ご無沙汰しています。
また開いてしまいましたね、…その間に本編も戻(レイ)も始まりましたね!
また戻るコトに意味があり、きっと侑子さんの願いも解るでしょうし、どうぞ皆がハッピーである事を願いつつ、自分もハッピーだと良いなと。
早く体調戻したい(笑)
切実です、はい。
最終回じゃないけど籠としての最終回の話って事で。
『light up』⑯
*
淡い緑色をした石で出来た帯留めに落ちる雫。
悲しく、閉ざされた思いと祈りの中、百目鬼から流れ落ちた、雫だった。
それは、不思議な事に、やがて一羽の蝶へと変わったのだ。
涙を受け、羽化した淡い緑色の美しい蝶。
涙を流し、佇んだ百目鬼の脳裏に浮かんだのは、何時か夏の暑い朝、赤い血溜まりの中に見た美しい蝶だった。
ミセへと導いたあの蝶に似ていた。
「…侑子さん、」
指貫きを握りしめる百目鬼は、名前を詠んだ。
今はもういないひとの名を。
一縷の望みを託しながら。
『…百目鬼くん、アナタがこれを受け取っているというコトは、アタシが視た未来(さき)通りになっているのね』
蝶から聞こえてきたのは、紛れもなく侑子の声だった。
「…侑子さん、俺は…」
言いたい事は沢山あったが、何も口からは出てこなかった。
『…そして、それはアタシもいない未来ね』
蝶から聞こえるのは懐かしい声。
でも、声の主はもういない。
これはこの翡翠の帯留めに宿る幻か。
『百目鬼くんアナタも、四月一日も選んだのね、…それぞれ未来を、』
蝶から聞こえる言葉は見てきたかの様だった。
彼女は強い力の持ち主で視えるヒトであったから、視たのだろう。
蝶は光の鱗粉を撒きながら、百目鬼の周りを舞っていたが、やがて導く様に、部屋からゆっくりと出ていってしまう。
(導いてくれるのか)
百目鬼は指抜きを握りしめ、後を追い、部屋を飛び出していたのだ。
主の出た後の、オレンジ色に染まった部屋には無機質なもの。
小さな卵が部屋に取り残されていたのだ。
…ひらり。
光る鱗粉を撒き、蝶は風に乗り、百目鬼を導く様に先へと進みいく。
毎日見慣れた路地を…柊繁る公園を、春には見事な桜を咲かせる土手を、ただ、進む。
ゆっくりと確実に。
夕暮れは紫色となりビロードの帳をゆっくりと下ろしかけている。
その中を進む。
そして、夜の闇の中、蝶が羽を止めたのは、
「…ミセ、」
願いを叶えるミセの入口だった。
今までなかった、視る事すらできなかった場所。
明かりも、人気すらないミセが、確かに其処にあった。
確かに在ったのだ。
「四月一日っ」
百目鬼は、夢中で門を潜った。
そして、ドアを開けた。
『…四月一日、アナタはアタシを捜すでしょうね、消えたアタシを必死で…、でもね、アタシはもう、…逆らえない世の理に逆らい続けていた、此処に自らを縛り、ヒトの願いを叶えながら』
響く声は門柱に停まった蝶からだった。
『その時が来たら、アタシは消える、アタシが選んだコトで、アナタ達が数多ある選択の中から何かを選んだとしても、それが誰かを不幸にしたとしても、…誰も咎めるコトなど出来ない』
響く、悲しい声。
『ヒトは我が儘で、自らの願いにはどうしようもなく貪欲で、身勝手で…けれど、愛おしい生き物、…アタシもアナタ達もヒト』
懐かしい声と共に その蝶は淡い羽をゆっくりと下ろした。
「わたぬきっ」
闇の世界が広がる中、百目鬼は屋敷を探していた。
見慣れた居間、整頓された客間、何時も自分の為に料理を作ってくれた台所、銘酒を隠す室、休憩所(おやすみどころ)になる宝物庫、…そして何度となく睦あった部屋の前にたどり着いていたのだ。
続く。
ご無沙汰ですみません。
難病を発症しまして、かなり苦しんでました。
本家のいろはもみじの方もお休み中…。
病は本当に精神的にも参ります。
…はあ。
×××HOLIC籠最終回の話。
「Light up」⑮
カタカタ。
ある箱から音がした。
それは百目鬼の結婚前に使っていた部屋に置いてある箱からだった。
