まだ、文字描きとして、信じられないぐらい下手だった頃。
それでも会社は、あたしをきちんと職人扱いしてくれていた。

今、思えば、とてもいい職場だった。

でも、仕事はきつかった。忙しかった。
実力以上の結果を求められた。

描いても、描いても、上手くいかず… 気にいらない、何度も何度も描きなおした。

現場描きにも行った。 たくさんの視線を背中に感じ、緊張で手が振るえた。
肩に力が入って、上手い線が描けるわけない。

師匠たちの筆の動きを凝視する。
文字のカタチ、描き順、筆の止め方、力の入れ方、盗め!盗め!盗め!
自分に言い聞かせる。

心がリラックスして、筆がすべるようになるには、随分の年月がかかったかな…