森下と山伏は、
日高に尻を叩かれて店を出ていった。
彼女に頼まれた仕事をするために。

その後、店内に残った日高は、
ひとりで森下のパソコンを覗いていた。

マヌエル:俺は世界の株価の動向を観察しつつ、
 同時にある掲示板もロムっていた。
オリバー:掲示板?
マヌエル:ああ、巨大な匿名掲示板の中の、
 日本の個人投資家たちが集まっていた所なんだが、
 そこで俺は目を見張るような思いをしたんだ。
オリバー:何を見たんだよ。

マヌエル:俺はそこで、熱い生の声を聞いた。
オリバー:生の声?
マヌエル:本来なら利益最優先で株取引しているはずの、
 その投資家たちの、利益を度外視したかのような、
 心情の発露の数々を生々しくリアルタイムで、
 俺は見てしまった。
オリバー:だから何を見たんだ!

マヌエル:彼らはこういっていた、
 この国を守る、自分たちが防波堤になってみせる、
 自分たちの国を、株の買い方に徹することで守ると。
オリバー:守る?
マヌエル:この国の株をいま売り崩している連中に、
 そう簡単にこの国を乗っ取られるようなマネはさせない、
 そのために自国の株を買い守ってみせると。
オリバー:個人投資家たちがか?

マヌエル:そうだよ、大手の機関投資家からは、
 取るに足らない烏合の衆のように思われていたはずの、
 個人投資家たちが、口々に力強く決意していた。
オリバー:この国を守る...か。
マヌエル:俺は魂が震えるような気持ちがした。
 俺には彼らが、神々しい宝石のように感じられた。
オリバー:う~む。

マヌエル:俺は自分の心の中で祈った。
 俺には祈るくらいしかできることがなかった。
オリバー:祈ったのか。
マヌエル:彼らが事故に合わないように、
 彼らが病気にならず健康を維持できるように、
 彼らの家族や恋人や友人たちに不幸が生じないように、
 俺は強く祈った。
オリバー:彼らの無事を...だな。
マヌエル:そして声を出さずに叫んだ。
 がんばれ! 負けるな! と。
オリバー:ふむ。

日高の近くに女性が近付いた。
月本だった。

月本「久しぶりね」
日高「あら、どうしたの?」

二人とも懐かしそうだったが、
その反面、互いに胡散臭そうでもあった。

月本「急いでるからハッキリいうね」
日高「......」
月本「いますぐ絵上の居場所を教えて」
日高「......」