旅2日目は新潟県の北、村上市に。先の茶寮を出て、次に向かったのが「千年鮭 きっかわ」さん。屋内の梁から吊り下がる鮭の様子を以前に何かで目にして、それを実際にこの目で見てみたくて村上市まで来ました。

 

 

きっかわさんは江戸時代に造り酒屋として創業。戦後、消えつつある伝統の鮭料理を復活させるべく鮭料理の提供を始めたのだそうです。

 

 

塩引き鮭とは近海で獲れた鮭にあら塩をすり込んで一定期間寝かせて干し、熟成させる村上の伝統食。村上では塩をすり込むことを「塩をひく」というため「塩引き鮭」と呼ぶのだそうです。鮭のお腹の部分は内臓を取り出すために切ってあるのですが、一文字に全部切らず、中ほどの一部が残っています。これは「鮭のおかげで村上が潤ってきたのだから、その鮭に切腹させてはいけない」という考えがあるため。

 

このお店の奥の広い土間に鮭が吊るされています。ここ、無料で入れます。

 

 

更に奥のスペースのものまで含めると千匹くらいあるそうです。圧巻の眺めです。

 

 

 

ここに干されているのはオス鮭ばかりとのこと。お店の方が「強面(こわもて)が多いでしょう?こういう顔がメス鮭にモテるんですよ。」って説明してくれました。そうか。サケ界ではイカツイ系が人気あるんですね。💦 

 

 

鮭は10月頃に近海に戻ってきます。11月頃に仕込み、寒い12月になると城下町の各家の軒下に塩引き鮭が吊るされ、「塩引き街道」が現れるのだそう。雪景色の中に連なる鮭の姿・・想像しただけで風情ある光景が目に浮かびます。

 

 

モテ顔。私にはちょっと違うように見える。「捕まってしまって無念。ちっ!」って思ってそう。💦

 

 

鮭はこうやって干されることでアミノ酸発酵が進んで熟成され、更に美味しくなります。こうして発酵、熟成させたり、生で食べたり、いろいろ味付けをしたり、その料理の種類は百以上もあるそうです。村上では鮭料理を出す店が多くありますが、今回の旅の後悔は、ここで鮭料理を食べてこなかったことです。普段、朝食を食べない自分がホテルで出される朝食を食べてから出発したので、滞在中はどうしてもお腹がすかなかったのです。不覚でした。

 

 

戦後に日本人の食生活が変わる中、鮭料理も廃れつつあった時期があったようです。きっかわさんはこの伝統食を失ってはならないと、鮭料理の普及に努められたそうです。先に伺った茶寮や市内の鮭料理のお店、井筒屋も同じきっかわさんの経営だそうです。伝統は勝手に続いていくのではなくて、誰かが「意思」を持って守ろうと努力するからこそ続いていくのだと改めて感じ入りました。その時その時の時代の空気感も取り入れながら。

 

 

それにしても圧巻の光景でした。ところかわれば・・ですが違う土地に行くと新しい発見があるものです。遠くまできて良かった!お店を出て再び街歩きに。続きます。