佐川美術館でバンクシーの作品展を鑑賞しました。現在、時間制で入館者数が制限されていて、チケットは事前にネットで予約するシステムです。平日の空き状況をみるとかなり余裕があり、私は美術館の駐車場に車を入れてから、スマホから予約をいれました。スマホの予約画面を入り口で見せて入館しました。都会の美術館みたいな混雑はなく、かなり空いてたため心配だった密とも無縁な感じでした。
入り口にあったネズミのオブジェです。
バンクシー作品ってネズミのモチーフが多いですね。「夜な夜な町に現れては消えていくストリートアーティスト」、社会の隅っこにいる労働者階級である自身の姿の投影しているのだとか。また反権力の意味を込めた姿でもあり。かなり大きなオブジェです。近づいてみると廃材で造られてました。捨てられてしまう廃材を使っているところも今の時代らしいと感じました。
ストリートアートが今の成熟期に至る以前の70年代、80年代のストリートアーティストらの作品なども展示されていました。作品といってもグラフィティ、いわゆる落書きです。私が海外で暮らしていた90年代、日常の風景の中で目にしていたものです。グラフィティって寂れた感じの鉄道駅とか、ガラの悪い地域の壁や塀などにスプレーで描かれていたりして、ちょっと胡散臭い雰囲気が漂っている印象があります。当時から通り過ぎるたびに「この落書き、上手だなあ・・。」って思ってたことも事実だけれど、これがいまや美術館に展示される時代になったのかと。あの埃っぽい周囲の記憶も結構鮮明に残っているため、同じような作品が小ぎれいな空間で照明を当てられて厳かに鎮まっている姿は、ちょっと不思議な感じというか妙な感慨でした。
グラフィティってこんな感じの。ウィキペディアからお借りしました。
展示作品の一部。
数々のバンクシー作品。痛烈に社会を風刺する作品は社会の弱者的な立場からはとても小気味よかったりします。ブラックユーモアが効いているところなどはいかにもイギリス人らしくて、ちょっと考えたあとでニヤッと笑ってしまうような。バンクシーはアメリカの帝国主義と資本主義を同質のものと見抜いていたという説明がありましたが「ナパーム」という作品はまさにそれを象徴するかのようでした。
真ん中の女の子はベトナム戦争の有名な写真(下)から切り抜いた一部。女の子の恐怖に怯える表情が忘れられない写真です。「ナパーム」というのはナフサを主燃焼材にした焼夷弾でベトナム戦争で使われました。燃焼力、破壊力が半端なく、ベトナム戦争で使われた爆弾といえばこの名を連想するくらい。
私たちは今もとてもきな臭い時代に生きていることを改めて考えてしまいました。バンクシー作品は特にそうなのだけれど、今回の企画展をみて感じたのは現代アートというのは「美」というよりも今の世の中を映す「鏡」であるということでした。ほかにもこうやって作品にされることでハッ!と気づくのだけど途上国を搾取する資本主義的な作品が多々あり、もっと他の作品もいろいろ観てみたいと思いました。期間中にもう一回くらい観に行ってもいいかなあ。機会があればいってみよう。