県外生活~いってきます~ | バイだからこそ…。。。

県外生活~いってきます~

本当の最後の夜になりました。

俺と元樹と舞は3人でカラオケに行った。

明日が最後なんて気がしないほど普通に普通で。

通い慣れた道、スピード違反で捕まってしまった(笑)

最後の最後で…。。(笑)
そしてカラオケでいつものように歌を歌い楽しんだ。

家に帰り、眠りに就く。

体を重ねることもなく、泣くこともなく…
今まで通りに。

セミダブルのベッド。

隣には元樹が。

どんな気持ちで眠りについたのだろう。

一緒に居ることが当たり前すぎたから…最後の最後まで実感はわかなかったように思う。

知らぬ間に朝をむかえ、俺はいつものようにキッチンへ。

そして、元樹に持って帰ってもらえるように炊き込みご飯をおにぎりにし、ラップに包んだ。

元樹を起こし、付き合いはじめの頃に作ったタラコスパゲティーを作り、二人で食べた。

おれらはいつものように…いつものように…

だけど…

目を合わすことも、触れることも、できなかった。

お互いにわかっていた。

触れてしまえば押さえきれない気持ちを。

今にも崩れそうな気持ち。

「よし、いくわ」

「うん」

元樹は言った。

「出張だと思えばイイ」

車のところまで見送りにおりた。

元樹が言った。。

「行ってきます」

俺は精一杯の笑顔で答えた
「行ってらっしゃい」

車に乗り込む元樹の表情が一瞬崩れた

耐えたのだろう。

目は赤い。

俺は手を振った。

涙を見せず。

お互いに涙を見せず。

そして…車が見えなくなってから。

玄関のドアをあけた瞬間…俺は全身の力が抜け、泣き崩れた

何度も何度も元樹の名前を呼んだ。

いつも…いつも…呼んでいた名前を…

「元樹…」

「元樹…」

「元樹…」

「…行かないで」

「…元樹」

「…元樹」

「…元樹」

「…いやだよ…」

「行かないで…」

伝えてはいけない気持ちを誰も居なくなった脱け殻のような、一人では広すぎる2人の家の玄関で… 

俺は何度も何度も泣きながら声に出しては泣いた。

気付けば日は沈み… 

引っ越しの準備を仕上げなければならないと、重い体をおこした。

「元樹は帰ったの?もう行っちゃった?」

心配していたのだろう。

仕事に行った舞からメールが来た。

「辛い。大丈夫。」

そんな内容を送信したように思う。

引っ越しの準備をしていたら、あっという間に県外での最後の夜を迎えた…