直木賞作家・葉室麟の『恋しぐれ』は、晩年の与謝蕪村の周辺に
起こる恋愛模様を描いた短編集。
蕪村や弟子などの恋を描いた、7編が収められていますが、いず
れにも蕪村の句が添えられています。
読了後、 松尾芭蕉の句は何度も読み返しているのに、蕪村の句
は、芭蕉ほど読んでいないことに気がつくことに。
周知の通り、 蕪村は江戸中期の画家であり、また前期の芭蕉と
ともに、並び称される俳人。
俳句に写生を取り入れた正岡子規は、この蕪村に注目し、一派
で合評をおこなったほど。
また詩人の萩原朔太郎は、生来、俳句を毛嫌いしていたと言わ
れていますが、唯一、蕪村の句だけは、例外であったとか。
あらためて、蕪村の句を読み返してみましたが、画家であっただ
けに、色彩だけではなく香りの示しかたにもすぐれており、景がと
ても鮮やかなのがわかります。
しら梅の枯木にもどる月夜かな
また、固有名詞などにおいては、知識が必要なものもありますが、
おおむね、表現が平易で、わかりやすいように思われます。
直接感情をあらわす語など一つもないのに、全体に情の動いてい
るのが分かると言う人も。
春の海ひねもすのたりのたりかな
菜の花や月は東に日は西に
あまりにも有名な句ですが、蕪村の句は、読む者の意表をつこうとし
たり、奇をてらうようなことを考えてはいないとも。
なお、葉室麟の『恋しぐれ』のそれぞれの短編に付されている句の主
なものは、次の通り。
身にしむや亡き妻の櫛を閨に踏む
さみだれや大河を前に家二軒
泣に来て花に隠るる思ひかな
枕する春の流れやみだれ髪
箱を出る顔わすれめや雛二対
牡丹散て打ちかさなりぬ二三片
彼岸ですので、墓参へ。
陽気もよかったせいか、さすがに参拝者は多く、駐車スペースは満杯
に。敷地内のあちこちには、連翹の花が。
帰宅してから、いつもの散歩に出かけ、団地の中心に位置する公園へ。
桜の開花宣言が、あちこちで出されていますが、この地域では、枝垂れ
桜がほころび始めたところ。
今後、暖かい日が続くようですので、早ければ、この週末には、お花見
ができるかもしれません。
[今日の一句]
・鳩小屋のひなの気配や彼岸入
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よく知られている植物を詠むには-向日葵
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