「…、」
本棚にもたれ、うなだれていた百目鬼は、体をゆっくりと起こし、机に手をのばした。
小さな木箱は、祖父が何処か旅行に行った際の土産だった。
カタカタ、と何かを知らせる為に鳴る箱。
久しく弓をやっていない百目鬼の節の長い指は、その箱を迷わず開けていたのだ。
かた、と開いた箱の中には、小さな輪。
「…指貫き」
女郎蜘蛛の依頼の対価で四月一日が手に入れた指貫き。
桃の節句である誕生日に渡された小さな指輪は、百目鬼には特別な意味があった。
誓い、の指輪。
それが入っていた。
指先は、小さな指輪に触れた。
「…、」
小羽を妻に迎え、四月一日と逢えなくなった日から、これはけじめ…一区切りとして仕舞っていたのだ。
「…呼んでるのか」
生木を裂く様に心を裂き、四月一日以外の者を伴侶として迎える以上、例え心は四月一日にあっても、残りの人生全てを選んだ伴侶に与えようと決めたからだ。
誠心誠意、小羽を愛する事で全てを飲み込み、ついてきてくれる彼女に応える覚悟で自分自身に『けり』をつけたのだ。
「…悪いな、やはり俺は、あいつを」
震える声と手で、指貫きを、この先選択した事で生まれるであろう結果を掬う様に取り出した。
それを握り締め、その眼を閉じた。
涙が落ちる。
「俺の、百目鬼 静という人間の残りの人生は五月七日にやる、…だが、心は、魂は、お前にくれてやる…、四月一日 君尋、」
涙が、また落ちた。
*
「やはりお前は弓だったな」
ミセの塀から侵入した物の気を、誓いの様に渡された指貫きの呪具で出した弓と気の矢で祓った百目鬼に向かい、四月一日は言った。
「それが何であっても…射ろよ」
悲しげな目をした四月一日は言った。
「…おれなら尚更だ」
その色違いの目から涙が落ちる。
それは予感だったのかもしれない。
「お前に射られるなら」
本望だ、と四月一日は言った。
この世界。
春の暖かい陽射し、花の色、
夏の風、涼しげな水面、
秋の実り、鈴の響き、
冬の潔浄、微かな息吹。
ヒトがいなければ、ただの事柄。
ヒトが居るから在るからこそ願いは生まれるもの。
ヒトは『心』を宿し時を刻む。
『心』はあらゆる願いを産む種。
『心』を持つヒトこそ不可思議な且つ愛しい生き物。
後書き。
この時鬼束ちひろの『陽炎』を聞いてました。
一日一日がとてもいとおしくて大切だと思うこのごろ。
来て読んでくれてありがとう。
難病を発症しまして、かなり苦しんでました。
本家のいろはもみじの方もお休み中…。
病は本当に精神的にも参ります。
…はあ。
×××HOLIC籠最終回の話。
「Light up」⑮
カタカタ。
ある箱から音がした。
それは百目鬼の結婚前に使っていた部屋に置いてある箱からだった。
「…、」
本棚にもたれ、うなだれていた百目鬼は、体をゆっくりと起こし、机に手をのばした。
小さな木箱は、祖父が何処か旅行に行った際の土産だった。
カタカタ、と何かを知らせる為に鳴る箱。
久しく弓をやっていない百目鬼の節の長い指は、その箱を迷わず開けていたのだ。
かた、と開いた箱の中には、小さな輪。
「…指貫き」
女郎蜘蛛の依頼の対価で四月一日が手に入れた指貫き。
桃の節句である誕生日に渡された小さな指輪は、百目鬼には特別な意味があった。
誓い、の指輪。
それが入っていた。
指先は、小さな指輪に触れた。
「…、」
小羽を妻に迎え、四月一日と逢えなくなった日から、これはけじめ…一区切りとして仕舞っていたのだ。
「…呼んでるのか」
生木を裂く様に心を裂き、四月一日以外の者を伴侶として迎える以上、例え心は四月一日にあっても、残りの人生全てを選んだ伴侶に与えようと決めたからだ。
誠心誠意、小羽を愛する事で全てを飲み込み、ついてきてくれる彼女に応える覚悟で自分自身に『けり』をつけたのだ。
「…悪いな、やはり俺は、あいつを」
震える声と手で、指貫きを、この先選択した事で生まれるであろう結果を掬う様に取り出した。
