「ねぇ。僕の文書、知りません?」
メルが、寝起きの顔で言う。
「アナタが、手に持っておられるものではないのですか?」
さらっと、きき返してみる。するとメルは、
「これじゃありません。誰かに、摩り替えられたんです」
「?」
「これには、アイツの名が書いてあります。この世を、悪で征服しようと企んでいる奴の名が、ここに書いてあるんです。誰が、何のために、摩り替えたんでしょう?僕には、分かりません」
「・・・・・」
「旦那。良い物、拾ってきましたぜ」
<何だ?>
「なんか、古びた首輪ですよ。誰か、捨てていったんでしょう。旦那に、似合うと思いますよ」
灰色の鹿は、何気なく、首輪を見た。その途端、鹿の目が、大きく見開かれた。首輪に、十字が刻まれている。
『Holy collar』
「どうしたんです?」
<いや・・・なんでもない・・・>
「旦那に、絶対、似合いますよ。ちょっと、付けてみます?」
「・・・・・」
ボスは、鹿の首に、首輪をはめた。すると、まぶしい光が放たれ、ボスはひるんだ。
<計画は、やめだ>
「はい?」
<なんだか、悪は悪に思えてきた>
「?」
旦那は、正気だろうか?今まで、『悪は善』と、おっしゃっていたのに。
「この文書、『ソイツは、聖なるものを嫌う。もし、聖なるものを身に付けさせたら、ソイツは―――』―――あれっ、途中で消えてる―――と、書いてあります」
「ソイツは、どうなるんでしょうね?」
「さぁ?その先は、消えてますねぇ」
「そういえば、中華料理屋さんから、十字が刻まれた首輪が盗まれたんですってね」
「!」
「どうかされましたか?」
「聖なる首輪・・・」
「はい?」
「いや、なんでもないです」
「・・・・・」
メルの険しい表情。何か、感づいたようだ。
「大丈夫です。あの首輪は、付けたものを―――ムニャムニャ」
「?」
「いけない、いけない。つい、秘密を喋ってしまうところだった」
「・・・・・」
「まあるく収まると、いいんですけどね」
「?」
<今朝、○○警察署に、男が『坊主を殺したのは、俺だ』と言って出頭してきました>
<警察は、男の容疑が固まったとして、今日 殺人の罪で逮捕しました>
「やっと、犯人が捕まったわ」
部長が、得意げに言う。
「良かったですね」
「良かった、良かった」
それから嘘のように、クマンバチ団の襲撃は無くなった。メルたちミツバチは、いつもの平穏な暮らしを取り戻した。メルは時々、旅館に遊びに来てくれる。
その夜、旅館の裏庭に、2つの影が現れた。
「旦那。その首輪、似合ってますよ」
<私は、こんなの、嫌だ>
「いいじゃないですか、似合ってるんだから」
片方の影は、首輪をはずそうとした。しかし、首輪は、ガッチリとくっついて離れない。
「旦那。あきらめも、肝心ですぜ」
<うるさい!>
衝撃波。もう1つの影は、吹き飛ばされる。その時、砂利を踏む音がした。
<久しぶりだな、バーロン>
偶然なのか、月が現れた。そして、月明かりが、片方の影を照らした。バーロンと呼ばれたのは、灰色の鹿だった。月明かりは、声の主も照らした。そこに現れたのは、シャーロンだった。
「死んだはずじゃ・・・!」
<私は、不死身だ。バーロン、神は不死身だということを知らなかったのか?>
<ぐっ・・・!>
その時、Gが、現れた。
「よぉ、上司さんよぉ。アンタの元部下は、ここにいるぜ」
月明かりが、Gの横を照らす。そこに現れたのは、黄色い首輪をした黒い鹿だった。
<旦那様!>
<ミロン!>
「へ?」
Gは、唖然とした。
<これらは、ほんの序章だ。これから、本題を見せてやろう>
シャーロンが、ニヤリと笑う。すると、旅館の女将が出てきた。女将は、片手に、十字が刻まれた首輪を持っている。その首輪には、『Holy collar』と書かれている。
<スペアだ>
シャーロンは、ニヤリと笑った。首輪が、シャーロンの首に付けられた。まぶしい光が、放たれる。光が消えた後、シャーロンに羽が生えていた。
<聖なる首輪で、パワーアップした>
シャーロンは、ニヤリと笑った。
<バーロンも、いつかパワーアップして、私と一緒に生きよう>
「・・・・・」
シャーロンは、飛び去っていった。
「旦那・・・」
<善は善。この言葉に、異議なし!>
そう言うと、バーロンは走り去っていった。
「俺達も行こうか」
Gとミロンが、去っていく。残されたボスは、
「旦那・・・。俺・・・旦那より・・・上の立場になっちゃった・・・。ゴメンよ・・・旦那・・・」
涙が、あふれてきた。
「ボス。その鹿は、なんなんです?」
「何も聞くな」
ボスは、最近、機嫌が悪い。何があったのかは、誰も知らない。ただ、辺鄙な鹿の首にある首輪は、付けられたものは付けたものに従わなければならないという掟があることだけは知っていた。たとえ、付けさせられたものが、神であろうと―――
