつか理佐が言ってた。
由依が森田さんに対して思っていることは素直に口に出した方がいいって。
だから、もう包み隠さず行くことにした。
「…そ、そんなこと、、それを言ったら小林さんだって、、、!」
「私?私は森田さん程可愛くなんてないし、、。」
「可愛さもありますが、、その中にクールな感じもあります。何だか言葉は拙いですが、、とても素敵です。」
「本当?ありがとう、頑張って良かった!それじゃ行こうか?」
こうして私たちのお出かけは始まった。
森田さんは何をしたいのか聞いたところ、ゲームセンターでシューティングゲームをしたいらしい。
何だか意外だったけど、すっごく拘った化粧品の店とかに行くことにならなくて良かった。
正直そこまで化粧品の種類とかには自信が無いから…。
シューティングゲームはあまりやったこと無いけど、森田さんと一緒にやったら問題なくクリアすることができた。
なんだかサポートされてばかりでカッコ悪かったけど、隣をチラッと見た時に真剣な眼差しの彼女がいて、それも可愛くって、そんなのはどうでも良くなった。
森田さんがやりたいことをやったから、次は私が昼食を何にするか決めて欲しいとのことだった。
私は駅の近くに出来たイタリアンレストランが気になっていたから、そこでパスタを注文した。
初めて来たから不安だったけど、、私も満足だったし、彼女も美味しかったと言ってくれた。
帰り道に本屋があったため、新刊が出てないか確認するために寄った。
その途中で、あるグラビア女優の写真集が目に入った。
流石に開いて読もうとは思わなかったが、その表紙の水着を着た彼女の姿を想像して、勝手にドキドキしていた。
「…、小林さん?」
「…、あっ、うん、どうしたの?」
「小林さんこそ、何見てたんですか?」
「う、ううん、何でもない!」
ジドーっと生ぬるい目線を私に向ける彼女。
確かにそんな彼女も可愛いけど、、でも、こんなことを想像していたなんて知られたら本当に終わりだから咄嗟に誤魔化した。
そんなこともありながらも、そろそろ帰る時間が迫っていた。
「今日はありがとうございました。とても、楽しかったです。」
「こちらこそ!また、一緒に遊びたいな。」
「私もです。また来ましょうね。」
言わなきゃ、昨日も一昨日も、あれだけ覚悟を決めたんだから。
それではまた、と言って、駅の方へと歩いていく彼女を私は声を振り絞って呼び止めた。
彼女は止まってくれて、こちらに来てくれた。
「…っ、あの!」
「…!」
緊張からか少し勢いがついてしまって、彼女を驚かせてしまった。
だけど、、止めたりはしない。最後まで言い切ると決めたんだから。
「…森田さん、私、、森田さんのことが好き。」
「…っ!」
「最初会った時からずっと私の瞳には君が光り輝いて見えていたんだ。遠い光だと思っていたけど、君と話してみたら、そんなんじゃないって分かった。君も1人の女の子なんだって気づいた。そうやって思った日から、もっと私は君のことが好きになっていたんだ。私と一緒に遊んでる時も、ただ純粋に楽しんでるんだって伝わってきた。出会いから今までで君のことを全て分かったわけではないけど、だからこそ、これからも君のことを知りたい。ダメかな?」
思いの丈を全て彼女へと綴った。
これだけ伝えてダメならば諦めよう。
「…、私も、、実は、同じ想いでした。」
「…っ!?そ、そうなの?」
「はい、いつしか、ちょっと子どもみたいなところもある貴方のことが気になっていて、、会話を重ねるうちに…好きになっていました。」
「…な、なんだか恥ずかしいな、、」
そんなことを言いながらも私はとても嬉しいのだった。心の中はドキドキとウキウキが混雑していた。
「あなたも、同じ気持ちで良かったです。」
そうして彼女はゆっくりと目を閉じた…。
そんな彼女の期待に応えるように私は彼女に顔を近づけて…
その唇に重ねた…。
「…小林さん、、」
「…ねぇ、そろそろ名前で呼び合わない?私のこと由依って呼んでよ、ひかる。」
「…!は、はい、、由依、さん。」
不意打ちの名前呼びと、彼女が呼び捨てに慣れてないからか、顔が真っ赤になっていて、結局さんがついてしまっていた。
それでも良かった。
名前で呼んでくれたことが嬉しかったから。
「本当、ひかるは輝いてるね〜」
その名の通り、彼女は遠くから見ても、近くで見ても、綺麗だ。
「…そ、そんなに輝いてますか?」
「もちろんだよ、どんな時でも、すっごく綺麗に輝いてる。」
「…恥ずかしいですけど、、由依さんに言われるなら、嬉しいです…。」
「…ふふっ、良かった!」
そうして幸せなデートの時間は少し延長したけど、終わってしまった。
寂しくないと言えば嘘になるが、、でも、今日という日は私たちの始まりの日でもあるんだ。
だから、悲しくなんてなかった。
続く。。