「アイツか、例の事件の情報ば、知っとるげなんだ」
ブラホの声が、万屋から聞こえる。
「誠か?」
ホワイトの声。
「ああ、ほんなこつばい。『メル』っちゆう、メリケン産ミツバチばい。アイツな、クマンバチか、敵にいるばい。アイツな、クマンバチ団の幹部か怪しいと確信したのしゃ」
ブラホの、勝ち誇ったような声。
「なれど、何故、あやつが左様な噺を?」
ホワイトが、首をかしげる。
「しょりゃ、情報屋のジャイアントスターがら、聞いたんやろ。あいつな、情報屋のくしぇに、おしゃべりやけんな」
ブラホが、声を潜めて言う。どっ、と笑い声が響く。
「そたわごとう。『なんぞ、教ゑてくれ』と申すと、気前よくぞ教ゑてくれるもんな」
ホワイトが、渋い顔で言う。そして、
「どうとはいえゐゐことまで、存じておるからな。大江戸野球巨人軍団には、気をつけたほうがゐゐぜ」
ジャイアンツというのは、ホワイトが呼んでいる、ジャイアントスターの愛称だ。ジャイアントスターは、鹿児島弁を操りブラホたちの仲間なのだが、なんでもペラペラと喋ってしまう癖がある。そのため、何度も、危険な目に遭ってきた。
「あやつ、破門したでござる者が良ゐんじゃねぇ?」
ホワイトが、憎憎しげに言う。
「まぁ、まぁ、兄さん。破門だなんて、物騒な。もっと、別の方法が、あるんじゃなかの?」
ネプトゥーヌスが、兄をなだめる。
「ちっ。貴様は、何時も、獅子身中の虫の肩を持つんでござるな」
そう言うとホワイトは、ブラホに、4の字固めをかけた。ブラホは、「やめてくれ!僕な、裏切り者じゃなか!」と、叫んだ。
「兄さん!」
ネプトゥーヌスが、兄を制止する。
「ちっ。合気柔術の技が、小規模になり候」
そう言うとホワイトは、絡めていた足をはずした。ブラホは、ぐったりしていた。
「ぶらほも、大江戸野球巨人軍団から聞ゐたんじゃろ。『めると申すきゃつが、例の一大事の噺を存じ上げる』と」
「そうだとしても、ブラホさんは、裏切り者じゃなかよ」
ネプトゥーヌスが、寂しげな顔で言う。
「いやはや、存ぜぬ。何時、こやつも裏切るか、何奴も存ぜぬんじゃ」
ホワイトが、あきらめたように言う。
「兄さん・・・」
ネプトゥーヌスは、初めて、兄の寂しげな背中を見たのである。
      
      仲間は、いつ、裏切るか分からない

「ヘックショイ!誰(だい)か、僕ちゃんのこと、噂してるんかな?」
ジャイアントスターは、大きなくしゃみをした。
「わいが、あんたの鼻の中に、入ったよってにやで」
モコモコダストが、ニヤニヤしながら言う。
「僕ちゃんが掃除しねのも悪いけど、なんで、お前にイタズラされなきゃいけねんだよ?説明してくれよ!」
「あんたに、説明やる義務はあらへん」
「僕ちゃんは、説明してもらう権利があるもんね」
「わいは、説明をやる義務はあらへんな」
「なんだと?コラ!」
「おっとドッコイっって。暴力反対!安保反対!」
「そげんな古いネタ、年寄りにしか、分からんだろ」
「なんか?」
「いんにゃあ、なにも!」
「そりゃ、良かった」
―――埃のクセに!ゴミのクセに!こん世のゴミのクセに!ゴミなんか、いらん!
―――わいに限らず、ゴミ扱いされてる人間は、山ほどおるんやろな。わいは、ホンマに、ゴミやけど
2人の思いは、複雑である。

     わいって同じ運命の人間を助けたい

「おい、ゴミ!どこ、行くんだよ?」
「じゃかぁしい。自分に、ゆう義務はあらへん」
「あっそ、いいもーんだ。1人で、芋焼酎、飲んでこようっと」
「勝手ぇにせえ」
2人は、喧嘩別れをした。その後のモコモコダストの行方を知るものは、誰もいない。