新年早々、親知らずを抜いた。

学生時代から下顎の両側に生えていて、ちょこんと僅かに頭を覗かせていた親知らず。

悪さをするでもないし可愛い身の内と思ってあえて放置していた親知らず。

だが、昨月に歯石を除去してもらった際、左下の親知らず周辺が感染したらしく、炎症を起こした。

根拠はないが、一度強い炎症を起こしたら虫歯へのリスクが高くなるように思えたので抜くこととした(ちなみに虫歯となった親知らず程たちの悪いものはない。特に免疫機能が低下した時には全身に悪影響を及ぼす)。


歯科医による処置は想像以上に早い。

19時の予約で、30分後にはもう会計を済ませていた。

麻酔を打ち、3針縫ったが抜歯中は全く痛くない。

でも、激しい苦痛が会計直後に訪れる。

ドクターにも「今すぐ痛み止めを飲んで。」と言われる。

「歯を抜いた時に筋肉組織まで取れたからね、そっちが痛いかも。」

そうなのだ。

見せてもらったが、抜けた親知らずの根本にはプルンプルンの肉組織がたくさんくっついていた。

正直、残った奥歯がぐらつかないか心配になるくらい。
感覚神経や奥歯に栄養補給する毛細血管がなくなってやいやしないだろうか。

というか、目下の問題は苦痛と出血。

抜歯に行く直前に上司に「平日に抜歯するなんて重労働の医療職にあるまじき非常識。行くなら残業禁止、すぐ帰れ。」
と怒られたが、確かに仕事にならない。

歯医者は
「皆さん大袈裟に言うけど痛くないよ、大丈夫。すぐ終わるし。」と言うので、その説明でインフォームドコンセントを成立させてしまったが、そんな簡単な一言では済まされなかった。

上司の指示通りに早く帰ろうと思ったが出血が止まらず、また、口腔内に溜まった血がどうしても飲めないので、電車に乗れない。

出血と言っても血の量そのものはたいしたことないのだが、唾液もじわじわ湧くので、トータルはこくこく飲まないと追い付かない量となる。

だが、血の味をした唾液はどうしても嚥下できない。

仕方がないので一度職場に戻り、洗面所を占拠する。

自制できているとはいえ、顔の紅潮、脈拍の上昇、目の潤み、微かな吐き気と手足の冷感という軽いショック症状も出ている。

これは抜歯のショックか肉組織を取ってしまったショックか、その両方のショックかは分からないが、でもあのインフォームドコンセントはとても間違っていたことだけはよく分かる。

走れないし(走れるか否かは私の中では基本的な基準だ)、仕事も何もできない。お風呂に入るのも危険だ。

抜歯を調べぬまま簡単に考えていた私も悪いが、それにしても歯科医も抜歯とは歯だけでなく肉組織もそげることを事前に教えてくれていてもよかったのではないか?