14~15本目。
原題:Nomadland
監督:クロエ・ジャオ
キャスト:フランシス・マクドーマンド、デビッド・ストラザーン
ネバダ州の企業城下町で暮らす60代の女性ファーンは、リーマンショックによる企業倒産の影響で、長年住み慣れた家を失ってしまう。キャンピングカーに亡き夫との思い出や、人生の全てを詰め込んだ彼女は“現代のノマド(放浪の民)”として車上生活を送ることに。過酷な季節労働の現場を渡り歩き、毎日を懸命に乗り越えながら、行く先々で出会うノマドたちと心の交流を重ねる。誇りを持って自由を生きるファーンの旅は、果たしてどこへ続いているのか。~映画.com~
2020年アメリカ映画。アカデミーやゴールデングローブで作品賞を受賞し、話題になっていたのでぜひ観たいと思っていた作品。「パラサイト」みたいに格差社会の底辺のひとたちの絶望的な姿を炙り出す内容かと思っていましたが、違いました。家を持たず、ボロボロのバンで寝泊まりし、短期の非正規職を渡り歩く・・・それだけをみると過酷で嘆かわしい生活のはずなのに、主人公は強がりでなく、どこかあの自由を楽しんでいるかのように見え、むしろ自らあの生活を選んでいるようでした。日本で同じ境遇の人を取材したドキュメンタリーとかみると、もう夢も希望もない、絶望しかない、死ぬしかない、みたいなものが多いけれど、この映画の人たちは、そこで得たしがらみのない、物質主義から解放された気ままな暮らしを是としているようにさえ見えるのです。放浪の民の彼らの目に映る大自然の美しさがなんとも印象深い。日本よりも更に格差が深刻なアメリカ社会の一面であることは確かだと思うので、こうした生き方を礼賛する気にはなれないけれど、雄大な自然の姿とそこに生きる彼らの強さが記憶に強く残りました。最後のエンドロールをみていて、あれ?!と思ったことがありました。通常、そこには役名と役者さんの名が併記して出てきますが、この映画では役名と役者さんの名前が大半において同一なのです。あとで知りましたが、あの映画で本物の役者さんは主人公とあと一人のおじさんだけで、あとは全員本物の車上生活者の方々なのだそうです。あまりにも自然な演技?に驚きました。
原題:The Lunch Box (Dabba)
監督:リテーュ・バトラ
キャスト:イルファン・カーン、ニムラト・カウル、ナワーズッディーン・シッディーキー
インドで広く利用されている実在の弁当配達システムを題材に、誤配送の弁当がもたらした男女の偶然の出会いと心の触れ合いを描いたドラマ。大都市ムンバイのオフィス街では、昼時にダッバーワーラーと呼ばれる弁当配達人が、慌ただしく複数の弁当箱を配って歩く。ある日、主婦イラが夫の愛情を取り戻すために腕をふるった4段重ねの弁当が、男やもめのサージャンのもとに誤って届けられる。イラは空っぽになって戻ってきた弁当箱を見て喜ぶが、その弁当を食べたはずの夫からは何も反応がない。不審に思ったイラは翌日、弁当に手紙を忍ばせるが……。~映画.com~
2013年インド・フランス・ドイツ合作。最近のインド映画っていい作品が多いなあと思っていましたが、これもそのひとつになりました。登場人物はみんなインド人ですがどこかヨーロッパの映画を思わせるような設定と展開と観終わってからの余韻。夫と心が通い合わない妻と、妻に先立たれた初老の男性。この二人は結局、どうなったんだろう?というのが見ている側の判断にゆだねられてしまう終わり方です。手紙のやりとりから感じる心情の描き方がとても繊細な感じで心に響きました。大人の映画でした。主人公の男性を演じた俳優さん、これまでにも他の映画で見たことがあり(最近では「東京裁判」でのパル判事役で)、とても素敵な哀愁漂わす役者さん。惜しくも少し前にお亡くなりになったそうです。まだ50代ということなのに残念です。