11本目。
原題:Wings of the Dove
監督:イアン・ソフトリー
1910年、ロンドン。ケイト(ヘレナ・ボナム=カーター)は、後援者の上流階級の伯母モード(シャーロット・ランプリング)で暮らす、没落した中産階級に属する情熱的な娘。彼女は恋人の貧しいジャーナリストのマートン(ライナス・ローチ)との結婚を因習にとらわれた伯母から禁じられて思い悩んでいた。そんな折り、ケイトは孤児ながら裕福で飾らない魅力のあるアメリカ人女性ミリー(アリソン・エリオット)と親しくなる。ケイトはミリーがマートンに心惹かれながらも余命いくばくもないことを知り、暗いたくらみが浮かぶ。ミリーとマートンをヴェネツィア旅行に連れ出し、自分は二人を残して立ち去り、残された二人を引き合わせようとしたのだ。ミリーの遺産がめあてだったのだが、その企みを知って傷つきながらもミリーはマートンに遺産を分け与えて亡くなった。残されたケイトとマートンは結ばれたが、ミリーの思い出が二人には拭いがたく残っていた。~映画.com~
1997年イギリス映画。ひとつ前にみた映画(ミセス・ハリス・・)とはこれまた対照的な人間の複雑な内面心理を描いた作品でした。やっぱりこういう映画好き。主な登場人物は3人。三角関係です。愛だけでは結婚に踏み切れないケイト。ミリーというライバルが現れたことで急に高まる嫉妬心。友情の裏にある黒い企み。純粋なミリーを前に心揺れ動くマートンの心。それでも相手を赦すミリーの純粋無垢さ。人間の美しい部分と俗っぽさや目を背けたくなる黒い感情が交錯する場面が続く中で、光と影のコントラストが美しいヴェネツィアの街の描写。この雰囲気にのまれました。
それぞれの人物の心の裡が切なくて息苦しさを覚えました。ミリーの死を伝える友人の喪服姿。最後にケイトとマートンが抱き合う場面での二人の虚ろな目。そしてその視線が交錯していないこと。その後マートンが再びひとりでヴェネツィアに戻るシーンで二人の結末が想像されました。観終わってもずっと後をひくこの余韻。ただただ切ないです。
この作品、上映されていた頃、とても評価が高かったのだけど映画館に行く機会がなくて今になっての鑑賞になりましたが、本当に出会えてよかったって思える一本でした。やっぱり原作がある作品って深みが違うように思います(ヘンリー・ジェームスの小説)。おそらく原作のほうが人間心理を更に掘り下げてあるのだと思いますが映像でここまで表現されているところもすばらしいと思いました。