音便表現で俳句に奥行を | 俳句のとりな

俳句のとりな

俳句を愛するかたとともに

イメージ 1

 

 

 
・土筆早や陣を取りゐる土塁跡
 

俳句には、発音の便宜上、語中や語末の音に変化が生じる音便

というものが。

 

周知の通り、「イ音」に転じたイ音便、「ウ音」に転じたウ音便、「ン

音」に転じた撥音便、「ツ音」に転じた促音便の4通りがあります。

 

動詞に助詞の「て」や助動詞の「たり」などが付くときに現れるもの

で、たとえば、次のようなもの。

 

イ音便:書きて→書いて
ウ音便:思ひて→思うて
撥音便:飛びて→飛んで
促音便:立ちて→立つて
など。

 

現代仮名遣いでは、小さく書かれる促音の「っ」は、歴史的仮名遣

いでは「つ」と大きく書かれます。

 

形容詞では、

 

イ音便:白き花→白い花
ウ音便:赤く咲く→赤う咲く
撥音便:多かるなり→多かんなり

 

時折、誤りが見られるのが、動詞のウ音便。

 

ハ行四段動詞の連用形の語尾が「ひ」+「て」の場合で、たとえば
「思ひて」を「思ふて」にしてしまう誤りです。

 

這ひて→這うて (誤)這ふて
揃ひて→揃うて (誤)揃ふて
会ひて→会うて (誤)会ふて
など。

 

ウ音便の句には、次のようなものが。

 

・不機嫌な児の奴凧地を這うて

 

・いつせいに籠を背負うて鹿尾菜刈

 

この音便を使うかどうかは、作者の自由で、元の音でそのまま表

現することもできます。

 

覚えておいて、作品の内容や韻律によって使用すると、また一味

違ったものとなるようです。

 

掲載句は、小さな砦の跡に、一斉に立ち上がった土筆の様子が、
軍勢を配し、陣を構えているかのように見えたもので、擬人法を

使って叙しています。