旅2日目の午後。午前中に訪れた飛騨の里での観光を終え、次の目的地、フィン・ユール邸へ。フィン・ユールはデンマークを代表する建築家、家具デザイナーです。この方の自邸を再現したものが高山市内にある・・・というのを知ったのは高山市内に到着した一日目。翌日の朝、ダメもとで問い合わせてみたところ、午後の部に空きがあるとのことで、その時間帯を予約し、見学に伺いました。見学は午前と午後に一回ずつ、それぞれ説明して下さる方がついて、邸内を周ります。この日、午前中は団体のお客さんが見学にみえていたそうですが、午後の来館は私のみ。なんと貸し切りで案内いただきました。見学者は建築関係の仕事についてみえる方とか建築を学ぶ学生さんが多いそうです。
この建物は飛騨家具メーカーの敷地内にあります。現地の自邸、内装を細部まで採寸して忠実に再現しているそうです。
印象的だったのは玄関から入ってからの部屋の間取りや配置、インテリアなど、動線がとてもよく考えられていたところ。一日の仕事から自宅に戻ったときに、ほっ・・とリラックスできるような家として設計されているのを感じました。また説明していただいてわかったのは、部屋から別の部屋へのつながりの美しさ。また外部空間との連続性というか、外の日差しや景色を屋内の印象に巧みに取り入れてあるところでした。家具や内装については、こんなところまで?と思うほど細かい部分への配慮など。そして色使いの美しさ!あらゆるところに「精神的な豊かさ」に心を配ってあるのを感じました。
玄関から入ってから案内してもらった順番に写真を載せていきます。白色とウッドをベースに明るい色を配置した妙にときめきました。
入ってすぐのところにある暖炉スペース。
この横に大きなガラス戸があり、向こうに広い庭を見渡します。黄色のシェードというかテント?を広げると・・・
その色が室内に反射されて、リビングの雰囲気が暖かい色味に変わるのがわかりました。
日の当たるところにベンチ仕様の椅子が置いてありました。
クッション部分は折りたたんで、ウッドの部分をカップを置いたりするテーブルにも使えるとのこと。
書棚の板は置いてある書籍などをとりやすくするため上部分が短くなってます。
フィン・ユールの代表作。No.46 chair の初期モデル。芸術品のような美しさ!
ご本人愛用のチェア。私も座らせてもらいました。ずっと座っていたい心地よさでした。
コンセント部分も素敵。
奥まったところにあるソファ。
そこから左側のドアが書斎に続いています。玄関側からもすぐに入れるようになっていました。今度はダイニングルームへ。
ダイニングから玄関方面。
この部屋から見える廊下のビューが素敵でした。真っ白で光が差し込みとても明るいです。柱の部分はこちら側が広く、奥が狭く加工してあって、ダイニング側からはフレームのように見える工夫なんだそう。
白いドアのクローゼットをあけると鮮やかなブルーの引き出し。
個室もありました。当初は子供部屋として作られたそう。
寝室。ボーダーのカバーがかわいいです。
照明。
外に出ます。リビングの外にあるシェードはこんな感じ。
こんな色の配置。
デンマークに白色の家が多いのは、昔はレンガ造りの家に課される税金が高かったため、その上に白色の塗料を塗ってレンガ造りに見えないようにしたことによるそうです。日本の長屋造りや、中世ヨーロッパの窓の少ない家と同じ理由なんですね。
見学の終わりにキッチンでいれたコーヒーをいただきました。キッチンも白一色でとても素敵でした。
そういえば・・キッチンにだけあって家の他の場所にはないものが時計でした。料理する家政婦さんからすれば時間の確認はとても大切なものですが、自宅に戻ったら時間の制約に捉われる必要がないように、とフィン・ユール氏は時計を視界に入る場所に置かなかったそうです。
デンマークのフィン・ユール邸は1942年に建てられたもの。80年後の現在に目にしても、新しさと美しさを感じました。この日に感じたのは「本当の美しさ」とは本質的であり、時代の流行とは関係のない「普遍的」なものなんだなということでした。
外の景色はどこか冬の始まりを感じさせます。
この後、家具メーカーのショウルームを見学しました。続きます。