Netflixでなんとはなしに観た映画「幸福の電車に乗せられた少年」。原作があることも、実話をもとにした物語であることも全く知らずに観ました。
歴史が苦手だったので、以前からイタリアの戦後を描いた映画を観るたびに、疑問に思っていたことがありました。
第二次世界大戦のときイタリアはドイツ、日本と三国同盟を結んでいたはずなのに、なぜイタリアの戦争映画にはドイツ軍に攻撃されたり、ドイツ軍と戦ったりする場面が出てくるのだろう、と。
この映画を観て、その疑問がようやくつながりました。
物語の背景となるのは、第二次世界大戦が終わる少し前から戦後にかけてのイタリアです。
イタリアは当初ドイツと同盟関係にありましたが、1943年にムッソリーニが失脚し、その後イタリアは連合国と休戦。すると、それまで同盟国だったドイツ軍がイタリアを占領するようになります。
ナポリでもドイツ軍による占領が始まり、1943年9月には市民が立ち上がってドイツ軍に抵抗する「ナポリの四日間」と呼ばれる出来事が起こりました。最終的にドイツ軍は撤退し、10月1日には連合軍がナポリに入ります。
「昨日まで味方だった国が、突然敵になる」
当時のイタリアの人々にとっては、想像もできないような大変な状況だったのだろうと思います。
そして3年後の1946年。
物語は、ナポリの貧しい地区に住む少年アメリゴから始まります。
アメリーゴは、アントニエッタという母親と二人で暮らしています。靴職人の弟子をしたり、ボロ布を拾ったりしながら何とか生きていますが、食べ物も十分に買えず、やせ細っています。
イタリア共産党系の団体が、こうした貧しい南部の子どもたちを救おうと、北部・中部の家庭に預け、冬の間、より良い環境で暮らさせる活動を始めます。
ところが、戦争が終わったばかりの町では、そんな話を簡単には信じられません。
ロシアに連れていかれて殺される、窯に入れられて食べられる……。
そんな恐ろしい噂が飛び交い、子どもたちも怯え切ってしまいます。
南部と北部では文化も生活水準も大きく違います。南部の人たちにとっては、まるで「別の国へ連れていかれる」ような不安を感じたのではないでしょうか。
それでも活動家たちの必死の説得によって、少年たちは汽車に乗り込みます。
その先は……。
Wikiにも載っていますので、私はここまでにします(笑)。
少し前に、ペッピーノ・ディ・カプリの伝記テレビ映画を観ました。
その中で、彼が4歳の頃からカプリ島に駐留していたアメリカ軍の前でピアノを弾いていた、と紹介されていました。
ペッピーノ・ディ・カプリは1939年生まれですから、1943年にはもうカプリ島に連合軍が駐留していたということですね。実際、本人の公式サイトにも、4歳の1943年からカプリ島に駐留していたアメリカ軍の兵士たちの前で演奏していたとあります。
映画を観ていると、こういうところで歴史が一本につながってくるのが面白いです。
話は戻りますが、この物語に出てくる二人の女性が、本当に魅力的でした。
アメリーゴの母親役、セリーナ・ロッシ。
汚れた服にぼさぼさの髪。貧しいナポリの「かあちゃん」という感じの役なのですが、美貌は隠しようもなく、そして歌声がハッとするくらい美しい。
後で調べてみたら、歌手でもあり女優でもある方でした。イタリア版「アナと雪の女王」では主人公の声を担当したそうです。そして、これからどんな女優さんになっていくのだろうと、とても気になりました。
少年アメリゴが、後になって母親のことを「ナポリ一の美人で、歌が上手かった」と語るのですが、「なるほど」と納得してしまいました。
この名前、覚えておきます!
一方、モデナで少年を引き取った女性、バーバラ・ロンキもとても印象に残りました。
知的でありながら、慣れない子育てに戸惑い、それでも少しずつ少年に愛情を注いでいく。
母親とはまた違う形の愛情を抱える、複雑な役どころです。
その心の揺れを、バーバラ・ロンキがとても見事に演じていました。
この二人の女性がいたからこそ、この映画が単なる「貧しい少年の物語」ではなく、二つの母親、そして二つの愛情の物語として心に残ったのだと思います。
2024年公開 とても良い映画でした。
