sideR




由依に本当の思いをぶつける。

それは由依の事が好きだと私が告白をすることになる。




鈴華のことが今も好きだと言う由依に私はそんなこと出来なかった。




だって私は自分自身に約束したから。

2人が幸せになるなら、この恋心はもうおしまいにするって…。




でも、、今私の目の前には幸せな2人の姿はない。

私が心から願った2人はいなかった。

私は本気で由依が好きだし、今も支えてあげたい。

だけど、、たとえ鈴華がいなくても、この2人の間に私が入るなんて、、。





("理佐、ごめんね。そんなふうに思っていてくれたのに…")





「…!」





("ああ、ごめんね?私幽霊だから心も読めちゃうんだ〜")





そっか、それならもう鈴華だってわかってるよね。

私の今の由依に対する気持ちも…。





「それはすごいね、、。」





("ねぇ、理佐、由依も、2人に聞いて欲しいの。私が居なくなってしまって、由依は今とても孤独を感じている。そんな由依を私は抱きしめに行きたいよ。だけどね、この身体じゃできない。だからね、これからは由依と理佐の2人で支え合って生きてほしいの。由依が孤独を感じているなら理佐が抱きしめてあげて欲しいの。これは私からのお願いなんだ、由依。一番近くで私たちを見守ってくれた人は誰?")





由依は泣きながらも、嗚咽をしながらも、小さな声で"理佐"と私の名前を告げてくれた。






「…鈴華。」





("でしょ?それに、由依自身も私と同じくらい実は理佐のことも好きなんじゃん!なんかちょっと悔しいな、、!心が読めるのも辛いなぁ、、!")





「…っ!?な、、」





由依は顔を真っ赤にして俯いてしまった。

そして私も驚きを隠すことは出来なかった。






「…鈴華、それは本当なの?」






("もちろん!だからね、由依。これが最後の質問にするね。この通り理佐も由依も実は好き同士だったかもしれないんだよ?もし、理佐が先に想いを伝えていたら未来は違ったかもしれない。私たちが恋人になってからでも必死に由依の幸せのために頑張ってくれたんだよ、理佐は。そんな素敵な人がいるんだから、私の呪縛に囚われずにその人の元に行って欲しいの。ね、お願い由依?")






そう言われてしまった由依はついに大声をあげて泣き崩れてしまった。

私は咄嗟にしゃがみこむ由依の背中を支える。

ああ、由依が泣いていると私はじっとしていられないんだな。

やっぱり私は彼女が好きだ。






「…っ、ぐ、、理佐、、本当にいいの?こんな、重いヤツなのに、、」





泣き崩れた由依は絞り出すような声で私に告げてきた。

だから、私は自分の言葉で返した。






「…もちろん。由依のこと、ずっと支えていきたいから。」






そして心の中で言った。

きっと鈴華には聞こえているんだろう。




この先、絶対に由依を幸せにしてみせるから。

鈴華といた時よりも、、ずっと。






("うんうん、その意気だよ、理佐!")






どうやらやはり聞いていたようだ。






「…!ああ、ありがとう!」






そうして、私と鈴華は笑いあった。

ぬいぐるみだから表情には出ていないが、どこか安心したような声だった。








その日から私は鈴華から由依を託され、付き合うこととなった。

だけど、何かが変わるわけでもなかった。

今までずっと傍にいたから、距離も変わらない。

私はこのままずっと由依を支えたいから。






┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


side??





私は由依の部屋に置いてあるクマのぬいぐるみ。

この魂の持ち主の名を鈴華という。

つまりこのぬいぐるみには私(鈴華)が憑依しているのだ。

元々は由依の恋人で、愛し合っていたが、途中で交通事故で人間としての私は亡くなってしまった。






身体こそ焼かれてしまって無いものの、あのセレモニーの時に由依とお母さんが持ってきてくれた私の形見(ぬいぐるみ)に魂を移すことに成功した。





こんな身体になってしまった以上、由依の恋人ではいられないし、そもそも私は死んだんだ、、。

だからこの前、由依を理佐に託した。

だって、私が一番信頼しているのはこの2人だし、2人とも何気に両想いだったみたいだから、由依のことを理佐に任せたかった。





由依の私への呪縛は中々解けなかったなぁ。

確かにそれくらい愛してくれていたことは嬉しかった。

だけど、私はもう居ないんだから、縛られずに自由になって欲しかった。





ある日、幽霊になって心を読めるようになってから、由依の心を読んだことがある。

寝ている時の由依に心の底で理佐に恋心を抱いているのを感じた。

私への呪縛の下に絡まるように、それは存在していたのが分かった。






だから私は尚更由依を理佐に託したかった。

私への呪縛が取れたその先には理佐が待っていて欲しかったから…。




あの日、泣き崩れる由依と共に呪縛は解けたのだった。

そして、その先にある恋心に導かれるように、由依は理佐の元へと行くことができた。







これで私は成仏できる、と思ったけど、、








「ただいまー!ねぇ、鈴華!」






("な、何、由依?!")






「今日ね、久しぶりに学校に行ったの!そしたらね、たくさん提出物が溜まっててね、、。」






("そ、そりゃ、あれから行ってないもんね。まぁでも、由依がちゃんと学校行けるようになって良かったよ…!")





「うん!やっぱり鈴華と一緒に話すのは楽しいな!ぬいぐるみの姿でも可愛い!だからこれからも私の友達でいてね!」





そう、私は由依の家でクマのぬいぐるみとして、鈴華として由依のお友達になったのだった。







これから2人には大変なことも辛いこともあるだろう。

私も経験するはずだった大学受験、就活も2人はすることになるのだろう。






だけど、2人はきっと乗り越えていくだろう。

今まで理佐がしてきてくれたように、これからは私が2人を支えていこう。










成仏するのはまだもう少し先でもいいのかな…!










終わり。






ゾクヘンカクカモ