不幸続きの我が家、旦那さんは今年二回目の事故。
一回目は無傷でしたが二回目は信号無視の車に突っ込まれるという惨事。
車は廃車だったのに奇跡的に身体は大丈夫…、一ヶ月近く経って腰に来てしまい今痛みに夜も眠れない有様。
で、私も職場で財布盗まれたり、いざこざが絶えない訳ですが、とうとう身体に来た~。
この時期に虫垂炎!
腰は痛いわ、腹は痛い…結局また散らした…はあ。
この話も何時まで書き込めるか。
う~ん、また日にち開きました。
xxxHOLiC籠の最終回の話⑧
『Light up』
続き。
「あの子もいけない子や…他人の因縁を背負い込むなんてなあ…でもあんたなら分かる位分かるやろ?あの子は自分じゃない他人の為に泣く子やの…、今更こんなん話されても、と思わんでな」
先見であり、若い時分は占いを生業としていた老女は言った。
「…じゃあ、あいつは」
病院の個室で老女と話をしていた百目鬼は頭をうなだれるとそう呟いた。
「…本当はね、口止めされてたんよ、絶対言わないでくれと…、でもな、出来んかった、また同じ事は繰り返させたくないんよ」
老女はその瞼を閉じた。
「…同じ事?」
百目鬼はふと気になり尋ねていた。
「…もう侑子ちゃんの時の様な思いはしとうないんよ、…また分かっていて何も出来ん悔しい思いは…、侑子ちゃんもあの子も大切やからね…、あんたに告げないとわても重くてな…最期は笑って、良い人生だったといきたいんよ」
「最期などとそんな事仰有らないで下さい」
百目鬼は老女に言い聞かせるように告げた。
「聞かせてくださり有り難うございます…然し、自分には…何か出来るのだとしたら…、あいつの為に…、自分に何が出来るのでしょうか」
らしくないと思いつつ百目鬼は思わず尋ねていた。
祓う力はあっても自ら消えた四月一日を追う術など何もなかった。
それよりもこの道を選んだ自分のこの身に、何が出来るのかと自問自答していた。
助けたい、自分が彼を掬う事が出来るなら、したい。
そう思いながらも体が思考が鈍る様な何かに苛まれてる感覚。
打ちひしがれた様に俯いた百目鬼は自らの拳を見つめる。
「…なあこれ、貰ってえな…、もうわてには必要ないんよ、充分守ってもらったし…形見やと思ってな、あんたに貰って貰いたいんよ」
老女は百目鬼の問いに答えは出さずそう言って蝶の帯留めを百目鬼に握らせたのだ。
「思いは、強く願えばホントウになるんよ…、強うな、あんたも心を大切にせな、…」
老女は答える様にそう告げた。
「あんたが強う願えばな、」
「少し外にいる」
百目鬼は戻ってきた妻の小羽に彼女を任せ部屋を出た。
久々の対面である老女と妻を気遣かっての事でもあった。
「わかったわ」
小羽はにこりと微笑む。
その笑顔に見送られた背中の内側にある胸には強い痛みがあった。
告げられた事実に、どうする事も、どうにも出来ず、その場を離れたのだ。
「あら百目鬼くん?…よね?」
突然病院のエントランス付近で背後から女性に声をかけられたのだ。
「何年ぶりかしら?ほら、私達よ、双子の」
声をかけてきたのは落ち着いた雰囲気の綺麗な女性二人だった。
その顔に見覚えがあった。
それは百目鬼が高校生の頃、四月一日と…今は居ない侑子と共に言霊の呪縛を解いた双子の女子大生だったのだ。
「百目鬼くんたら相変わらず素敵ね、私達はすっかりおばさんよ」
