俺はそばが好きである。
中学生の頃なんか
本気で『俺はそば職人になるんだ!!だから高校へは行かない!!』と言い出し親と大モメしたぐらいだ。
俺が
そばをこんなに大好きになったきっかけの1つとして、実家の近所にあるそば屋の存在は外せない。
そこのそば屋さんは
俺が小学生の頃からあった。
とにかく
美味しくて…ことある事に兄と二人がかりで親にそこのそば屋さんへの外食をねだったのを覚えている。
中学生になってからも変わらず何度も家族で食べに行った。
高校生になると
自分の小遣いを握りしめ、友人や当時付き合ってた彼女なんかも連れて行った。
俺は
『なっ!!めっちゃ美味いだろ!!中でもセットメニューのミニカツカレーの冷たいのがおすすめなんだよなぁ。』
なんて
自分の手柄のように威張ってた。
大人になってからも
色んな人を連れていった。
『ここがねぇ、美味いんですよ♪中でもセットメニューのミニカツカレーの冷たいのがおすすめですね。』
いくつになっても変わらず調子に乗って威張っていた。
ハセなんか何度も一緒に行ったなぁ。
友達の家に遊びに行って泊まった帰り、ハセと二人でどうしてもそこのそばが食べたくて、開店時間まで駐車場で早朝から待ってたこともある。
上京してからやツアー中もどんなそばを食べても、俺はその近所のそば屋の味と比べては
『いや!!家の近所のそば屋の方が断然美味い!!』
と心の中思ってました。
そんな
ずっと大好きで、俺の思い出がたくさんのそば屋さん。
本当にすごく寂しいことに…
今月いっぱいで
閉店してしまうんだ…。
ついさっき
最後のそばを食べてきました…。
今まで
ずっと大好きだったそこのそばの味はやっぱり変わらず、俺の中で日本一の味でした。
街の中にある訳じゃないから、いつもたくさんのお客さんで混んでるってことはそんなに無い。
それでも
お昼時はそこのお店のファンが次々と来店する。
今日は
中途半端な時間に行ったから、お客さんは俺を含めて4組だった。
いつものように
メニューを見るとそこには、子供の頃から今の今まで見たことがなかった『閉店のお知らせ』という太文字…。
『あぁ…俺は本当にこのお店が好きだったなぁ。』
と込み上げる寂しさの中改めて実感した。
小さい頃からよく来てたし、今やってる仕事のこともあってか、店の人は俺を覚えてくれている。
『来てくれたんですね。』
といつも通りの優しい笑顔でお店の人が俺に言ってくれた。
アルバイトはいない。
いた時期もあったけど、今はご夫婦だけでやっている。
店内の片付けや料理を運ぶのは奥さんの仕事、そばを作るのが店長である旦那さんの仕事。
当然
俺という1人の人間が小学生から28歳になっているのだから、ご夫婦も年を取った。
子供の頃に見た奥さんの笑顔を不意に思い出し、またしても寂しい気持ちになってしまう。
何を注文するか迷ったけど、シンプルに『ざるそば』を注文した。
店内をぼ~っと見回すと
『あの時は、あそこの席だった…であの時はあそこに座ってた。』
と昔の自分を思い出す…。
『あそこの席が好きだったなぁ。』
とか
『あの時はあそこでこんな悩みを抱えてたな…』
とか
本当に思い出がたくさんの店内。
《ご自由にどうぞ》と書かれた本棚には漫画や雑誌がぎっしり。
手塚治の本が豊富で中学高校の頃、そばを食べ終わった後もよく漫画を読んでいた。
物思いに耽っているとざるそばが到着した。
するとそこには大きな海老天が二本添えられていた。
『店長からのサービスです。長い間本当にありがとうございました。』
と奥さんが言ってくれた。
何だか寂しいやら嬉しいやら色んな想いが溢れて来て、『ありがとうございます。頂きます。』と声を出す瞬間思わず泣きそうになった。
これが最後かと思うとすくう度麺の量が少なくなるのが嫌で…極力ゆっくり少しずつ食べました。
他のお客さんがお会計の度に
『長い間お疲れさまでした。ここのおそば大好きでした。』
とご夫妻に声をかけて帰る。
俺は声をかけるだけでは満足出来ず、何か出来ないかとテーブルで持っていた手帳から1ページを破り長文の手紙を書いて置いて来ました。
僕はずっとずっといくつになってもここのお店の大ファンです。
と最後に書き記した。
本当に美味しいおそばを、今までありがとうございました!!
ずっと変わらずそこにあると勝手に思ってた…
帰り道
やっぱり泣いてしまいました。
追伸
俺の主観故に悲壮感ただよう文章ですが、実際そのお店が閉店に至ったのは前向きな理由からです。
今月いっぱい営業しているので
もしも
札幌近郊住みで気になった方は、かなり読みにくいですが添付写真のざるに刻まれた名前を頼りにぜひ行ってみて下さい。
本当に美味しくて素敵なお店です。
あまり大勢で行くと
忙しくさせてしまうので、ほんのりと行ってみて下さい。笑