灰野「......」
弓沢「......」

灰野の様子が少し変化した。
弓沢は灰野をじっと観察している。

灰野「......」
弓沢「......」

灰野にとって弓沢はもう意識の外にある。
一見すると灰野は、
自分の世界に没入しているかのようだ。

しばらくして、
ブツブツと意味不明な言葉を、灰野は発語した。

灰野「あなたがまるで」
弓沢「......」
灰野「そこにいるようです」
弓沢「......」
灰野「想うだけでそこに」
弓沢「......」
灰野「そうですそこに」
弓沢「......」
灰野「私の目の前にあなたが」
弓沢「......」

弓沢はやがて気付いた。

弓沢「あ、これは...」
灰野「......」

ふとアイデアの浮かんだ弓沢は、
おもむろに自らのカゲに指示を出した。

弓沢「おい、あのな、灰野のセリフをだな」
カゲ「......」
弓沢「モニターで文字にして見せてくれ」
カゲ「......」

薄型大画面モニターに、
灰野が口にした言葉の数々が表された。

弓沢「んん、こいつぁ...」
灰野「......」
弓沢「なんだか詩のようだな」
灰野「......」

あなたがまるで
そこにいるようです
想うだけでそこに
そうですそこに
私の目の前にあなたが

だってこんなに会いたいのに私は
それでもきっと私は会うのです
あなたに

だってきっと
こんなにも抱き締めたいのに私は
だからいつか私は必ず抱くでしょう
あなたを

弓沢「あなた?」
灰野「......」
弓沢「ジーノのことか」
灰野「......」
弓沢「こんなに会いたいのに?」
灰野「......」
弓沢「ジーノにはまだ接近できてないな」
灰野「......」

あなたはまるで
拒むかのようです
壁の中でそこに
そうですそこに
私の目の前のあなたが

だってこれほど触れたいのに私は
それでもきっと私は会うのです
あなたに

だってきっと
こんなにも溶け合いたいのに私は
だからいつか私は必ず抱くでしょう
あなたを

弓沢「壁?」
灰野「......」
弓沢「ジーノのディフェンスか」
灰野「......」
弓沢「灰野! なんとか防御網を突破しろ!」
灰野「......」
弓沢「ブチ破るんだ!」
灰野「......」

あなたをまるで
捕まえたようです
二人だけでここに
そうですここに
私と目の前のあなたと

だって本当に欲しかったから私は
ようやくやっと私は会いました
あなたに

だってきっと
こんなにも狂おしかったから私は
いつまでもずっと私は抱いているでしょう
あなたを

弓沢「破ったか?」
灰野「......」
弓沢「突破したのか?」
灰野「......」
弓沢「いいぞ! そのまま行け!」
灰野「......」