メルが、寝起きの顔で言う。
「アナタが、手に持っておられるものではないのですか?」
さらっと、きき返してみる。するとメルは、
「これじゃありません。誰かに、摩り替えられたんです」
「?」
「これには、アイツの名が書いてあります。この世を、悪で征服しようと企んでいる奴の名が、ここに書いてあるんです。誰が、何のために、摩り替えたんでしょう?僕には、分かりません」
「・・・・・」
「旦那。良い物、拾ってきましたぜ」
<何だ?>
「なんか、古びた首輪ですよ。誰か、捨てていったんでしょう。旦那に、似合うと思いますよ」
灰色の鹿は、何気なく、首輪を見た。その途端、鹿の目が、大きく見開かれた。首輪に、十字が刻まれている。
『Holy collar』
「どうしたんです?」
<いや・・・なんでもない・・・>
「旦那に、絶対、似合いますよ。ちょっと、付けてみます?」
「・・・・・」
ボスは、鹿の首に、首輪をはめた。すると、まぶしい光が放たれ、ボスはひるんだ。
<計画は、やめだ>
「はい?」
<なんだか、悪は悪に思えてきた>
「?」
旦那は、正気だろうか?今まで、『悪は善』と、おっしゃっていたのに。
「この文書、『ソイツは、聖なるものを嫌う。もし、聖なるものを身に付けさせたら、ソイツは―――』―――あれっ、途中で消えてる―――と、書いてあります」
「ソイツは、どうなるんでしょうね?」
「さぁ?その先は、消えてますねぇ」
「そういえば、中華料理屋さんから、十字が刻まれた首輪が盗まれたんですってね」
「!」
「どうかされましたか?」
「聖なる首輪・・・」
「はい?」
「いや、なんでもないです」
「・・・・・」
メルの険しい表情。何か、感づいたようだ。
「大丈夫です。あの首輪は、付けたものを―――ムニャムニャ」
「?」
「いけない、いけない。つい、秘密を喋ってしまうところだった」
「・・・・・」
「まあるく収まると、いいんですけどね」
「?」
<今朝、○○警察署に、男が『坊主を殺したのは、俺だ』と言って出頭してきました>
<警察は、男の容疑が固まったとして、今日 殺人の罪で逮捕しました>
「やっと、犯人が捕まったわ」
部長が、得意げに言う。
「良かったですね」
「良かった、良かった」
それから嘘のように、クマンバチ団の襲撃は無くなった。メルたちミツバチは、いつもの平穏な暮らしを取り戻した。メルは時々、旅館に遊びに来てくれる。
その夜、旅館の裏庭に、2つの影が現れた。
「旦那。その首輪、似合ってますよ」
<私は、こんなの、嫌だ>
「いいじゃないですか、似合ってるんだから」
片方の影は、首輪をはずそうとした。しかし、首輪は、ガッチリとくっついて離れない。
「旦那。あきらめも、肝心ですぜ」
<うるさい!>
衝撃波。もう1つの影は、吹き飛ばされる。その時、砂利を踏む音がした。
<久しぶりだな、バーロン>
偶然なのか、月が現れた。そして、月明かりが、片方の影を照らした。バーロンと呼ばれたのは、灰色の鹿だった。月明かりは、声の主も照らした。そこに現れたのは、シャーロンだった。
「死んだはずじゃ・・・!」
<私は、不死身だ。バーロン、神は不死身だということを知らなかったのか?>
<ぐっ・・・!>
その時、Gが、現れた。
「よぉ、上司さんよぉ。アンタの元部下は、ここにいるぜ」
月明かりが、Gの横を照らす。そこに現れたのは、黄色い首輪をした黒い鹿だった。
<旦那様!>
<ミロン!>
「へ?」
Gは、唖然とした。
<これらは、ほんの序章だ。これから、本題を見せてやろう>
シャーロンが、ニヤリと笑う。すると、旅館の女将が出てきた。女将は、片手に、十字が刻まれた首輪を持っている。その首輪には、『Holy collar』と書かれている。
<スペアだ>
シャーロンは、ニヤリと笑った。首輪が、シャーロンの首に付けられた。まぶしい光が、放たれる。光が消えた後、シャーロンに羽が生えていた。
<聖なる首輪で、パワーアップした>
シャーロンは、ニヤリと笑った。
<バーロンも、いつかパワーアップして、私と一緒に生きよう>
「・・・・・」
シャーロンは、飛び去っていった。
「旦那・・・」
<善は善。この言葉に、異議なし!>
そう言うと、バーロンは走り去っていった。
「俺達も行こうか」
Gとミロンが、去っていく。残されたボスは、
「旦那・・・。俺・・・旦那より・・・上の立場になっちゃった・・・。ゴメンよ・・・旦那・・・」
涙が、あふれてきた。
「ボス。その鹿は、なんなんです?」
「何も聞くな」
ボスは、最近、機嫌が悪い。何があったのかは、誰も知らない。ただ、辺鄙な鹿の首にある首輪は、付けられたものは付けたものに従わなければならないという掟があることだけは知っていた。たとえ、付けさせられたものが、神であろうと―――