18本目。

 

 

原題:The Last Emperor

監督:ベルナルド・ベルトルッチ

キャスト:ジョン・ローン、ジョアン・チェン、ピーター・オトゥール、坂本龍一

 

1987年イタリア、イギリス、中国合作。アマプラの無料視聴作品にあがっていました。今回で3度めか4度めの鑑賞ですが初めての全長版。劇場公開版でも3時間近くある大作でしたが、全長版は3時間40分!結構忍耐がいるかと思ったけれど、映像の煌びやかさ、音楽の美しさに魅入られそんな長さを感じずに観終えることができました。

 

確かベルトルッチ監督は名門イタリア貴族の末裔です。豪奢を極めた上流階級の人たちの生活を描写する作品はこの監督ならではかと。撮影の舞台を北京の紫禁城とし、まだCGなどを使う時代でなかった本物の撮影は今の作品とはそれだけで迫力が違いました。

 

物語は清朝最後の皇帝、愛新覚羅溥儀の人生を大河ドラマとして描くものです。溥儀は「時代」に翻弄され、波乱の人生を生きた人物でした。私自身は初めてこの作品を観てから中国の歴史にも興味を持つようになりました。閉ざされた宮廷の中で宦官や女官らに傅かれて育ってきた環境のためか、実際の溥儀は人間的な部分が欠落しているというか、かなり「歪んだ」人間だったようです。それで実際そのままの溥儀を描写してしまうと観ている人の共感を得ないのでジョン・ローンという美形で愁いを帯びた俳優を主役にし、悲劇の人物として描かれているといった感じ。

 

思い通りに生きられなかった前半生の溥儀の心の隙を利用したのが当時の日本軍ということなのかと思いました。日本軍の画策により、満州帝国の皇帝として即位したものの実際は繰り人形のような立場でした。ようやく人生挽回・・、って思ったところに立った場所も砂上の楼閣に過ぎなかったという。その楼閣はどんどん足元から崩れていきます。

 

その哀しみを表現するかのような坂本龍一さんのあの音楽。たびたび胸がぎゅっと締め付けられるような気持ちになりました。1945年、日本が降伏し、満州から撤退していったあと、今度は溥儀は「日本軍に協力した人物」として共産党政権下で咎めを受け、矯正施設で10年間「改造」教育を受けさせられます。3歳で皇帝に即位した彼の晩年は共産党政権での庭師としての余生でした。でも実際、映画の中の溥儀の人生を追ってきて、もしかしたらその頃が一番心穏やかで幸せな時だったのではないかしら、なんて思う。

 

そして感動のラストシーン。初めて見た時も歴史のことを知らなくてわけわからないままに観ててもあの場面は感動して泣けました。少年が見た溥儀の姿は現実だったのか白昼夢だったのか・・。四半世紀ぶりくらいに観たけれど感動は変わりませんでした。

 

クローバークローバークローバークローバークローバー

 

この作品を初めて観てから・・・北京の紫禁城を訪れました。宮殿は建物というより「街」そのものの規模で、そのスケールに圧倒されるばかりでした。建物の豪華さ、規模から往時の中国皇帝の権力の巨大さがじんじんと伝わってきました。中国大陸というあれだけ広大で様々な民族が暮らす領土を統治するためには、これくらい威圧的なビジュアルでガツンとくる宮殿を見せつけないといけないのかも、って思った記憶があります。当時、私は大学生で京都御所の近くに下宿していました。大きいなと思っていた京都御苑が紫禁城を見た日から「マッチ箱」のように思えて仕方なくなりました。それくらい中国はとてつもなく壮大でした。