98~99本目。

 

 

監督:若松節朗

キャスト:渡辺謙、佐藤浩市、吉岡秀隆、安田成美、緒方直人、火野正平 etc.

 

2011年3月11日午後2時46分、マグニチュード9.0、最大震度7という日本の観測史上最大となる地震が起こり、太平洋沿岸に押し寄せた巨大津波に飲み込まれた福島第一原発は全電源を喪失する。このままでは原子炉の冷却装置が動かず、炉心溶融(メルトダウン)によって想像を絶する被害がもたらされることは明らかで、それを防ごうと、伊崎利夫をはじめとする現場作業員や所長の吉田昌郎らは奔走するが……。(映画.com)

 

2020年日本映画。以前、この原作を読んだことがあり、映画化されると知ってぜひ観たいと思っていた作品です。上映時に劇場に行く機会を逃したためアマゾンプライムで鑑賞しました。あの日、現場でどんなことが起こっていたのか、映像で見せられる迫力は凄まじいものでした。日本を襲った未曾有の災害、そこに吉田さんという人物がいたことが日本をギリギリのところで救ったことになったのかと思いました。そこにいた人たちが自身の犠牲も省みないくらいの勢いで仕事を全うしようとする姿、紙一重のところで日本が破滅するのを食い止めた場面が大変に印象に残りました。

 

・・が、ここで水を差すようなことを書いてしまいます。私はこの作品での一番の見せ場的場面をみていて苦々しい思いにかられて仕方ありませんでした。電源喪失という事態になり、格納容器の圧力を下げるベント(排気)を手動で行うという場面がありました。線量が非常に高い危険な場所に人員を送ることになったのですが・・あれをみていると太平洋戦争の時の特攻隊と一緒ではないのかと感じました。人員を送りこめ、という本部からの命令も働く人の命や安全を軽視する日本の組織の特徴がぽろっと出たみたいですごく嫌な気持ちになりました。日本はずっと技術大国として世界をリードしてきたのに、この事態で遠隔で簡単な手作業をこなすロボットひとつさえ作っていなかったのはなぜだろうと思いました。

 

炉心溶融の原因となった電源喪失は非常用電源を地下に置いたことにありました。この原子炉は米国設計によるものだったので、電源の位置をそこにしたのもハリケーン対策のため、津波は想定してなかったからです。またこの原子炉があった場所は当初35mの高台でしたが、海水の汲み上げを容易にするため建設時に25m削ったと聞きました。当初の高台に原子炉を築いていたら、非常用電源をもっと高いところに置いていたら、事態はもっと違う方向に行っていたかもしれません。しかし「想定外」なことは将来もまた起こりうるわけで、日本のような危うい土地に原発を置くことってやっぱり間違っているのではないかと事故の日以来ずっと思ってます。ショボーン

 

原作です。こちらもすごくおすすめ。

 

映画をみていてこの本の内容も思い出しました。ちょっと難解ですが、日本の組織の弱点は戦前・戦中からあまり変わってないなと思わされる一冊。

 

 

原題:The Band's Visit

監督:エラン・コリリン

キャスト:サッソン・ガーベイ、カリファ・ナトゥール

 

イスラエルの小さな町に迷い込んだエジプトの警察音楽隊と地元民との交流をユーモラスに綴り、カンヌをはじめ世界各地の映画祭で絶賛された人間ドラマ。文化交流のためにエジプトからイスラエルへ招かれたアレキサンドリア警察音楽隊は、目的地を間違えてホテルすらない辺境の町に辿り着いてしまう。住人の家に泊めてもらうことになった彼らは、自分たちと言葉も宗教も違う人々に戸惑いながらも、音楽を通して次第に打ち解けていく。(映画.com)

 

2007年イスラエル・フランス合作。同年のカンヌ映画祭で「ある視点部門」受賞作。コメディというカテゴリーなのですが、コメディとしてみていいのかな?と思うどちらかというとヒューマンドラマよりの映画でした。笑えない、あまりにも気まずい雰囲気が随所に漂い、時々くすっと笑えたりする。間の取り方とか最近の日本映画によくみられる感じです。淡々とした人と人との交わりの中にみえるそれぞれの人の心の裡。影の部分、明るい部分、そうしたところに人生の味わいみたいなのを感じることができて、結構好きな作品でした。私はヘブライ語やアラビア語はわからないですが、両者が交わす英語での会話の場面は原語で聴きとれました。主人公の団長さん、最初はなぜにそこまで?というくらい慇懃な英語を喋るのです。生真面目で融通がきかなくて全く隙がなさそうな人物なのですが、現地で出会ったイスラエル人の女性との交流の中でふと見せる人生への後悔や人間的な弱さ的な部分。そんな場面にぐっと引き込まれました。映画全体のあのなんともいえない間の取り方、砂漠というロケーションで起こる人物同士のふれあいをみていると遠い昔にみた「バグダッドカフェ」をちょっと思い出しました。誰もにお薦めではなくとも、なんかいい映画だったと思います。