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昨夜までの5夜連続、テレビ朝日系で「白い巨塔」のドラマが放映されていました。
岡田准一さんが財前五郎役。松山ケンイチさんが里見先生役。
若すぎる外科教授の姿に最初はいまひとつ入りきれなかったのですが
3夜目くらいからどんどん引き込まれてしまいました。

岡田准一さんって意外にも悪役の顔が似合うなあと思いました。数年前にNHK大河で官兵衛役を演じられていましたが、本能寺の変で信長が斃れたことを知るやいなや、竹中直人さん演じる秀吉に「天下をとる好機!」と中国大返しを仄めかしたときの表情。確かご本人もあの場面をやりたくて官兵衛の役を引き受けたとおっしゃっていましたが、ぞっとさせるような表情でした。今回も満島真之介さん演じる柳原医師にカルテの改ざんを示唆した時の悪魔のような表情が・・!このドラマの中ではあの場面が一番強烈でした。

山崎豊子さんの作品は一時期たくさん読みました。長編作品は殆ど読破してます。人間の心の陰影が克明に描かれていてとても面白いです。著者ご自身がとても正義感の強い方であり、その思いがどの作品の中にも濃厚に反映されているように思います。多くの作品の中でも個人的には「白い巨塔」と「沈まぬ太陽」が双璧であると思います。山崎豊子先生本人がかかっていた国立大学病院の担当医師が突然、左遷されたことが病院の中の熾烈な権力闘争に関心をもつきっかけだったと何かで読んだ記憶があります。

虚栄心、名誉心に満ち溢れていて嫌味なくらいギラギラした野心家で非情なところもある財前なのに、何度もドラマ化され、これほど魅力を感じるのはなぜかなと考えながら見ていました。強い野心の部分と同じくらいの程度、この人、実は弱くて、また完全な悪人になりきれない人間らしい部分も見えたりするんです。そういうところに見ている側はひかれていくのではないかと思います。偉そうなこといいながらもいざというところで逃げるし、きちんと正面から相手と向き合うことができない弱さがあるんです。強い反発を感じながらも憎み切れず、ついその後を追ってしまうような存在なのかもしれません。実際の人間もこういう多面性があると思います。彼の周囲にいる女性二人。財前の「医学部教授」という肩書、彼の強さだけを見て愛したのがが妻であり、財前の人間的な狡さ、弱さを含めて受け止めていたのが愛人のケイ子さんだったのかと。

そして奢れるものは久しからずというか、人生が頂点を極めているとき、本人が幸運のピークにある時、本人が気づく前に実は内部で既に凋落が始まっているという。なんとなく平家物語を連想させるような部分も感じました。こうしたことも普遍的なことだと思います。奢る気持ちもほどほどに。人間は謙虚さを忘れたときが一番危ないときなのかもしれません。