【クレイジージャーニー 】
『久しぶり、元気だった?しばらく話してなかったよね。心配かけてごめん。一晩病院で過ごして、フライトを延ばしたんだ。痛くて動けなかったから。
でもほら、もう傷もだいぶ塞がってきたから治るよ。充電器は電圧違うの知らずに挿した途端に壊れてスマホもほぼ使えなくて、代わりの探してたけどえらく高いんで買わなかった。iPhone持ってるホテルのスタッフに最後は頼みこんで充電してもらって君にメッセージ送ったんだよ。そして今家に着いたから電話したんだ。』
最終日に一人でスクーターで出掛けて砂地でスリップして転んだらしく、画面越しに見える右半身腕と脚に出来た赤い擦り傷が痛々しかった。ヘルメットのおかげで顔や頭は無事だった。
単独事故で骨折などもなくその程度の怪我で済んで運が良かったのかもしれない。事情がわからずどれだけ心配したことか、、
上司は予定通りの便で先に帰国したらしい。
『あんまり詳細言っても心配させると思ったから、問題 ない大丈夫だよって送ったつもりだったんだ。
とにかく忙しく動き回って街も近いしいろんな島を探索してた。ビーチ、プール、バーをハシゴしてたら毎日があっと言う間に過ぎちゃってたよ。
君と一緒だったらどんなに良かったか。』
詳細を聞けば状況も納得できるけど、画面越しでゆっくり顔を見ながら話せたからこそ。やっぱりコミュニケーションを取らないと心によくない。
大事な時期だから無茶して欲しくなかった。
『これから今夜中に上司に話さなきゃいけない大事なことがあるから一旦電話切るね。今夜早く寝る?遅くなってもいいならまた後で電話するよ。』
仕事の面でも新しい動きがあったようだ。これからしなくてはいけない手続きも。
「うん、わかった。しっかり考えて話して。私は何時でも大丈夫だから、また電話して。」
折り返しの電話の後、彼は片道400キロもある出張先へと車で向かうと言う。朝の3時に無事にホテルに着いたとメッセージが届いた。