3本目。
原題:Le bonheur des uns...
監督:ダニエル・コーエン
キャスト:ベレニス・ベジョ、ヴァンサン・カッセル、
パリ郊外にあるショッピングモールのブティック店員レアと恋人マルク、レアの幼なじみで親友のカリーヌと夫フランシスの4人は、深い友情で結ばれていた。モール内での人間観察が趣味のレアは、その内容をもとに1冊の小説を書き上げる。小説は大手出版社から出版されベストセラーとなるが、マルクやカリーヌはレアの成功を素直に喜べず、4人の距離は少しずつ離れていく。(映画.com)
2020年フランス映画。アメリカ映画だったら一人の女性のサクセスストーリーになりそうな物語。でもこの映画のテーマは焦点の先が違います。ひとことで言うなら「妬み」でしょうか。自分より下だと思っていた人物が突然、世の中の脚光を浴びる存在になった時の周囲の人たちの心の動きが描写されています。成功した人を妬み、足を引っ張りたくなる気持ち、これって当然日本人だけのことではないのですね。
置いて行かれた昔の友人カリーヌは成功したレアに嫌味を次から次へと言ってしまうんです。傍で見てたら、カリーヌの言動は嫉妬心丸出しで「イタすぎる」のだけど、本人は気づかない。カリーヌは悔しさまぎれにレアに「あなたは変わった。」といいます。妬む側も嫌な感じですけれど、妬まれる側も純粋無垢ではいられないところがあります。収入が変わり、生活が変わり、取り巻きが変わり、「上の世界」に行ったレアは「私は何も変わってないわ。」といいながらも、なにげない部分に傲慢さみたいなのが芽生えていたり、それまでの友人を軽く考えたり、ふと小ばかにしたりする。そこに本人さえ気づいてないところにリアリティを感じました。そういう心情の微妙な変化、人物の心の複雑で深い部分まで描写するところはやはりフランス映画らしいです。
人間は誰しもが善の部分、悪の部分、入り混じったグレーな部分をそれぞれの比率で持っていると思います。周囲の友人たちはレアの成功に心のペースを乱されて、結構苦しそう。でも最終的にはそれぞれがが心の満足を得られる場を見つける展開になってハッピーエンドです。なのであとあじの悪さはありませんでしたよ。