俳句エッセイ   すれ違ってしまった人生 | 俳句のとりな

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長い人生には、あのとき、ああすればよかった、こうすればよか

ったと思うことが、一度や二度は。


気がつかなかった場合もあるし、気がついていながら、すれ違っ

てしまった場合も。

 

小説『日の名残り』は、そうした主人公の物語で、2017年のノー

ベル文学賞受賞者のカズオ・イシグロ氏の作品です。

 

ノーベル文学賞の受賞理由は、「心を揺さぶる力を持った小説を

通じ、私たちが世界とつながっているという偽りの感覚の下に深

淵があることを明らかにした」ことによると言われています。

 

カズオ・イシグロ氏は1954年長崎県の生まれ。


5歳のときに両親と渡英し、大学では英文学と哲学、大学院では

創作を学んだとか。

 

イシグロ氏は、この小説を、1989年に4週間で仕上げたと言われ、

英国最高の文学賞のブッカー賞を受賞したとのこと。

 

小説と映画とでは、細部に相違があると言われていますが、小説

を原作とした映画『日の名残り』を鑑賞することに。

 

物語は1956年が舞台となっており、 ときどき、第二次世界大戦前

の1920年代から1930年代にかけての回想シーンが挿入されてい

ます。

 

英国の名門家・ダーリントン邸に一生を捧げてきた老執事スティー

ブンが、自身の半生を回想し、職務に忠実なあまり断ち切ってしま

った女中頭のミス・ケントンとの愛を確かめるさまを描いたもの。

 

印象的だったのは、スティーブンが少なからず心に想っていたミス・

ケントンから、告白に近い言葉をかけられながら、気づかない振りを

して、忙しいからと断ち切ってしまうシーン。

 

ミス・ケントンが、悲痛な面持ちで、部屋に消えていく姿が忘れられま

せん。

 

後に、第二次世界大戦が終わって、屋敷もアメリカ人の手に渡り、新

たな主人を迎えた主人公は、大きな間違いをおかしてしまったと、人

妻となった相手を訪ねる旅に出ることに。

 

主人公は、無事、相手と再会し、ある結論を得て、帰路につきます。

 

第二次世界大戦前の英国貴族社会の様子や大戦へ突入するまでの

裏話が描かれていますので、歴史秘話として鑑賞こともできますが、

そうした時代を背景とした恋愛物語として鑑賞するのが、よいようです。


[今日の一句]

 

・ふらここやパパパパと児のせがみゐて

 

近くの公園の桜は、早くも8分咲き。
多くの、子どもづれの家族が、花見を楽しむ風景が見られました。

 

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夏の時節を詠むには-暑し 涼し
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