86~87本目。
原題(英題):天注定 (Touch of Sin)
監督:ジャ・ジャンクー
キャスト:チャオ・タオ、チアン・ウー、ワン・バオチャン
村の共同所有だった炭鉱の利益が実業家に独占されたことに怒った山西省の男。 妻と子には出稼ぎだと偽って強盗を繰り返す重慶の男。しつこく迫る客に我慢できず切りつける湖北省の女。 ナイトクラブのダンサーとの恋に苦悩する広東省の男——。 虐げられ苦悩する彼らが起こす衝撃の結末とは? ごく普通の人びとである彼らはなぜ、罪に触れてしまったのか?~Filmarks~
2013年日中合作映画。急発展する中国にあって、その上昇気流から取り残され、発展の犠牲となった人たちの姿を4つのストーリーのオムニバス形式で描いた作品。それぞれ近年、中国全土を揺るがした実際の事件をベースにしており、汚職や貧富格差の拡大など、現代の中国社会が抱える問題が炙り出されているように思いました。強烈な印象が残る作品でした。中国では未公開とのこと。
冒頭に「オフィス北野」の文字がみえて、当初、どきっとしました。北野映画や韓国映画の多くに見られるバイオレンスものではないかと察知したからです。夜遅くに観始めたので、刺激が強すぎて、もしかしたら眠れないかも・・。 でも今回は有料作品。お金を払ってしまった後だったので心して観ることに。
予感は的中し、映画は鮮烈な暴力描写から始まりました。これ、北野武さんの映画の特徴のような気もするのですが、暴力シーンが余りにも突然に出てくるので、目を逸らす暇がなく、「見てしまう」のです。 私はバイオレンスものは毛嫌いしていますが、北野作品だけは例外的に好きです。暴力で表されるシーンの裏にすごく伝わってくるメッセージがあると思うからです。個人が内面に抱えた怒りや絶望を暴力という手段でしか表現できない人物たちの哀しみを思ったりします。どの人物たちにとっても最悪だったのは「希望」がみえないことでした。逃げる場所がない閉塞感というか。あと、日本社会にも共通することですが、急速な経済発展で昔からの人間同士のつながりが希薄化していて、人物たちが抱える孤独感が非常に強く浮き彫りにされているところも印象に残りました。中国で未公開というのもわかる気がします。暴力に走る人物たちは一見したところ4人の誰もが、自分のすぐ近くにいるような人たちだからです。
原題(英題):OM DE WERELD IN 50 CONCERTEN/AROUND THE WORLD IN 50 CONCERTS
監督:エディ・ホニグマン
世界三大オーケストラである、オランダの王立オーケストラ ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団初のドキュメンタリー映画。2013年、創立125周年を記念して行われたワールドツアーは、オーケストラの楽団員たちにとって、世界中の人びとふれあい、限りない音楽の力を再発見する旅だった。世界ナンバーワン オーケストラの楽団員たちが奏でる類い稀なその響きが世界中の人びとの心をゆり動かす。~Filmarks~
2014年オランダ映画。舞台裏的なものをみて、人物たちの人間的な部分に触れるのが好きなので、そういうところなど、楽しく鑑賞しました。クラシック好きな人にも楽しめる作品かも。また演奏する側でなく、聴く側へのインタビューがあり、それぞれのエピソードがとても心に沁みました。演奏会場に足を運ぶ人たちの社会的立場はいろいろで、大変なことがありながらも、美しい音楽を聴くことが楽しみで、あるいは人生の希望だったりするのです。南アフリカの場面で大きな目をきらきらさせて太鼓の演奏に夢中になる小さい男の子の姿がとても印象的でた。
随分前になりますが、今は亡きマリス・ヤンソンス氏の指揮で来日公演を聴きにいきました。ロイヤル・コンセルトヘボウの弦楽器は「ベルベットのごとく」と評されています。コンサートホールで演奏を聴いた時、素人耳にもこの豊かな音の違いがわかり、とても感動したことを覚えています。今年はコロナ禍で一番影響を受けているのがこうした演奏活動に携わる方々だと思います。定期的に演奏を聴きにいった人にとっても寂しい日々では・・と。かつてのような日常が一日も早く戻ることを願わずにいられません。