それを握り締め、その眼を閉じた。
涙が落ちる。
「俺の、百目鬼 静という人間の残りの人生は五月七日にやる、…だが、心は、魂は、お前にくれてやる…、四月一日 君尋、」
涙が、また落ちた。
*
「やはりお前は弓だったな」
ミセの塀から侵入した物の気を、誓いの様に渡された指貫きの呪具で出した弓と気の矢で祓った百目鬼に向かい、四月一日は言った。
「それが何であっても…射ろよ」
悲しげな目をした四月一日は言った。
「…おれなら尚更だ」
その色違いの目から涙が落ちる。
それは予感だったのかもしれない。
「お前に射られるなら」
本望だ、と四月一日は言った。
この世界。
春の暖かい陽射し、花の色、
夏の風、涼しげな水面、
秋の実り、鈴の響き、
冬の潔浄、微かな息吹。
ヒトがいなければ、ただの事柄。
ヒトが居るから在るからこそ願いは生まれるもの。
ヒトは『心』を宿し時を刻む。
『心』はあらゆる願いを産む種。
『心』を持つヒトこそ不可思議な且つ愛しい生き物。
後書き。
この時鬼束ちひろの『陽炎』を聞いてました。
一日一日がとてもいとおしくて大切だと思うこのごろ。
来て読んでくれてありがとう。
先日この話をアップしたのですが、変な感じで処理されていたので、また再度アップします…、なんでだろ。
では、続きをどうぞ。
『light up』⑭
*
涙を落とした百目鬼の眼に、愛しいひとと半分分けたその眼に、視えたのは、流れてきたのは、…映像だった。
闇に流れる白煙。
仄かな炎。
赤く青く、色とりどりの炎。
それが闇に広がる。
咲く花の様に美しい炎は、静かな闇の水面に花の如く浮かんでいる。
その中に見合いながら微笑む二人の女性の姿が浮かぶ。
それはもう居ない次元の魔女侑子と、百目鬼の妻である小羽の恩人の占いを生業にしていた女性の若かりしの頃の姿だった。
『これを、何時かの為に』
そう言って、二人の間に交わされたのは、淡い緑色の石…翡翠で出来た帯留めだった。
『大切な翡翠の為に』
そう言って渡された翡翠の帯留めは、淡い緑色に輝いていた。
闇に出来る、波紋。
『ヒトの世は数多の選択と、幾多の思いが交差し、複雑に織り成す摩訶不思議な世界、ヒトは、また選択を繰り返し時を進む、』
翡翠の蝶を介して百目鬼に向き合う様に映るのは、黒い髪を靡かせた侑子の姿だった。
『ヒトは心がある…だからこそ、願う』
侑子の背後に舞うのは数多の蝶。
白と黒の美しい揚羽蝶が映ったのだ。
だがその姿はやがて、沢山の舞い散る花びらのような蝶の中に消えていく。
『儚い夢でも、叶わぬ夢でも、もう一度と、願う』
響く声と、ひらひらと舞う蝶は何かに導かれる様に飛んでいく。
『心から逢いたいと』
悲しい声が響いた。
『アナタの願いは』
何、と、百目鬼の耳に確かに聞こえたのだ。
**
ゆらゆらと闇に揺れる煙りが墨色の空へと靡いていく。
洋風と和風の入り混じった館の縁側で、煙草をふかしていた男性は、ゆっくりと立ち上がった。
「いくのか」
同じく縁側にいた黒いふわりとした生き物…モコナは、目の前にある背中に尋ねたのだ。
「うん、いくよ…つい長居してしまった…、本来ならとっくに向こうへいっている筈なんだがね、まあ二代目店主に惚れた弱みかな」
振り返った男性…百目鬼と瓜二つの彼…祖父の百目鬼 遙は、にこやかに答えた。
「惚れた、か、…侑子にも頼まれたしな、…寂しくなる」
モコナは耳を垂れ下げしょげた様に言った。
「仕方ないさ、この世は輪だからね、またという事もあるだろうよ、…そう、君にお願いがある」
遙は優しく微笑むと、歩み寄りその手をモコナの頭に置いた。
「頼むよ、…この先、目覚めた時にあの子を支えてやって欲しい」
その笑顔は限りなく優しいもの。
「…酷いぞ、モコナにだけ押し付けて、…遙、」
モコナの目から涙が落ちた。
「押し付けた訳じゃないさ…、今自分が出来る事をしにいくだけ、…いい子だね、」
