◎ 京都の建築と弁柄
遠いですね。なかなか新潟からは気軽にはいけません。
初日は京都の北郊外にある、大原にて宿泊。
到着して少し時間があったので、寂光院と聖徳太子ゆかりの尼寺を見学する。
まずは最初の見学地ではあるが、大原は弁柄しあげのオンパレード。
弧雲という名の茶室へと続く前の庭がきれい だ
が、尼のための建物と思われる建物の外壁。弁柄の赤と、弁柄の塗が落ちて、下地の黒がいい塩梅に出てきている表情が、緑にマッチしております。赤は緑の補色なのであうんですよね。
見学後、大原を散歩する。ここ大原は田舎の風情が色濃い。有名な漬物屋の西利は、この地のシソを使うという。
京の建築としては町家の印象が強いのであるが、農家的住宅様式の参考になる。
東日本の建築ではめったに見ないが、京都を中心に、東は飛騨高山、西は岡山まで、日本の中央部では、弁柄を幅広く使っております。
弁柄の赤味を強めれば、みやびやかで重要な建物に似つかわしいが、酸化鉄(さび色)や墨を混ぜて落ち着かせるなど自由自在に用いることができますね。
祇園の街の平均的な街並みはこんな感じ。酸化鉄と松煙墨を五分五分くらいに混ぜたの配合でしょうか。「弁柄煤」は、とても落ち着いた「古色」となり、最も伝統を感じさせる色合いです。
墨を多くして、油で磨くと黒光りしてきて全く別の印象になります。
写真は祇園の甘いもの屋さんです。
黒い格子の奥に店の明かりが幻想的ですね。
弁柄は、塗り壁に混ぜる顔料としても使えます。
これはかなり新しい建築ですが、土壁系に弁柄を混ぜて温かい色彩にしてあって、上品な女性のようなイメージに仕上がっておりますね。入口の右わきに、古い漬物壺などを置いて、植木で点景を作り緑で演出していたら完璧です。
祇園で一番目を引いた建築はこれ。
どうやら有名な料理屋さんらしいが名を忘れました。
大胆で鋭角な犬矢来と黒い外壁。そして、真壁により、柱で分割された赤壁のハーモニーが見事です。ここまでくると現代アートですね。かっこいいなと思いました。
余談ですが、オーガニックスタジオ新潟ではよく用いている杉板外壁に弁柄塗装ですが、
中途半端な知識の建築関係者からまれに聞こえてくる、そんなのはダメじゃないかというご意見についてです。
ものごとの物差しがずれている愚問なので、京都の街でも見てくればよろしいのではなかろうかと思います。いうまでもない。
ちなみに、京都市と新潟市の平均降水量もほぼ同じ。気候的にはあまり大差はないが温暖差が内陸部だから京都のほうがやや厳しいようです。
しかしながら、祇園界隈のような弁柄煤で、新潟の新興住宅街で建てようとなると、サイディングパワーの中で、一番ふつうであるはずが異端すぎて浮いてしまいます。
同じく自然な風合いのウッドロングエコも同様の懸念があります。
全面杉板張りにする場合は、
比較的に敷地にゆとりがあり、緑の多くて、街並みもこれといって取るべきものが無いならば採用が可能になるでしょう。
または、郊外(いなか)の土地ですね。
一斉に新築の始まる団地では、ガルバリウムを用いて控えめにするか、杉板でも着色して目のつぶれるくらいで貼るのがよろしいかと思います。