最近テレビでYou tube動画を流しっぱなしにしていたら、この本の紹介動画が流れてきました。へ~って思って観ていたら、その数日後のバラエティ番組でも紹介されていたりして。実際はこの本を読んでおらず、「ながら見」から得ただけの情報ですが、多くの日本人には考えさせられる内容かと思いました。
「節約ばかりしているとその時しかできない経験を先送りしてしまう」と、この本の著者はいっています。老いてから、健康が失われてからでは体力のいる旅行はできないし、上質なお肉を食べても胃がもたれて食べられない。新しい習い事も身に付くのに時間がかかる。人生はそれまでの経験の合計であり、その日、その月、その年に経験したことが積み重なってその人の人生になる。そして経験はその瞬間だけでなくその後の人生そのものを豊かにしてくれ、人生後半の自分を生かしてくれるという(記憶の配当)。だから良質な経験は人生の早いうちに。自分が死ぬときに最後に残るもの、周りの人たちの記憶に残るのも「思い出」。お金、健康、時間という3つの要素のバランスをいかに「最適」なかたちでとるかが大事であると。
この著者のいうことに共感を覚えたのは私自身も30歳頃に海外から日本に戻ってきて、周囲の20代、30代の人たちが「老後のために蓄えておかなくちゃ」みたいな話をよくしていたことが逆カルチャーショックだったからです。人生で若くて体力もあって何でもできるだろう「今」の話をせずに70歳、80歳になったときの心配を優先しているのなんで?と。これはずっと日本社会で暮らしてきて、いつも頭の隅っこで考えていたことでした。将来の不安を減らすために貯金は大事だけれど果たしてこれが正しい選択なのだろうか?
日本のような自己責任論の強い社会では何かあったときに頼れるのはお金かもしれません。けれど極端な話、貯めて貯めて、何の思い出もない人生を振り返ったときにそれは満足できる人生だったといえるのだろうか、と。現実にちゃんと使い切って残金ゼロで死ぬという死に方はできないかもだけれど、無難な人生こそ最上と考える人が多い社会の価値観の中にいると、リスク回避ばかりの人生はどれだけ幸せといえるのかな?とか考えてしまいます。
そのわかりやすい例に入試が挙げられていました。誰でも受かるほぼ100%合格のリスクゼロの学校を受けるか、日々の楽しみを我慢して難関学校を目指して勉強に励んで挑戦するか。実際に合格したときの喜びの質や大きさを考えてみたらその答えは明らか。あるいはひとり旅。ひとり旅に出ようとするときに財布を盗まれたらどうしよう・・など不安ばかりが先立ってそれを選択しない場合の人生。万一財布をとられた場合の対応策を事前に調べてとりあえず旅に出てみる。旅で新しい世界を知り、もっと他の土地に行ってどんどん見聞を広げ自分の世界が広がるかもしれない。これがもうひとつの選択肢。「リスクをとらないリスク」を過小評価してはいけないという。
人生最期の瞬間に「もっとこんなことをしておけばよかった」ではなく「ああ、楽しい人生だった」って思えたらよいなと思う。それは先のことではなく、いま、今日、明日の日々の積み重ねの結果なのですね。
ところで読書・・単に情報として本の内容が知りたいというとき、この頃はこんなふうに要点だけまとめて教えてくれる動画やサイトがいっぱいあって便利だなと思いました。一方で古典や文学のようにじっくり読みこんで考える工程が必要な作品は別で当然時間をかけて読むべきかと思いますが!