遙は宥める様に告げる。
「分かってる…モコナが此処で四月一日を待つ、それが出来る事なんだな…、遙、道中気をつけてな」
そう告げたモコナの言葉に遙は頷いた。
「また、ね」
遙はそう言葉を結ぶと背中を向け、ゆっくり歩き出したのだ。
「またな」
モコナは涙を拭い、縁側から闇に向かいいく遙の背中を見送ったのだ。
『ぬしを思うて 夜ごと 身を焦がしゃ 今宵は涙雨 これが不思議や 恋の淵 逢うて嬉しや 別れの辛さ 逢うて別れがなけりゃよい 惚れりゃ しょうこてがないわいな』
続く。
即興で作った都々逸(笑)
遙さまと着物の男性、粋とかお坊さんとか、もう…ツボだ。
では、続きをどうぞ。
『light up』⑭
*
涙を落とした百目鬼の眼に、愛しいひとと半分分けたその眼に、視えたのは、流れてきたのは、…映像だった。
闇に流れる白煙。
仄かな炎。
赤く青く、色とりどりの炎。
それが闇に広がる。
咲く花の様に美しい炎は、静かな闇の水面に花の如く浮かんでいる。
その中に見合いながら微笑む二人の女性の姿が浮かぶ。
それはもう居ない次元の魔女侑子と、百目鬼の妻である小羽の恩人の占いを生業にしていた女性の若かりしの頃の姿だった。
『これを、何時かの為に』
そう言って、二人の間に交わされたのは、淡い緑色の石…翡翠で出来た帯留めだった。
『大切な翡翠の為に』
そう言って渡された翡翠の帯留めは、淡い緑色に輝いていた。
闇に出来る、波紋。
『ヒトの世は数多の選択と、幾多の思いが交差し、複雑に織り成す摩訶不思議な世界、ヒトは、また選択を繰り返し時を進む、』
翡翠の蝶を介して百目鬼に向き合う様に映るのは、黒い髪を靡かせた侑子の姿だった。
『ヒトは心がある…だからこそ、願う』
侑子の背後に舞うのは数多の蝶。
白と黒の美しい揚羽蝶が映ったのだ。
だがその姿はやがて、沢山の舞い散る花びらのような蝶の中に消えていく。
『儚い夢でも、叶わぬ夢でも、もう一度と、願う』
響く声と、ひらひらと舞う蝶は何かに導かれる様に飛んでいく。
『心から逢いたいと』
悲しい声が響いた。
『アナタの願いは』
何、と、百目鬼の耳に確かに聞こえたのだ。
**
ゆらゆらと闇に揺れる煙りが墨色の空へと靡いていく。
洋風と和風の入り混じった館の縁側で、煙草をふかしていた男性は、ゆっくりと立ち上がった。
「いくのか」
同じく縁側にいた黒いふわりとした生き物…モコナは、目の前にある背中に尋ねたのだ。
「うん、いくよ…つい長居してしまった…、本来ならとっくに向こうへいっている筈なんだがね、まあ二代目店主に惚れた弱みかな」
振り返った男性…百目鬼と瓜二つの彼…祖父の百目鬼 遙は、にこやかに答えた。
「惚れた、か、…侑子にも頼まれたしな、…寂しくなる」
モコナは耳を垂れ下げしょげた様に言った。
「仕方ないさ、この世は輪だからね、またという事もあるだろうよ、…そう、君にお願いがある」
遙は優しく微笑むと、歩み寄りその手をモコナの頭に置いた。
「頼むよ、…この先、目覚めた時にあの子を支えてやって欲しい」
その笑顔は限りなく優しいもの。
「…酷いぞ、モコナにだけ押し付けて、…遙、」
モコナの目から涙が落ちた。
「押し付けた訳じゃないさ…、今自分が出来る事をしにいくだけ、…いい子だね、」
遙は宥める様に告げる。
「分かってる…モコナが此処で四月一日を待つ、それが出来る事なんだな…、遙、道中気をつけてな」
そう告げたモコナの言葉に遙は頷いた。
「また、ね」
遙はそう言葉を結ぶと背中を向け、ゆっくり歩き出したのだ。
「またな」
モコナは涙を拭い、縁側から闇に向かいいく遙の背中を見送ったのだ。
『ぬしを思うて 夜ごと 身を焦がしゃ 今宵は涙雨 これが不思議や 恋の淵 逢うて嬉しや 別れの辛さ 逢うて別れがなけりゃよい 惚れりゃ しょうこてがないわいな』
続く。
即興で作った都々逸(笑)
遙さまと着物の男性、粋とかお坊さんとか、もう…ツボだ。
