ここはとある予備校。予備校に通う高校生の成 歩登夫(なる ほどお)が教師である良切 海(よきり かい)の教室で経済について学んでいます。前回の話

 

海:今回は日本経済の全体像について説明して行こう。

 

まず図を見てほしい。これは中央銀行と民間銀行によって創り出されたお金がぼくたちの家計に入るまでの流れを表している。

中央銀行の「手」によって民間銀行は法人市場や個人市場にお金が供給されているよ。

 

歩:法人市場と個人市場とはなんですか?

 

海:法人市場というのは、企業などがお互いお金を取引している場のことを言う。以前説明した「しじょうといちば」の話で言うと、企業同士の買い物の場と捉えてもらえばいい。

 

 

 

 

また個人市場は、一般の消費者の取引の場、つまり買い物する場と考えてもらえばいい。そして、図の水槽は法人市場の取引の総額と個人市場の取引の総額をそれぞれ表している。

 

歩:個人市場の方が大きいんですね。

 

海:そうなんだ。日本は国内の市場うち約6割が個人市場が占める。3割が法人市場で政府が残り1割なんだけど、ここでは法人市場に政府も含めている。

 

銀行から法人市場へ融資という形でお金が流れ、そこから給料などで個人市場へお金が流れてくる。もちろん住宅ローンなどで直接銀行から個人へも流れている。

 

歩:なるほどー。ところで、政府は何をしているんですか?

 

海:政府も法人や個人から税という形でお金を吸い上げたり、家計に年金や給料という形でお金を供給したりしている。だけど、政府はお金を創っているわけじゃないんだ。

 

歩:そういえば政府はこれまで出てこなかったですね。

 

海:そう。政府はお金の創造には何も関与していないんだ。中央銀行である日本銀行は半官半民の許可法人という機関なんだ。

 

政府からの介入によって金融政策が損なわれないようにという建前でこのような形態になっている。そのため、政府には日銀総裁に対する解任権がないんだ。

 

歩:えー。日銀って政府の銀行であって、政府の下で動いていたと思っていたのですが、違うんですね。

 

海:日銀は政府がコントロールしていると思っている人は多いけど、政府は日銀に介入する権限がないんだ。

 

そして、自らお金を創ることができない政府は、必要なお金は税金の徴収や国債の発行でお金を集めるしかないんだ。

 

歩:「政府、国債をまた発行」なんて新聞の見出しなんかで見たことがありますが、このことだったんですね。政府が必要なお金を調達するために国債を発行していたんですね。

 

海:でも国債はいずれお金として返さなければならないもの。要するに借金だ。政府はお金が足りないとき、日銀にお金を借りなければならないだ。

 

歩:その国の政府なのに、お金が足りなくなったら日本銀行という中央銀行にお金を借りなければならないなんて変な話ですね。

 

海:そうして政府は集めたお金を公共事業や社会保障、公務員の給料などに使う。つまり、政府はお金の創造のプロセスには関与しておらず、お金を出し入れしているだけなんだ。

 

ちなみに、100円玉のような硬貨については政府が発行していると言われ

ているけど、紙幣に対して硬貨は圧倒的に少額だし、硬貨の枚数も日銀の注文を受けて製造し、日銀を通じて民間銀行に流されるから、政府がお金を創造することは基本的には行っていない。

 

歩:政府がお金の創造にタッチしていないなんて…大丈夫なんですか?

 

海:大丈夫じゃないから、日本はバブル崩壊後ずっと経済が停滞している

し、世界的にも経済の混乱が起きているとぼくは考えているけどなー。この話は長くなるからまた別の時に話すよ。

 

参考文献 :天野統康 著『あなたはお金のしくみにこうして騙されている』徳間書店(2011)注アマゾンのリンクです。