昨夜は中秋の名月。外に出て写真を何枚か撮りました。英語教師をしていた夏目漱石は”I love you.”を「月が綺麗ですね。」と訳したそうです。とても奥ゆかしくて、風情ある言葉ですね。美しいお月さまをみると、よくこのエピソードを思い出します。ニコニコハート

 

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ハーバード大学で政治哲学を教えていらっしゃるサンデル先生の著書。日本語版も出ていますが、サンデル先生の本は過去にも原書で読んでいるので、今回も英語でトライ。

 

アメリカでは日本より遥かに深刻な度合いで社会の格差拡大が進んでいます。往々にして下方にいる人たちは無視され、世の中から置いてかれている状況にあります。2016年の大統領選でなぜトランプ大統領が選出されるに至ったのか、自由の国、チャンスの国アメリカがこの数十年でどのように変容して格差固定社会に至ったのかが詳細に書かれてます。

 

この本を読む中で常に思い出された言葉がありました。数年前に話題になった上野千鶴子先生の東大入学式での祝辞の一節です。要約すると「社会は不公平。頑張っても報われない。」、「東大に入ったあなたたちは恵まれている。しかし、それはあなた達の努力だけで成し遂げたことではない。周りの助けがあったからである。」というような内容です。これ、ずっと印象に残って忘れられない言葉でした。

 

日本でもきっとそうですが、アメリカでも一流大学に進学する学生たちは、生まれついて持った頭の良さだったり、勉強ができる環境、大学進学できる親の経済力、支えてくれる人たち・・本人の努力だけでなくこうした要因にも「運の良さ」があったからのはず。それを考慮せず、全ては自分の努力だけで勝ち取ったというのは傲慢な考え方ではないのかい?という。

 

トランプ大統領を支持するようなポピュリズムはこうした行き過ぎたエリート主義が生み出したものだといいます。競争に勝ち残る人がいれば、その一方に落ちこぼれてしまった人たちがおり、そこには深刻な度合いの所得の開きがあり、同じ国の中で社会が分断されてしまったという。勝者は自分たちは努力してそれを得たのだから、今の恵まれた生活はその対価であると考え、落ちこぼれた人たちはまた同様に自身が頑張れなかったから惨めな境遇は仕方ないものだと考えてしまう。これは健全な社会の在り方とはいえません。

 

政治家は社会の下方にいる人たちに生活保護であったりフードスタンプを提供したりして、最低限の生活を保障し、惨めになりたくなければ大学へ行けという。しかし、人間が本当に欲しているのは、それではないのです。人が本来求めているのは「自分自身もその個人が属する社会を作っている一員である」という自負だと。自己承認欲求を満たしてもらえるのが上層にいるリッチな成功者たちだけという現状に対する不満が、ポピュリズムの台頭につながったとの分析でした。最後のほうに書いてあったけれど本来のアメリカンドリームというのは、「上に行く」ことだけでない。頑張っただけでの報いが得られるような社会だと。学びたい人がどんな状況であれ、学べる環境にあること。例え頑張れなくても、成功しなくても「尊厳のある生活が保障されている社会。」と仰ってます。いまの世界的なトレンドに対して考えさせられる一冊でした。

 

それにしてもアメリカの受験戦争が想像以上に熾烈になってて驚きました。お隣韓国よりも激しそう。また、久しぶりに英語で読んで考えると、脳の中でも普段使ってない部分を使っている実感がありました。なんだか今まで休止していた脳のある部分がサーッと点灯して活性化している感じがします。楽器の習い事をしていても同じように違う部分が活発に動いているのを感じます。これからは語学や楽器がボケ対策に良いかもしれない。(笑)