去年の10月頃に撮った写真。ちょっと暑さが和らいだかな?

 

今日も過去のことを思い出しながら。海外で暮らしていた頃、現地の人とシェア生活をしていた時期があり、そのうちの一人はスペインの血を引くフィリピン系の女性とその子供でした。私より5歳年上のエキゾチックな美人さんでした。性格はかなりきつい人でしたが妙に気があい、約3年、一緒に暮らしました。

 

彼女は美しく、知的で勉強熱心、そして気位が高い人でした。会話の端々から「裕福な特権階級的な家で育った人なんだろう」とは感じていましたが、それがどれほどのものなのかを知ったのはシェアを初めて1年ほど経った頃です。親族の話から彼女が過去のフィリピン大統領の家系の出身であることを偶然知りました。フィリピンという国はごく一部の人たちが富を独占している社会だと彼女の親戚を見て実感しました。

 

彼女自身も住み込みのメイドさんがたくさんいるお屋敷で育ったそうです。お母様は一切家事をせず、メイドたちをきちんと働かせることが「母の仕事」だった、と話していました。そんなお嬢様がなぜ私とシェア生活をしていたかというと、いろいろ事情があり、それはここでは省きますが、彼女はお嬢様育ちでもオーストラリアではフルタイムで働き、料理も掃除も普通にこなしていました。

 

ある時、東南アジア某国に住む彼女の妹が一か月ほど泊まりにきました。妹はその国の富豪の息子と結婚していて、生まれ育った本国と同じように贅沢な暮らしを送っていました。スイス留学中にご主人と知り合ったそうで、その時点で庶民とは違う世界だなと驚いたものでした。

 

ある日、姉は不在で、私が在宅していたときのこと。妹から「洋服を洗濯したいけど、どうやるの?」と尋ねられました。私は深く考えず、「洗剤を(洗濯機に)入れてスタートボタンを押すだけ」と答えました。その通りにした・・という妹。数十分後、洗濯室から悲鳴が聞こえてきました。

 

覗いてみると、洗濯槽の中はカオス状態。セーターやストッキングが絡まり、そこに大量の粉洗剤が真っ白にこびりついていました。本来ならセーターは手洗い、ストッキングや下着はネットに入れるものですが、彼女はすべてを一緒に放り込んでいました。しかも洗剤をありったけ投入。結果、セーターは毛羽立ち、ストッキングはぐるぐるに絡みつき、溶けきれない粉洗剤がまるで雪が積もったような状態になっていました。

 

妹は「あなたの言った通りにしたのに!」と怒り、私は「いや、まさかそんなに洗剤を入れるとは思わなかった!」と返しました。彼女は30歳前後でしたが、生まれてから一度も洗濯機を自分で操作したことがなかったそうです。「ええ!そんな人いるの?!」と驚く私。あ、そうか、そういう世界の人だったわ、と思い直しました。洗濯やアイロンはすべてメイドの仕事。その後は、ぐちゃぐちゃの洗濯物を見て二人で大笑い。妹は洗濯機の中身をその場で全部処分し、翌日デパートで買い直していました。

 

姉は自分からオーストラリアの平均的な暮らしに自分を適応させている人だったのでこういう極端な言動は稀でしたが、妹は一事が万事、生きてきた層が違うとこんなに違うの?というくらい生活の感覚が違いました。「マニラにはろくな店がなかったから洋服はいつも香港まで買いにいっていたの。」と話す妹。突っ込みどころ満載な会話が毎日のようにありました。それで私がイラっとするかというとそんなことはなく、あの国の人たちの底抜けに明るいキャラのためか、妹が滞在していた一か月は毎日がはちゃめちゃに面白かった記憶があります。これもある意味、異文化体験でした。