梅崎は月本が運転する車に乗っていた。
運転しながら月本が話しかける。
月本「あんたって、元ヤクザ?」
梅崎「ははは、そうだよ」
月本「なんで刑事になったの?」
梅崎「認められて雇われた」
月本「ボスはそれを許した?」
梅崎「ボスの方が先に課長に採用されたんだ」
月本「え?」
梅崎「腐った高官の処分を下請けした見返りさ」
月本「ああ、あるね、そういうの」
小麦色で端整な顔立ちの月本は、
真っ黒でズングリした梅崎に話を続けた。
月本「私と組む意味、わかってる?」
梅崎「意味?」
月本「公職のあんたがフリーの私と組む意味よ」
梅崎「どういうことだよ?」
どの角度から見ても美形の月本が、
ギャグマンガのキャラのような梅崎に問うた。
月本「私は誰にでも雇われる」
梅崎「......」
月本「高い金を出されればね」
梅崎「......」
月本「アウトローも狩るし公職者も狩る」
梅崎「......」
月本「スパイも狩るし何だって狩る」
梅崎「......」
モデルのようにスタイルのよい月本は、
背の低い寸胴型の梅崎を一瞥した。
梅崎「わははは!」
月本「......」
梅崎「はっきりいえよ」
月本「......」
梅崎「これはヤバイ仕事だってことだろ?」
月本「......」
梅崎は大きく笑い飛ばした。
月本はずっと冷たい表情をしている。
梅崎「で、おネェちゃんよ」
月本「......」
梅崎「いまこの車、どこに向かってんの?」
月本「......」
月本の運転は上手いが荒い。
梅崎は時折舌を噛みそうになる。
月本「再生病院」
梅崎「教育総監の死体がある?」
月本「そう」
梅崎「何しに?」
月本が急ハンドルを切った。
助手席の梅崎は頭をドア側のガラスに打った。
梅崎「いって~!」
月本「うるさいわよ」
梅崎「あのよ~! ネェちゃん!」
月本「......」
月本は再びハンドルを回した。
梅崎の頭は、今度は運転席の月本の方に振られた。
そこには月本の肘が待っていた。
鈍い音が響いた。
月本「あのね、私はネェちゃんじゃないから」
梅崎「ううう...」
月本「お姉様、わかった?」
梅崎「くっそ~」
笑い上戸の梅崎の顔からは笑顔が消えていた。
月本は話題を戻した。
月本「なぜ教育総監が狙われたかわかる?」
梅崎「ん?」
月本「総監がどういう連中を育てていたかを考えれば...」
梅崎「......」
月本「おのずと答えは出るね」
梅崎「......」
梅崎の顔が締まった。
梅崎「総監が育てていたのは...」
月本「......」
梅崎「新しい世代の若い軍事要員だったはず」
月本「......」
梅崎「つまり総監を狙ったのは...」
月本「......」
梅崎「戦力整備を妨害する目的なわけで...」
月本「......」
梅崎「これはつまり...」
ここで月本が口を挟んだ。
月本「そう、もうすぐまた戦争」
梅崎「......」
月本「短い平和だったね」
梅崎「......」
月本は車を停めた。
坂の上にそびえる再生病院が見える。