そういえばあれから随分時間が経っていて、女子大生だった彼女達も年齢を重ね、彼女達の話から既に高校生の子がいるという。
「百目鬼くんももう結婚されてるわよね、…懐かしいわ、あの時の事は良い思い出、あのケーキ屋ももうないし」
にこやかな二人の姉妹は入院中の母親の見舞に来たと言う。
「…貴女方も息災で何よりです、今日の事を聞いたら…四月一日も喜びます」
その口から、ふと出たのは今一番逢いたい者の名前。
「…え?…わたぬき?さん…ってどなたかしら?」
双子の姉妹は答える。
「…、あの時映画やケーキ屋で共に、」
百目鬼は一抹の不安を感じながら告げた。
「あら、百目鬼くんしかいなかったじゃない、私達と貴方しかね」
微笑みあう双子の姉妹に、何か厭な違和感を感じた。
いや疎外感の様な彼女達との間に境界線が其処に出来ていた。
(四月一日、)
百目鬼は二人に挨拶をすると、足早に病院を出ていたのだ。
続く。
うわ…、また日にち開きましたね~。
此処のとこ、自分の周りがバタバタとしていて…なんて言い訳です(笑)
でも旦那さんが事故ったり、財布が盗難にあったりと結構大変でした、まあ何とかやってますが(笑)
で、久しぶりに「xxxHOLiC籠」の最終回の話をあげますね。
誰か一人でも読んでくれたら、幸いです。
「xxxHOLiC籠の最終回の話⑦」
「…そうやね、心は大切な部分、この器を、躯を動かす原動力なんよ、もし魂が、心がなければ、人間(ひと)は ただの人形」
老女はそう言うと、ベッド脇の机の引き出しから何かを取り出した。
それは淡い緑色の石で出来た帯留めで、蝶の形をしていたのだ。
蝶、は今は亡き侑子のシンボルでもある。
「これは私の大切なもの…今まで私を守っていてくれた守り…もう随分昔に貰ったものやけど」
老女はそう言うと帯留めを大切そうに握りしめた。
やはり元々は侑子のものなのだろう。
「…あの子、侑子ちゃんも消えてしもうて…、無理にあの場所に留められていたとは言え、その刹那、数々の出会いがあって…侑子ちゃんを大切に思っている者を作り…、でもその子達を置いていってしもうて」
皺だらけの手は、蝶の帯留めを大事そうに撫でていた。
それは愛情を込めて、彼女自身、今はいない侑子を大切にしていたのだろう。
先見である彼女は、侑子の事をずっと出会ってから案じていたのだ。
「…侑子ちゃんが本当に望んでいたのは何だったかはもうわからないけどな、…こんな悲しい思いは御免やわ、もう後悔はしたくないと思うんよ」
「…それは、」
「…出来る事があるなら、してやりたいと思うんよ、最期になあ…いうたろ?墓場まで持っていくのが重いから軽くしとこかって」
老女の先を視る目が百目鬼を捕らえると、にこりと微笑んだ。
「…さあて、話を戻そうかね、心は人間の大切な部分…紡ぎ出す思いを、あんたは呼吸をするように、当たり前の様に仕舞い込んでしまうんよ、気づかない内に、わからん内に、無意識の内になあ」
老女は糸を紡ぐようにゆっくりと語っていく。
「本当はな、感情豊かな、温かいもんを並々と湛えているのに」
「…自分では気づきませんが、」
百目鬼は答える。
ただ昔から感情の起伏は緩やかで、あまり気にしない性格からか誤解される事もあったのだが、だからどうと言う事も無かった。
それがどうだというのか?
