3~4本目。
原題:The White Crow
監督:レイフ・ファインズ
キャスト:オレグ・イベンコ、セルゲイ・ポルーニン、アデル・エグザルコプロス
1961年、海外公演のためソ連から初めて国外に出た無名の若きダンサー、ルドルフ・ヌレエフ(オレグ・イヴェンコ)は、パリの街に魅了される。自由な生活や文化、芸術の全てをどん欲に吸収しようとするが、その行動はKGBに監視されていた。やがてヌレエフが、フランス人女性のクララ・サン(アデル・エグザルコプロス)と親密になったことで政府の警戒が強まり、ある要求を突き付きられる。~シネマトゥデイ~
2018年イギリス・ロシア・フランス合作。伝説のダンサー、ヌレエフの名を知ったのは昔、繰り返しよく観たフランス映画「愛と悲しみのボレロ」でした。この映画に彼をモデルにした才能ある若いロシアのダンサーが出ていて(ジョルジュ・ドンが演じてました。)、パリの空港で劇的な政治亡命を遂げるシーンがとても印象に残ってました。「ホワイトクロウ」を観たのは、イギリスの名俳優レイフ・ファインズによる20年の構想を経た監督作品だということ、そしてヌレエフのことを知りたいということから。
若き日のヌレエフは野心家でとても傲慢な青年。芸術の都のパリに公演にきて貪欲に「美」を自分の中に吸収しようとする姿が印象深いです。才能に恵まれ、自身も更に高みを目指そうとする人なのですが、規律に従わない彼にKGBからのチェックが入るのです。本人が才能を有していてもその自由は大きく制限される共産圏の怖さがひしひしと感じられる展開です。共産社会の不自由さ、色のなさは、フランスという自由で文化の薫り高い街を舞台にするとなお一層、その不気味さが際立つような感じがしました。
この映画にとても感銘を受けたので、観終わってからYoutubeでヌレエフの動画を探してみました。レイフ・ファインズがロシアで大規模なオーディションをしてみつけたのが、オレグ・イベンコというバレエダンサーだったそうですが、ヌレエフ本人にとても似ていて驚きました。
原題:Asphalte
監督:サミュエル・ベンシェトリ
キャスト:イザベル・ユペール、etc.
フランスの郊外にある団地。引っ越してきたばかりの落ちぶれた女優ジャンヌ(イザベル・ユペール)と親しくなった少年シャルリ(ジュール・ベンシェトリ)は、彼女にヒロインよりも90歳の役に挑戦するよう助言する。一方、車いす生活を余儀なくされたスタンコヴィッチ(ギュスタヴ・ケルヴァン)は、エレベーターの使用を禁止されていて、人目のない深夜にしか外出できない。ある晩、彼は出会った夜勤の看護師(ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ)に、職業はカメラマンだと偽り……。~シネマトゥデイ~
2015年フランス映画。1時間40分と手頃な長さだったので観てみました。NASAの宇宙飛行士が突然アパートの屋上に着地したりとか、ありえない設定もあるのですが、全体に淡々と進行していく日常を描く物語の中で、そういうのがあってもおかしくないかな?とか思わせる感じがしました(笑)。
作品からは誰もが抱えている孤独感がよく伝わってきたし、そんな日常で起こる思いがけない出会いも素敵でした。6人、3組の男女の中でも、まだ少年の面影を残す若い男性と60代の落ちぶれた女優という設定で、ジュール・ベンシェトリとイザベル・ユペールの二人が印象に残ります。20代の若造が60代の女性とホント、対等なんです。こんな二人をみていると、この国では親子ほど年の差があってかつ女性のほうが年上という恋愛が成立するのもわかる感じがしました。宇宙飛行士のアメリカ人男性とアラブ系の高齢女性の交流も、氷が次第に解けていく様子をみるようで素敵でした。言葉が通じなくてもこんなに心が通じ合うのです。
アスファルトという冷たい建物の中に住む住人たちの間で交わされる心の交流に、最後はじんわりと心が温まる感じがしました。バラバラだった6人の人物たちをつないでいったきっかけの音の主が最後に明かされます。その場面もなんかフランス映画的で面白かったです。最近の日本の映画もフランス映画の影響を受けているのかなとも感じました。