温暖地の夏型結露対策 | オーガニックスタジオ新潟社長の奮闘記 │ おーがにっくな家ブログ

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10年目に夏型結露が発覚

 

日経アーキテクチャーの夏型結露の
レポート記事がかなりショッキングだった。

 



6地域の温暖エリアにて、特別に施工上の問題なかった住宅で、
10年目の点検時に、夏型結露が発生していることが判明したケースを紹介してます。

従来の結露対策といえば、冬型の結露。
冬の方が、室内温と外気温の差が激しいので起こりやすい。
室内の水蒸気が壁の中に浸透して、壁の中で結露してしまう現象です。

それを防ぐために防湿フィルムが室内側に貼られてそれが一般化した。
いわゆる「新在来工法」という、
新住協で開発した高断熱高気密住宅のスタンダード。

より省エネで快適な空間を求めて、
北海道発の技術が、西日本の温暖なエリアにも広がっていきました。

高断熱高気密住宅は、従来は、全館暖房をメインとして考えられていたのが、
ここ数年は、夏場の快適性の追求が注目され、
全館冷房としての使われ方も、増えてきています。

 



今回の日経アーキの事例では、冷房によって壁の中に侵入した水蒸気が、防湿フィルム側でせき止められ、冷房によって結露している。典型的な夏型結露だ。

(工務店サイドは防湿フィルムを外側に張ってはどうだとの提案があったようだが、今度は冬にとんでもない結露になっていたことでしょう。危ない・・・・)


GWを用いて、室内側に防湿フィルムを張る方法は、

我々も同様の工法をしているために、気になるわけで、再検証してみました。

仮に、外気温33℃で湿度75%の空気の露点温度は28度になる。
室内側がエアコンで27℃に冷やされていれば、壁の中で結露が起こってしまうことになる。
そのような状況が一次的ならば乾いて問題にならないが、断続的であると、結露は水になり、断熱材や木材に吸い込まれてカビが生える要因にある。

しかし、気候は地域差があるのでどこでも同じようになるのでないので、
地域に合わせた検討が必要だ。

そこで、準寒冷地代表として、5地域の新潟市と、
温暖地の代表として、7地域の熊本市で、
QPEXを用いて、同じ断熱仕様で作った場合の冷暖房エネがどう変わるか計算してみた。
(自立循環型住宅のモデル:Ua値0.46の同じ仕様で検討)

 

新潟の冷暖房負荷(右上の数値)

 

熊本の冷暖房負荷

 



新潟市を100として、熊本の暖房エネは46% 冷房エネは410%になった。
全館冷暖房をしようとすると、冬の暖房より夏の冷房エネルギーが多いという結果だ。

次に外気が、夏にはどのように1時間単位で変化しているのかを、
2021年の7月から9月にかけて調べ、

1時間単位で露点温度が25度以上になった日をカウントしてみた。

新潟市の場合ですると6日間が該当する。

もっとも状況が悪かったのが8月3日の熱帯夜の時。
23時になっても外気温は29.5℃で相対湿度89%。
露点温度は27.5度となった。



一方で熊本市で、7月から9月にかけて同様に調べると、
25度以上の日が、合計で29日もあることが分かった。
例えば。8月1日は深夜の1時に26.3℃であるが、相対湿度は100%になっている。
ということは、露点温度も26.3℃である。濃い霧に包まれた夜であったことだろう。

もはや、「通風で夏を旨とすべし」で暮らしても、
汗だるまで寝れないことが読み取れます。
6~7地域では、断続的に高温多湿が続くので、冷房の連続運転が求められています。
 

 

夏の「逆転結露対策」のまとめ

 


① 自分のエリアの気候特性を調べる。
気象庁の過去データで、夏の1時間単位での露点温度の変化を数年分確認しましょう。
月単位やその日での平均値ではなく、非定常の1時間単位で調べましょう。
目安としたら、露点温度が26度を超える時間が12時間以上、シーズンで10回以上ある地域では何かしらの対策が必要となると、個人的には考えます。



② 室内側の防湿フィルムを可変性のあるものに使うことが有効。
具体的にはタイベックスマートのように、冬場の絶対湿気が少ない時は湿度を通しにくく、夏になり多湿になると湿度を通しやすい性質を持ったシートを室内側の用いることです。
外の湿気がせき止められず、結露水になりにくい。

 



③ 冷房温度を下げ過ぎない。
昨今、高断熱住宅に住むユーザーの間で、25℃位の設定で過ごす方が非常に多かった印象があります。今年の夏はTwitter情報でよく伝わってきました。 
しかし、新潟のような5地域であれば、問題になるリスクが低いですが、
6地域以南の温暖エリアの方の場合は、可変透湿シートを使っていない住宅にお住まいの方は、27℃程度までで、冷房温度をやりくりされた方が良いと思われます。
室温を下げ過ぎずに、湿度を下げて快適にする方向性です。

 

関連動画

 

 


④ 工事中に構造材を濡らさない
もちろん、上棟から雨囲いが終わるまでの、構造材を雨に当てない配慮が重要です。
万が一、構造材が濡れたケースは、初年度からかなりの逆転結露になることが想定されます。そうなってしまった場合はリカバリーとして、室内側に可変シートを使うことが有効でしょう。

日経アーキの事例では、改善工事として、塩ビより10倍の透湿性のある自然系クロスに張り替えていましたが、可変シートの性能を生かすためにも、塩ビクロスはやめましょう。