心という言葉は、百目鬼の頭から離れなかった。
それが姿を消した四月一日と何の関係があるのか、と。
「全てが全て飲み込んでるとは言わんよ…、でもあんたは ちいちゃい頃から少しずつ感情を、思いを飲み込んできてたんやねぇ、」
老女はゆっくりと体を動かすと、手を伸ばし百目鬼の肩をぽんと叩いたのだ。
「辛かったやろ、…こんなになるまで仕舞い込んで…、悲しい時、何か掛け替えのないものを失った時、あんたは素直に感情を出さなかった…いや出せずに押し込めたんよ、いつの間にか長い間に押し込めた感情は、この躯を重たく縛りつけるんよ、がんじがらめになり躯を蝕みながら、その体や感覚までを麻痺させてしまう、…悲しい時にも楽しい時にもなあ、よう表現出来ずに…、まあ仕方ないわな…、その流れる血故に」
老女はゆっくりと告げる。
「…、流れる血?…」
百目鬼は思わず聞き返していた。
「そう…、その血の中に因縁という長い間継がれてきたものの中に隠れとんの、あんたが当たり前の様に仕舞い込んだもんになあ、…それは心を、人間の大事な魂まで傷つけてしまうもの…、あの子は気づいてしまったんね、大切なあんたに繋かるものを」
「…、それじゃあ、あいつは」
百目鬼はその眼を見開き驚いた表情を浮かべていた。
四月一日が自分達の前から消えたのは…。
「もしあんたに繋かったものを解ける術があったなら、…あんたならどうするん?…あんたはあの子が一番大切に思っとる子やからね」
そう告げた老女の言葉に、百目鬼の胸はズキリと音を立てた様に感じていた。
続く。
此処のとこ、自分の周りがバタバタとしていて…なんて言い訳です(笑)
でも旦那さんが事故ったり、財布が盗難にあったりと結構大変でした、まあ何とかやってますが(笑)
で、久しぶりに「xxxHOLiC籠」の最終回の話をあげますね。
誰か一人でも読んでくれたら、幸いです。
「xxxHOLiC籠の最終回の話⑦」
「…そうやね、心は大切な部分、この器を、躯を動かす原動力なんよ、もし魂が、心がなければ、人間(ひと)は ただの人形」
老女はそう言うと、ベッド脇の机の引き出しから何かを取り出した。
それは淡い緑色の石で出来た帯留めで、蝶の形をしていたのだ。
蝶、は今は亡き侑子のシンボルでもある。
「これは私の大切なもの…今まで私を守っていてくれた守り…もう随分昔に貰ったものやけど」
老女はそう言うと帯留めを大切そうに握りしめた。
やはり元々は侑子のものなのだろう。
「…あの子、侑子ちゃんも消えてしもうて…、無理にあの場所に留められていたとは言え、その刹那、数々の出会いがあって…侑子ちゃんを大切に思っている者を作り…、でもその子達を置いていってしもうて」
皺だらけの手は、蝶の帯留めを大事そうに撫でていた。
それは愛情を込めて、彼女自身、今はいない侑子を大切にしていたのだろう。
先見である彼女は、侑子の事をずっと出会ってから案じていたのだ。
「…侑子ちゃんが本当に望んでいたのは何だったかはもうわからないけどな、…こんな悲しい思いは御免やわ、もう後悔はしたくないと思うんよ」
「…それは、」
「…出来る事があるなら、してやりたいと思うんよ、最期になあ…いうたろ?墓場まで持っていくのが重いから軽くしとこかって」
老女の先を視る目が百目鬼を捕らえると、にこりと微笑んだ。
「…さあて、話を戻そうかね、心は人間の大切な部分…紡ぎ出す思いを、あんたは呼吸をするように、当たり前の様に仕舞い込んでしまうんよ、気づかない内に、わからん内に、無意識の内になあ」
老女は糸を紡ぐようにゆっくりと語っていく。
「本当はな、感情豊かな、温かいもんを並々と湛えているのに」
「…自分では気づきませんが、」
百目鬼は答える。
ただ昔から感情の起伏は緩やかで、あまり気にしない性格からか誤解される事もあったのだが、だからどうと言う事も無かった。
それがどうだというのか?
心という言葉は、百目鬼の頭から離れなかった。
それが姿を消した四月一日と何の関係があるのか、と。
「全てが全て飲み込んでるとは言わんよ…、でもあんたは ちいちゃい頃から少しずつ感情を、思いを飲み込んできてたんやねぇ、」
老女はゆっくりと体を動かすと、手を伸ばし百目鬼の肩をぽんと叩いたのだ。
「辛かったやろ、…こんなになるまで仕舞い込んで…、悲しい時、何か掛け替えのないものを失った時、あんたは素直に感情を出さなかった…いや出せずに押し込めたんよ、いつの間にか長い間に押し込めた感情は、この躯を重たく縛りつけるんよ、がんじがらめになり躯を蝕みながら、その体や感覚までを麻痺させてしまう、…悲しい時にも楽しい時にもなあ、よう表現出来ずに…、まあ仕方ないわな…、その流れる血故に」
老女はゆっくりと告げる。
「…、流れる血?…」
百目鬼は思わず聞き返していた。
「そう…、その血の中に因縁という長い間継がれてきたものの中に隠れとんの、あんたが当たり前の様に仕舞い込んだもんになあ、…それは心を、人間の大事な魂まで傷つけてしまうもの…、あの子は気づいてしまったんね、大切なあんたに繋かるものを」
「…、それじゃあ、あいつは」
百目鬼はその眼を見開き驚いた表情を浮かべていた。
四月一日が自分達の前から消えたのは…。
「もしあんたに繋かったものを解ける術があったなら、…あんたならどうするん?…あんたはあの子が一番大切に思っとる子やからね」
そう告げた老女の言葉に、百目鬼の胸はズキリと音を立てた様に感じていた。
続く。
また日にちを空けてしまいました(笑)
夏休みも終わりですね~!
