旅2日目は新潟県村上市で町屋巡り。写真を撮りながら歩いていたら立派な構えの建物を見つけました。
CAFE SALONって書いてある。ということはお茶が飲めるのね。到着していきなり休憩になるけど、入ってみよう。
案内されて中に入ると・・、壁を取り払った大きな窓の向こうから眩しい緑色が視界に飛び込んできました。古い町屋の中はアンティークな家具を配したとても素敵なカフェ空間でした。
メニューはお茶とジュースのみ。村上市はお茶どころで、茶栽培の北限です。そして城下町である村上には昔から一家の当主自らがお茶をいれて客をもてなす風習があったとのこと。せっかくお茶所の北限まで来たのだからお茶を味わいたい。そこで「亭主の茶」をお願いすることに。
スタッフさん自らが目の前でお茶をいれてくれます。お点前のひとつひとつの所作がとても丁寧で美しいと思いました。自分のために丁寧にお茶をいれてもらえる。もてなされる側になってみると、とっても感慨深いです。
お茶道具は村上市の伝統工芸品である木彫堆朱(ついしゅ)を使われていました。木地に彫刻を施し、その上に漆を塗り重ねた漆器で、県の無形文化財、国の伝統工芸品に指定されているそうです。滞在中にどこかで目にすることができたら・・って思っていたけれど、こうして目の前で存分に拝見できるなんて。
一煎め。最初は茶葉が湿る程度の少量のお湯をいれ、そこから滴り落とすくらいの量で。
二煎め。ちょっと濃いめになりました。ほのかに甘くて深い味がします。
ここで小皿にお茶の葉をとり分けてもらいました。ポン酢をかけていただくというもの。茶葉を食べる体験も面白い。
その後、お菓子が出ます。それ以前にこの木彫りの箱の美しいこと!
蓋をあけると。
ここから二個、好きなのを選んでくださいとのこと。
どれにするか迷うほどでした。ここで選んだお菓子を三煎めと一緒に。最初に右側のお菓子からいただきました。オレンジ色のは干し柿で、そこにクリームチーズが挟んであります。干し柿の甘さにクリームチーズのコクが合わさってめっちゃ美味しい。栗のお菓子はきんとんのようにしたものに山椒の風味をきかせたもの。仄かにスパイシーな感じで、これも初体験の味でした。
暫くすると、フルーツや野菜、昆布などが乗ったお盆が運ばれてきました。旬の食材の中から選ぶ一品と煎茶を混ぜてお茶をいれてくれるとのこと。頭の中で煎茶とそれぞれの味を想像してみたけれど・・(笑)よくわからないです。でも、いま食べるなら・・「ぶどう」かな。ということで巨峰を選びました。
細かく刻んだ巨峰とお茶の葉で四煎め。
ぶどうの爽やかな甘みがお茶の味に重なってとても風味豊かなお茶でした。
さっきのぶどうと茶葉も少し小皿に取り分けていただきました。
スタッフの方によるお点前はここまでで約1時間。あとは好きなだけ、ゆっくりしていってくださいねと。
最後にお茶うけ二品。
この間、他のお客さんは誰もいなくて私ひとりでこの空間を貸し切り状態でした。最初にメニューを見た時、煎茶だけで3300円って少し驚いたけれど、素晴らしいお点前や美術品のような茶器を間近で拝見でき、美味しいお茶やお菓子を味わって・・この充実の時間にこの価格はお値段以上だと思いました。
その後もスタッフさんとお喋りする中で、この建物の歴史やお店のことなどを教えていただきました。時間が許すならもっと長居したかったけれど、到着してすぐにお茶休憩してしまってまだどこにも行ってません。後ろ髪をひかれる思いで次の場所へ向かいました。
私はたまたま通りがかりにここを見つけて入りました。こんな素敵なお店なのにガイドブックやネットにも殆ど情報がないのはオープンされてまもないからのようです。
村上市はいつか再訪できる時があるのかどうかさえわからない遠い地ですが、ここでの喫茶は本当に素敵な時間でした。その後もずっと余韻が残る感じ。旅の記憶に残るとても素敵な時間でした。
敷地内に別の建物がありました。こちらにはカジュアルな麹カフェが開店予定だそうです。