ここはとある予備校。予備校に通う高校生の成 歩登夫(なる ほどお)が教師である良切 海(よきり かい)の教室で経済について学んでいます。前回の話
お金と物のバランスについて考えてみよう。
海:お金と物のバランスについて考える時大事なことは経済は「実体経済」と「金融経済」に分けられることなんだ。
「実体経済」は普段、僕たちが生活用品などの目に見える商品やサービスを売買する経済のことだ。
一方、金融経済は株やお金自体を商品とみなして、それを売買する経済のことだ。
歩:それらを分ける必要はあるのですか?
海:うん。「実体経済」の取引が増えればその分経済成長としてカウントされるけど、金融経済の取引が増えても経済成長にはならないんだ。
歩:へーそうなんですか。
海:考えてほしい。物の生産量が増えて、売買が活発になることは国力が増えたと実感できるだろう。それが経済成長だ。
だけど、目に見えない金融商品や既にある不動産などの売買が頻繁に行われても、何かを生み出しているわけではない。
つまり、金融経済が活発になっても国力が増えたとはいえないだろう。
歩:あっ、なるほど。既にあるものをいくらやり取りしても何かが生まれたわけじゃないですもんね。
実体があるものを生産し、売買しないと、国力つまり経済が成長したとは言えないですね。
海:そうなんだ。そしてこれから話す物価と経済成長の話は基本的に実体経済の話だ。
それでは、私たちが暮らしを続けるための生活用品や食料、サービスを含む実体経済の特徴に触れていこう。
実体経済における物価の仕組み
海:物価とは、国全体の物の平均価格のことだ。「物価変動」と言う言葉があるけど、それは前年の平均価格に比べていくら上下したかを表している。
物価がなぜ上下するかというと、物価は物の価値とお金の価値のバランスによって決まるからだ。
お金の価値が上がれば、物の価値は下がる。逆にお金の価値が下がれば物の価値は下がる。ちょうどシーソーのような関係だ。
物を作る力とお金創る力が噛み合っていれば、物価は安定する。逆に2つのバランスが崩れれば物価変動(インフレやデフレ)が起きる。
歩:えーと。物を作る力が強いとどうなるんですか?
海:お金の量に対して物の量が多くなるから、お金が貴重になる。つまりお金の価値が上がるので、物の値段が下がるんだ。(デフレーション)
歩:ということは、物を作る力よりお金お創る力の方が強いと、お金の量が多くなり、物が貴重になるから物の値段が上がる。(インフレ)
海:その通りだ。そして、この物を作る力がどれくらい増えるかという指標が潜在成長率と言うんだ。
歩:潜在成長率?なんか公民の教科書で見たことありますね。意味わかりませんでしたけど。
海:潜在成長率とは、昨年と比べると今年どれくらい国全体で物の生産力を増加できるかという数字なんだ。
簡単に言えば、昨年より物を10%多く作ったのなら、潜在成長率は10%上昇したと言えるんだ。
歩:でもなんで「潜在」という言葉がつくんですか。
海:いいところに気づいたね。物がいくら多く作れるようになっても、その増えた物を買うお金も同時に増えないと本当の意味で経済成長はしないからなんだ。だから、見えないと言う意味で潜在という言葉がついている。
歩:物が多く作れるようになっただけじゃだめなんですね。
参考文献 :天野統康 著『あなたはお金のしくみにこうして騙されている』徳間書店(2011)注アマゾンのリンクです。