学校も始まり、後半戦が始まった訳ですが、…発達障害を抱える息子は、年齢を重ねる事に周りと自分の違いを感じてしまい、戸惑ってる様です。
三年、四年生に上がり担任の先生とも良い関係が築け、クラスの雰囲気も良く…見守っていたのですが、…今月から特別支援教室に再度通う事に(‘o‘)ノ
発達が遅い故に算数と国語は学年の相応の学習は苦手で、本人も感じたのでしょう、自ら特別支援教室に…。
やはり親としては複雑ですし、頑張って欲しいから、普通級でと思いますが…、息子の頑張りに期待したいです。
と、此処からはxxxHOLiC籠の最終回の話です。
『Light up』⑥
消毒の匂いと先程まで飾られていた花の匂いが漂う病室。
其処に百目鬼は老女と二人、取り残された様にいた。
「此処には私達しかおらん…、何か話があるんやろ」
老女はにこやかに、まるで先を視る様に告げた。
彼女はあの次元を渡す魔女の侑子が信頼を置いた占い師で、それなりの力を携えていた。
「…少しだけいいですか」
百目鬼は無意識のうちに胸にあるつかえを吐露し始めていた。
「この選択に…、後悔はありません、ただあいつが今、どうしているのか、それだけです」
少し間を置き百目鬼は話し始める。
彼が、今、一番心に気にかかっているのは、そう、一番は、此処に居ない彼の事。
「…この世はどうにもならん事だらけ、…今、こうしてある事にも必ず意味があるんよ」
老女は優しげな眼差しを百目鬼に向けると、丸椅子に座る様に促した。
「…分かっています」
百目鬼は云われたまま座ると、自らの言葉を飲み込んだ。
彼がどんな気持ちで自分を手放したのか、またこの状況も彼が自分の為に起こしているのだとも分かっていた。
「あんたは心を、感情を、言葉と一緒に呼吸をする様に飲み込んでしまうんね…、本当は人一倍感情豊かで、深いものを持っていながらねぇ…、…墓場まで持って行こうと思った事があるんよ…、ちょっと重たいから軽くしとこかね」
老女はにっこりと笑った。
「…それは、」
百目鬼は尋ねる様に老女を見たのだ。
「そうやね…、きっと聞きたい事やもしれんね…まあまあ、そんなに言葉を飲み込んで、心を押し込めて、感情を飲み込んで、いけんよ…、心はそんなに丈夫じゃないんよ」
老女は優しく告げた。
「…心?」
百目鬼は尋ねた。
心が何だと言うのか。
「…確かに人間の持つ感情や思いは、そのまま口に出してはいけん時もあるんよ、良いことばかりじゃあない…、相手を傷つけたり、悲しませたりするからね…、でも、ある程度感情を、気持ちを伝えんと進まん事もあるんよ」
「…、」
老女が何を言いたいのか、耳から入る言葉の解釈を、百目鬼は自分なりに理解をしようと懸命にしていた。
目の前にいる彼女は自分に何を伝えたいのか。
「心っていうのはね、見えないけどちゃんと在るんよ、この躯という器の中に、体の奥底にあるんよ…ありとあらゆる事を、自由に考え思う事が出来るもの…、色んなもんを生む…、心は人間の大切な部分やね」
老女はそう優しく告げる。
ふと、心という言葉に、百目鬼の脳裏に浮かんだのは、黒髪の麗しきひとだった。
「…以前、あのひとは言っていました、『思い』はひとの核と…魂だと、そして大切な部分だと、」
百目鬼はその眼を自らの拳へ落とした。
…そう言ったひとは、今はもう居ないのだ。
壱原 侑子。
次元の魔女と呼ばれ、人知を超えた力を持った彼女は、自らすべき事を終え…、彼岸へと向かったのだ。
…四月一日を、自分を、彼女を思う全てのひとを置いて。
『…何時かの為に持っていて』
彼女はそう言って百目鬼に小さな卵を託したのだ、それは今も…百目鬼の手にあった。
続く。
夏休みも終わりですね~!
