2020年1~2本目。

 

 

原題:Another Year

監督:マイク・リー

キャスト:ジム・ブロードベント、レスリー・マンビル、ルース・シーン、ピーター・ワイト

 

初老の夫婦トムとジェリーは、それぞれに打ち込める仕事と休日の家庭菜園にいそしみ、弁護士の息子ジョーも親思いの好青年で幸福な人生を送っていた。ジェリーの同僚メアリーは男運に恵まれない境遇を嘆き、ジェリーの幸せをうらやんでいたが、トムの旧友ケンがメアリーに興味をもち……。それぞれに喜びや悲しみを抱えた人々がトムとジェリーの庭に集まり、語らうことで前向きに生きようとする姿を描き出していく。~映画.com~

 

2010年イギリス映画。邦題から想像されるようなほんわかした内容とは全く違い、老年期にいる人間のなんともいえない孤独感と痛々しさを感じる作品でした。描写されるのは幸せな夫婦とそうでない孤独な人たち。その対比ゆえか寂しさを抱える人の心の裡が強烈に伝わってくるんです。何気ない日常の断片に人物たちの心情を写し取る手法はこの監督ならではでしょうか。主人公の独身女性を演じた女優さんがうますぎて、幸せな人たちを前にした時の孤独感、そぐわない場に居合わせた時の居心地の悪さとかめちゃめちゃリアリティがありました。パルムドール映画祭でも審査員の評価が非常に高い作品だったそうです。

 

マイク・リー監督は決まった台本を用意せず、現場で俳優たちと即興でセリフや演出を決めたりするユニークな撮影手法で映画を撮っているそうです。そのためなのか、作品には独特の空気感があるように思います。普通にありがちな会話や雰囲気の中にちらっとみえる人物の心情描写が本当に秀逸です。この監督が1996年に撮った「秘密と嘘」という作品があります。これまでの人生で観てきた2000本近くの映画の中でも上位にいれたい作品です。もし私と感性が近いと思われる方には是非おすすめしたい一本です。

 

 

原題:Goodbye Bafana

監督:ビレ・アウグスト

キャスト:ジョセフ・ファインズ、デニス・ヘイスバード、ダイアン・クルーガー

 

南アフリカ初の黒人大統領となったネルソン・マンデラの知られざる若き日々を、「ペレ」「愛の風景」の名匠ビレ・アウグストが映画化。反政府運動の指導者として27年間に渡り獄中生活を強いられながらも希望を持ち続けたマンデラの姿を、彼との交流の中で美しい魂を取り戻していく白人看守の視点から描き出す。~映画.com~

 

2007年フランス・ドイツ・ベルギー・イタリア・南アフリカ合作。投獄時、マンデラについた看守の視点からの物語。ストーリーが進むにつれ、マンデラ氏の人間性に次第に感化されていく看守の姿が印象深かったです。作品の中で描かれる時代はわずか半世紀前。この頃はまだ日常の中に「差別」「偏見」が存在していて、誰もが違和感なくそれを受け入れているんです。この辺、軽く衝撃を受けました。時代が変わったなあとつくづく思いました。私自身の不勉強によるものですがマンデラ氏というとなんとなく平和的な指導者のイメージがありました。実際、ANCの抵抗運動には暴力、テロもあり、共産党とのつながりもあったことも知りました。この時代に有色人種が置かれていた状況を思うと当然だったとは思うのですが、この辺、はっとする部分がありました。