彩川は広大な遊園地の駐車場に、
車に乗って現れた。

車外に出ると彩川は、
遊園地の入り口に向かって歩き出した。

入園ゲートの付近には、
出迎えの者が彩川を待っていた。

出迎え「ようこそ、彩川さん」
彩川「ああ」
出迎え「ようこそ、航空要塞へ」
彩川「要塞? これ、遊園地じゃないのか?」

彩川はわざとらしく出迎えをからかった。

出迎え「これから島へ送迎します」
彩川「......」
出迎え「航空機だと撃墜の危険もありますので...」
彩川「......」
出迎え「念のため航空要塞を稼働することにしました」
彩川「......」

出迎え人は機械的に説明を始めた。

出迎え「中に入ったら適当に遊んでいて下さい」
彩川「......」
出迎え「様々なアトラクションがあります」
彩川「......」
出迎え「気の向いた頃にゲートから出園して下さい」
彩川「......」
出迎え「外に出た瞬間、そこは島です」
彩川「......」

彩川は何をいまさらというニュアンスで、
ただ黙っていた。

出迎え「彩川さん、再び会えて嬉しいですよ」
彩川「......」
出迎え「かつて二回ほど戦場で一緒でした」
彩川「......」
出迎え「初めての時は、巨大な火炎放射ロボでしたね」
彩川「......」
出迎え「デリバリー地獄の業火って感じの」
彩川「......」
出迎え「パ、パ、パロマロボ! と敵方は叫んでいました」
彩川「......」

彩川は無言のままでいた。
一過性全健忘に陥ったフリをしている。

出迎え「二回目は確か...」
彩川「......」
出迎え「デビルマンそっくりの壮大な人型戦車でした」
彩川「......」
出迎え「思い出すだけで鬱になりそうな光景というか...」
彩川「......」
出迎え「あまりの残虐さに味方さえ引いてましたね」
彩川「......」

彩川は今度は、
重度の感音性難聴を装っている。

出迎え「島では中尉が、彩川さんを待っています」
彩川「......」
出迎え「陥落の危機が迫る島への援軍が...」
彩川「......」
出迎え「なんと、彩川さん一人のみとは」
彩川「......」
出迎え「まるでビグザムのようですね」

出迎えの要塞関係者はウキウキしながら例えていた。
どうやらガンダム好きのようだ。

彩川「ビグザム?」
出迎え「ええ」
彩川「せめてガンダムとはいってくれないのか?」
出迎え「じゃあガンダム」
彩川「あのさ」
出迎え「はい」
彩川「そんな、取って付けたようにいわなくていいから」

彩川はようやく歩を進めた。
遊園地の入園ゲートをくぐるために。

彩川「そろそろ出発してくれ」

彩川は口髭をさすった。
出迎えの男も彩川に続いてゲートを抜けて遊園地...
いや、航空要塞の内部に入った。

彩川「島へ」