25本目。今回は京都シネマで鑑賞。

 

 

原題:Les plus belles annees d'une vie

監督:クロード・ルルーシュ

キャスト:アヌーク・エーメ、ジャン=ルイ・トランティニアン、モニカ・ベルッチ

 

2019年フランス映画。恋愛映画の金字塔といわれる作品の続編が53年ぶりに同じ監督、キャストで製作されたという奇跡的な作品。副題は「我々は人生最良の日々をまだ生きていない」(つまり、人生最良の時はこの先にある)というビクトル・ユゴーの言葉から。20歳の時、前作の1966年版を見て、私はアヌーク・エーメの美しさにノックアウトされてしまいました。凛とした雰囲気、神々しい美しさ、上品な色気、何気ない言葉に滲む知性。全てが本当に素敵でした。交わされるセリフのひとつひとつがとても粋なんです。大人の女性とはこういう人のことを言うんだとあの時、悟りました。あまり「誰か」に対して熱くならない私ですが、この女優さんだけは私の中で唯一、all time bestな憧れのひと。何度観たかわからないほどこの作品を観ました。・・・というほどの思い入れがあるのでこの作品はちょっと特別扱いです。

 

53年後の二人を描いた今回の作品は大方が会話劇です。それに前作の映像がフラッシュバック的に織り交ぜられ、想いが昔と今を行き来します。プレイボーイだったジャン=ルイは90歳という年齢になってもなお、笑った表情にいたずらっ子のような可愛らしさがあり、87歳のアンヌには穏やかで優しく包み込むような母のような雰囲気がありました。日頃、年をとるのはろくなことないと思いがちだけれど、フランスの映画をみていると年齢を重ねる中で失われていく若さの代わりに経験や思慮の深さ、成熟という得難いものを得た人物たちが、まさに人生最良のときをこれから生きようとしている姿に出会うことがあります。

 

映画館のロビーにいたお客さんの大半は前作の公開時、青春を謳歌していただろう年代の方々でした。私の右に座っていた人も左に座っていた人もラストに近づくにつれ、涙をぬぐっていらっしゃる様子が感じられました。最後のシーンは70年代に別の映画で撮影したパリの街のシーンが使われていました。ちょっと低い目のアングルから撮ったパリの街並みが高速で流れていきます。レースで優勝したジャン=ルイが自分の祝賀会を抜け出して、夜通しかけて800kmの距離を走り、アンヌに会いにいくシーンを思い出しました。フランス映画のいいところは全部を説明しないところです。多くを観客の想像に委ねてしまうんです。観る側は無限の想像の世界に思いを馳せて、感動に身を浸すことができます。映像に自分の思いを重ねてみていたら私もなんだか涙が出てきて止まりませんでした。

 

https://youtu.be/9Yy2Rda9mCE

 

京都シネマのある四条烏丸のビル。アクタスのショップやレストランなどが入ってとてもおしゃれなビルでした。近くに住んでいたら毎週でも通いたいシネマでした。