学校も始まり、後半戦が始まった訳ですが、…発達障害を抱える息子は、年齢を重ねる事に周りと自分の違いを感じてしまい、戸惑ってる様です。
三年、四年生に上がり担任の先生とも良い関係が築け、クラスの雰囲気も良く…見守っていたのですが、…今月から特別支援教室に再度通う事に(‘o‘)ノ
発達が遅い故に算数と国語は学年の相応の学習は苦手で、本人も感じたのでしょう、自ら特別支援教室に…。
やはり親としては複雑ですし、頑張って欲しいから、普通級でと思いますが…、息子の頑張りに期待したいです。
と、此処からはxxxHOLiC籠の最終回の話です。
『Light up』⑥
消毒の匂いと先程まで飾られていた花の匂いが漂う病室。
其処に百目鬼は老女と二人、取り残された様にいた。
「此処には私達しかおらん…、何か話があるんやろ」
老女はにこやかに、まるで先を視る様に告げた。
彼女はあの次元を渡す魔女の侑子が信頼を置いた占い師で、それなりの力を携えていた。
「…少しだけいいですか」
百目鬼は無意識のうちに胸にあるつかえを吐露し始めていた。
「この選択に…、後悔はありません、ただあいつが今、どうしているのか、それだけです」
少し間を置き百目鬼は話し始める。
彼が、今、一番心に気にかかっているのは、そう、一番は、此処に居ない彼の事。
「…この世はどうにもならん事だらけ、…今、こうしてある事にも必ず意味があるんよ」
老女は優しげな眼差しを百目鬼に向けると、丸椅子に座る様に促した。
「…分かっています」
百目鬼は云われたまま座ると、自らの言葉を飲み込んだ。
彼がどんな気持ちで自分を手放したのか、またこの状況も彼が自分の為に起こしているのだとも分かっていた。
「あんたは心を、感情を、言葉と一緒に呼吸をする様に飲み込んでしまうんね…、本当は人一倍感情豊かで、深いものを持っていながらねぇ…、…墓場まで持って行こうと思った事があるんよ…、ちょっと重たいから軽くしとこかね」
老女はにっこりと笑った。
「…それは、」
百目鬼は尋ねる様に老女を見たのだ。
「そうやね…、きっと聞きたい事やもしれんね…まあまあ、そんなに言葉を飲み込んで、心を押し込めて、感情を飲み込んで、いけんよ…、心はそんなに丈夫じゃないんよ」
老女は優しく告げた。
「…心?」
百目鬼は尋ねた。
心が何だと言うのか。
「…確かに人間の持つ感情や思いは、そのまま口に出してはいけん時もあるんよ、良いことばかりじゃあない…、相手を傷つけたり、悲しませたりするからね…、でも、ある程度感情を、気持ちを伝えんと進まん事もあるんよ」
「…、」
老女が何を言いたいのか、耳から入る言葉の解釈を、百目鬼は自分なりに理解をしようと懸命にしていた。
目の前にいる彼女は自分に何を伝えたいのか。
「心っていうのはね、見えないけどちゃんと在るんよ、この躯という器の中に、体の奥底にあるんよ…ありとあらゆる事を、自由に考え思う事が出来るもの…、色んなもんを生む…、心は人間の大切な部分やね」
老女はそう優しく告げる。
ふと、心という言葉に、百目鬼の脳裏に浮かんだのは、黒髪の麗しきひとだった。
「…以前、あのひとは言っていました、『思い』はひとの核と…魂だと、そして大切な部分だと、」
百目鬼はその眼を自らの拳へ落とした。
…そう言ったひとは、今はもう居ないのだ。
壱原 侑子。
次元の魔女と呼ばれ、人知を超えた力を持った彼女は、自らすべき事を終え…、彼岸へと向かったのだ。
…四月一日を、自分を、彼女を思う全てのひとを置いて。
『…何時かの為に持っていて』
彼女はそう言って百目鬼に小さな卵を託したのだ、それは今も…百目鬼の手にあった。
続く。