2003年の本です。佐藤優さんが近著でお薦め本の一冊として紹介しておられたのを機に手にとってみました。倒産しかけの会社をどうやって建て直したのかということに興味があったので。読んでみて、ゴーン氏はやはり超一流の経営者だと思いました。自動車メーカーのサプライヤー、ミシュランから始まった彼のキャリア形成も興味深かったです。日産再建にあたって彼がぶつかった日本独特のセクショナリズム、社員の間の危機感の欠如など、多くの日本企業が今も抱えている問題であるように思います。私は彼自身を作った「教育」についての箇所が印象的でした。やはり人生の最初の部分にどんな環境に生まれ育ち、どんな教育を受け、どんな人間関係の中で自己を形成していくのかというのはとても大事なことではないかと改めて思いました。数年前の逮捕・逃亡劇で、この方の印象が一気に悪くなりましたが、海外の一流経営者が日本企業を敬遠するようになることを佐藤さんも懸念されていました。私もそちらのほうが重要だと感じます。日本のメディアで当時よく目にしたのがゴーン氏の「強欲さ」でしたが、彼が特別そうとは思わないのです。日本の企業幹部の報酬が世界的にも低すぎるということも事実だと思うので。

 

 

アマゾンのアプリを開いた時にお薦め本としてあがってきたので、そのままぽちっと購入。戦後の貧困から豊かになるためたくさんのモノを生産するというのが昭和の発想だったとしたら、既に豊かになった現代においては、より「美しいもの」が新しい時代の切り札になるということなのかな。著者は京都の西陣織を家業とする家に生まれた方。コンピュータの0と1の二進法は、20世紀に織物で使われていたパンチカードの発想からインスピレーションを得て生み出されたものだったとは驚きでした。革新的なことは決して無から生まれるのではなくて、伝統的な何かに触媒みたいなのが合わさった時に生まれるものなのかと思いました。美意識の育て方について書かれた箇所も印象的でした。本物に触れる、茶道や華道など先人が生み出した型に倣う、体験する(歌舞伎やオペラ、美術館など)、創造する、消費ではなく美に投資する(自分の血肉にする)、など自身の生活に応用したいと思うことも。そうしたことがこれからの本当の豊かさにつながっていくように思いました。