再生病院から見下ろされる坂の下には、
多くの民間医療所が林立し、
ちょっとした門前医療街を形成していた。

その医療街の中の広い街路の歩道に、
梅崎は立っていた。
モグモグとホットドッグを食べながら。

梅崎「え? 俺たち以外の誰がそんなことを!」

ブツブツと呟いている梅崎に、
真剣な雰囲気は特にない。

梅崎「って思念を検索しろっていってたよな」

ホットドッグを口一杯に頬張りながら、
梅崎は道行く人々を眺めた。
医療街は、何がしか体を病んでいる者で溢れていた。

梅崎「あのクソネェちゃん、何してやがるんだ」

月本は車から梅崎を降ろしたあと、
ひとりでどこかへ消えてしまっていた。

梅崎「かぁ~、このホットドッグうめぇわ!」

好物を食べている梅崎は顔面が崩れていた。

とその時、
どこかすぐ近くで突如、
鼓膜を破るかのような狂おしい爆裂音が轟いた。
しかも繰り返し連発している。

梅崎「おわ~っ! なんだ~っ!」

梅崎の立っている道の数十メートル先で、
かなり大柄な男が両手を前方に突き出しつつ、
その両手の手掌から、激しく砲撃を放っていた。

教育総監を再生中のはずの、
坂の上の再生病院を目掛けて。

梅崎「おいおい、とんでもねぇ砲撃厨だな」

梅崎はホットドッグの最後の一口を、
すばやく口に押し込んだ。

梅崎「あれは...再生病院を破壊するつもりか!」

砲撃者の意図を察知した梅崎は、
思わず青ざめた。

砲撃は正確に再生病院に向かっていたが、
建物の直前で跳ね返されていた。
見えない防壁に弾かれるかのように。

大きな街路に立って連弾で砲撃中の大柄な男に、
上空の複数の点から射撃が開始された。
空からの十字放火だが、空中の射撃者の姿は見えない。

梅崎「防御サイドの反撃か」

梅崎は建物の陰に身を隠しながら、
数十メートル先の攻防を観察していた。

十数カ所に及ぶであろう空からの多くの反撃は、
大柄な砲撃者に命中はしていたのだが、
その男は微動だにしなかった。しかも無傷。

梅崎「あれは...どうみても生身じゃねぇ...」

梅崎はとっさに判断できた。

梅崎「ありゃ汎用人型戦車だ...しかもほぼ実物大の...」

大柄な人間の形状をした鉄壁の戦車の中に、
きっと誰かが入っている、そう梅崎は直感した。

梅崎「あ! 月本か!」

梅崎がそう閃いた次の瞬間、梅崎の脳内で、
あらかじめ先行予約していた検索思念が感知された。

え? 俺たち以外の誰がそんなことを!
そのように心中で思ってしまった者がひとりだけ、
この医療街に潜んでいることを梅崎は知った。