森美術館で開催されている企画展を鑑賞してきました。正式な名称は「未来と芸術展:AI、ロボット、都市、生命 - 人は明日どう生きるのか」。この名称自体、AIが作ったものだそうです。AIやバイオテクノロジー、ロボット工学などの最新の技術と、その影響を受けて生まれたアート、建築、デザインなどが展示されています。未来の住居や生活様式、医療などについて、アーティストの視点から視覚化された数々の作品はまるでSF世界の一端を覗いているかのよう。先端テクノロジーの動向に目を見張る驚きを覚え、同時に「怖さ」と「気味悪さ」を感じたというのが正直な感想です。
全く新しい世界を前にして、これまでの経験値だけに頼っていたら「目の前の世界」と「自分の頭の中の既知世界」のあまりにもの乖離に当初、「ついていけない」感覚を覚えてしまいました💦
最初にあったのは現在進行形のものを含めた未来の都市計画の紹介。
大気汚染や人口過密、温暖化などで地表に住むことが難しくなった近未来、雲の上の大気圏内に居住空間を作るという提案。~説明文より~
石油に依存しない再生エネルギーによって稼働する都市、環境汚染の原因になる物質を排出しないシステムなど環境負荷が少なく、自然と融合した街づくりなどが実現可能なかたちで提案されていて面白いです。現状のままではいずれ地球は住めないようになりそうだけど、人類はやっぱりそれらをテクノロジーの力で乗り越えていくのでしょうか。
これも印象的な展示。
イスラム建築にみられる幾何学的パターンをベースにコンピュータによるシミュレーション生み出された作品。作品の中にも入れるので体験してきました。デジタル的に切り取られたパイプに囲まれた世界はとても不思議な感覚。そこに書いてあった説明で印象深かったのは「人工知能などによって支えられた現実の不気味さと一方でそこで生まれる新たな美意識の目覚め」という表現。
「食」についてのセクションもありました。既にどこかのベンチャーが開発している人造肉とか、やっぱり「うっ」と反応してしまう展示が結構ありました。人口増加による食物不足への対応として昆虫食の提案(それもごきぶりです)展示がありました。美味しくてかわいいごきぶりの展示が。ああ、絶対無理。これは写真載せるのやめておきます。それをするなら小麦や米の生産性をもっと高めてくれたほうが嬉しいな。
日本では昔、ソニーが開発したアイボという犬がありましたが、更に技術が進んでますます本物に近いペットみたいに。外国人の女性が、「かわいい!本物みたい!」って喜んでずっと触り続けていました。目が合うと私のところに寄ってくるんです。写真でみると不気味だけどリアルでは結構かわいいと思ってしまいました。でもやっぱりしょせん中身はコンピュータです。家で飼いたいとは思えませんでした。
このセクションは結構倫理的な問題もはらむ分野ではと思いました。
この作品はゴッホが切り落とした耳をその末裔から採取したDNAによって再現するプロジェクトの展示。生まれたばかりの赤ちゃんのうちから外科手術を行って将来の身体能力を強化できる技術とか、やっぱりやりすぎではと思うような展示もあって怖い。
末期医療ロボット。病室で患者さんの手をさすりながら「ご家族、友人がこられず残念ですが快適な死をお迎えください」と慰めてくれるという。ブラックユーモアすぎて、、、💦 ロボットの犬と同じでなんか根本的に違うように思えます。相手には心がないのです。自分の中で完結してしまう幻想にすぎないコミュニケーションです。
瞑想の映像。人工知能によって生成された風景で、既視感がありながらも全て実在しない風景なんだそう。
最後の展示。5mにもなる大きな展示でした。直方体の4面に高精細な映像が映し出されるのは紀元前9600~7000年にトルコに建てられた遺跡に刻まれた紋様など。AIが抽象化してデータとして表現しているそうです。
一巡してみて、、、情報量がとても多くて、またいろんなことが斬新すぎて、なんだか一回の鑑賞では自分の中で消化しきれない印象が残りました。それぞれの展示を見ながら進んでいくにつれ既存の考え方とかがどんどん上塗りされていくような感覚を覚えた今回の展示会でした。AIが登場したことで人類の歴史にはパラダイムの大転換が起こっていて、私たちはいまその最中にいるのではないか、そんなことをしみじみ考えてしまいました。