滋賀県というのは京都府の横にあって、ちょっと地味に思われちですが、自然が美しく(特に北部)、穴場的な観光名所が多く、好きな県です。ということで、再び滋賀県高島市へ。琵琶湖の北西部にある今津町を訪れました。
滋賀県にはぐるっと琵琶湖を囲んでウィリアム・ヴォーリズが手掛けた建築が多く存在しています。ヴォーリズは建築家かつメンソレータムの近江兄弟社創業者のひとり。熱心なキリスト教信者で手掛けた建築もキリスト教関連のものが多いです。高島市にも現存するヴォーリズ建築があると知り、以前から気になっていました。最寄り駅のJR近江今津駅は頻繁に利用しているのに、ちょっと足を伸ばしてこの辺を歩いたことがなかったのです。
晴れた日の午後。まずは今津ヴォーリズ資料館を目指しました。
もともとは百三十三国立銀行の今津支店として大正期に建てられたもの。クラシックな洋風建築は今津町における近代化の象徴的建築でした。現在は資料館となっています。この横の駐車場に車を停めて、パンフレットなどをもらいに内部へ。天井がとても高く、開放感のある空間というのが第一印象でした。
白い壁、高い天井にシンプルな黒の格子窓が美しいです。装飾が多いヨーロッパ建築とは随分異なる印象です。アメリカ精神の支柱になっている清教徒的な価値観が反映されているのかなと思いました。
カウンターには案内のパンフレットが並べてありました。いくつか手にとっていたら、目の前の通りをずっと歩いていけばヴォーリズの教会、郵便局があると教えてもらいました。
外部の写真も撮りました。
さて、資料館の方から教えていただいた通り、資料館の前の通りをてくてく・・と歩いていくと、すぐに教会がみえてきました。
昭和9年建築当時のままの建物は幼稚園として現役です。内部の見学はできないので外側からだけ。和風を意識したデザインとの説明でしたが、確かに周囲から浮いた印象がなく、しっくりこの街に溶け込んでいる感じがしました。教会を横からみるとこんな感じ。園児たちがいる幼稚園はオレンジ色の屋根の建物なのかと思います。
幼稚園の隣は小さいですが公園になっており、空間が開けていて、いい感じでした。この日は通りを歩いていると、どこからともなく、金木犀の花の香りがふわりふわりと漂ってきます。澄んだ空気と甘くて優しい匂い。私の中での「10月」のイメージです。
そこから更にもう少し歩くと、湖西線の手前に旧今津郵便局がありました。昭和11年の建築とのこと。ここもちょっと和風テイストを取り入れた和洋折衷的な雰囲気の建物でした。
私が訪れた日は開館日ではなかったのでこれも外側から眺めただけです。壁の色合いとか窓の雰囲気とかに色褪せた感じがありました。同じ年月を経た建物でも現役で使用されていると、どこか生気がありますが、こちらはたまたま閉館日だったこともあるのでしょうが、どこかちょっとくたびれた印象を受けました。
でもこの時代(大正~昭和初期)の建物って、全般に、「人の温かみ」みたいなのを感じます。戦後の建物が効率第一のコンクリートx箱型なものばかりだったことを考えると、それ以前の時代のほうが、なんとなく心の余白というか余裕的なものがあったのではないのかなと思ったり。
ヴォーリズ通りのヴォーリズ建築は以上です。あと、もう一軒、近くにヴォーリズ設計の民間住宅があるそうですが、この場所から少し距離があったのと、一般のお宅なので、見に行くのはやめにしました。このヴォーリズ通から、そのまま続く辻川通りには、他にもなかなか味わいのある建造物がありました。
こちらは資料館の向かいに建つ日本家屋。
特に説明がなかったので、よくわかりませんが、白壁に赤色の格子戸が印象的な建物です。
日本家屋と、その横は何かのお店だったのか。もう長くシャッターが下りている感じ。
パン屋さん。クラシックな雰囲気が素敵でした。
こんな伝統的建造物も。立派な蔵です。
そして、ある地点からUターンして、資料館方面に戻る途中、あれっ!と思った建物を発見しました。高架下近くにある古い日本家屋です。
このお宅のデザインがものすごく前衛的ではないか!!
一瞬、目の錯覚かと思いました。なので、最初は通り過ぎた。まるでエッシャーの絵みたい。一階と二階部分がもしかしてずれてる?そして一階屋根部分が斜め右方向に上がっているんです。ピンク色の壁の色も個性的。どんな方がお住まいなのでしょう。このお家、すごく面白いなと思いました。
そして再び資料館に戻ります。資料館の横に建っている今津商工会館です。平成15年の建築だそうですが、これはヴォーリズの木造建築を受け継いで建てられたものだそうです。オレンジ色の屋根瓦、シンプルな窓枠などその特徴ですね。
今津の町は思っていた以上に素敵なものがありそう。ヴォーリズ通りを歩いたあとは地図を片手に、更に琵琶湖方面の街並みを散策してきました。続きます。