公益財団法人 野口英世記念会 (noguchihideyo.or.jp)

 

 

猪苗代湖近くにある野口英世記念館に行きました。小学生の頃にこの人について書かれた偉人伝を読んだ記憶があります。彼は赤ちゃんの頃に囲炉裏に手を突っ込んで大やけどを負い、手の指がくっついてしまいました。成長してからその指の手術をしてもらったことに感動し、自身も医学の道を目指そうと決心します。そして最終的には有名な細菌学者にまでなったという。

 

英世の生家が現在も保存されており、見学できるようになっていました。会津地方の伝統的な民家建築なのだそうです。生家の上には風雨・雪などから守るための屋根が建てられていました。

 

 

 

 

福島までくると神棚のかたちも変わるのでしょうか。見慣れないつくりです。

 

 

考えてみれば彼の人生を決めるきっかけになった手の火傷。その囲炉裏が現在も残されています。好奇心いっぱいの赤ちゃんはお母さんが目を離した隙にこんなふうに近づいてしまったのですね。

 

 

 

これは故郷を発つ英世が上京するときに自身の決心を柱に刻んでいるところを再現したもの。

 

 

 

明治時代は「坂の上の雲」の時代。若者が立身出世を夢見て、自身が国を背負う気概を持っていた時代です。そういう時代の空気の後押しもあったのだろうと思いました。

 

 

 

 

生家隣にある記念館では野口英世の幼少時からの生い立ち、医者になってからの研究の軌跡、身の回り品やプライベートでの素顔を感じさせる写真などの展示がありました。

 

学生時代の教科書や成績表なども。

 

一位の成績。とっても努力家だったのですね。

 

あまり文字も読めなかったお母さんからの手紙なども展示されていました。母は息子のことをいつも心配していて、幸せだけを願っていました。昔、おかあさんのくだりを読むといつも泣けてきたのを思い出します。

 

 

英世はアメリカ人女性と結婚しました。ここは妻のメリーと過ごしたニューヨーク郊外の別荘の部屋をイメージし、彼の趣味や交友の一端を紹介したコーナー。彼自身は意外と小柄だったようです(153cm)。でもとっても存在感がある人だと思いました。

 

 

亡くなった時に最期まで身に着けていたという時計。

 

 

 

 

本棚の一角に過去に出版された野口英世偉人伝。私が読んだ本もきっとこの中のどれか。

 

多くの人がそうだったと思いますが、私自身も小さい頃、大人や先生から奨められてたくさんの偉人伝を読みました。本で読む偉人は、どの人物も子供の頃から志が高くて、努力家でした。そして本の内容は逆境に耐え、それを乗り越える、みたいな美談の詰まった筋書きばかりで、子供ながらにそこに違和感を覚えていました。

 

大学生になって渡辺淳一の「遠き落日」という野口英世を題材にした小説を読みました。この小説に出てくる英世像は偉人伝に描かれていた虚像を打ち砕くような、英世のトンデモな別の側面を描写していて当時は結構衝撃的でした。すごい集中力でもって立派な業績を積む一方で婚約者を平気で捨てたり、浪費癖があって借金を次々と踏み倒す・・とか、かなりえげつない。ああ、こんな人でもそういうところがあるんだ・・って驚きと多少の不快感と共に、なんか納得したような記憶が。この世にきれいな面だけの人っていない。なのに今の日本社会では人に清廉潔白なものだけを求める傾向があるように思います。偉人伝の影響なのか?

 

 

記念館の外に出ました。青空が広がっていて気持ちいいです。野口英世が生まれた家は後ろに磐梯山、前に猪苗代湖。

 

 

 

猪苗代湖まで歩いていってみました。とても美しい自然に囲まれたところでした。英世自身が毎日接していた風景をこの目で確かめ感じることができたのがここへ来ての収穫だったと思います。