91、92本目。

原題:SILENCE
監督:マーティン・スコセッシ
キャスト:アンドリュー・ガーフィールド、アダム・ドライヴァー、浅野忠信、
窪塚洋介、加瀬亮、リーアム・ニーソン
17世紀、江戸初期。日本で布教活動を行っていた高名なポルトガル人宣教師フェレイラが、キリシタン弾圧を進める幕府の拷問に屈して棄教したとの知らせがローマに届く。さっそく弟子のロドリゴとガルペが真相を確かめるべく日本へと向かい、マカオで出会った日本人キチジローの手引きで長崎の隠れキリシタンの村に潜入する。そして村人たちに匿われ、信仰を通じて彼らと心を通わせていく。やがてロドリゴたちの存在は、狡猾にして冷酷な手段を駆使して隠れキリシタンをあぶり出しては、彼らに“転び(棄教)”を迫る長崎奉行・井上筑後守の知るところとなり…。〜All Cinema~
2016年アメリカ/イタリア/メキシコ映画。今回もとてもいい映画を観ることができて良かった。遠藤周作さんの小説が原作です。私自身、10代の終わり頃に小説「沈黙」を読みました。江戸時代、キリスト教弾圧の世にあって多くの切支丹が拷問され苦しみながら死んでいく描写があります。人々の苦しむ声だけが聞こえる中、祈りに対して返ってくるのは「沈黙」という。「神」がいるならなぜ沈黙したままなのか。その沈黙に対しどうして信者たちはなおも神を信じようとするのか。信仰というものに対して初めて深く考えた作品でした。一回しか読んでない小説なので大方のストーリーは忘れてしまいましたが、この小説を読んだことをきっかけに「信仰とはなにか」という想いはずっと頭の隅に残っていました。
そういえばスコセッシ監督が遠藤周作さんの小説をもとに映画を撮ったと思い出し、探してみました。監督自身も25年以上も前から映画化を考えていたのだそうです。スコセッシ監督の作品は暴力シーンが多くて苦手でした。しかし、どんなふうに解釈されて映像化されているのだろうか、と興味が先だって観てみることに。やはり残酷シーンがとてもリアルでした。本能的な恐怖に訴える人間の叫び声など、観ていてとても辛く過酷な映画でした。人間をギリギリの状況にもっていくことでその精神の在り方を炙り出す感じでした。
ポルトガル人宣教師に棄教を迫る日本人の奉行。そのために彼でなく他の日本人信者らを拷問にかけるのです。そこでも信仰を貫くことは正しいのか?そんな場面がありました。キリストは目の前で苦しみ死んでいく人を犠牲にしても自身の信仰を維持したのだろうかという。この場面やポルトガル宣教師らの言葉などからスコセッシ監督の目を通した日本人と西洋人の神の概念の違いなども語られています。窪塚洋介の演じるキチジロー。とても卑怯な人間にみえたけれど人間の弱さを彼のキャラに集約しているような気がしました。
時代考証とかもかなり緻密にされている感じがしました。ハリウッドで映画になるとやっぱり全然違う感じ。そしてやはり当時の宣教師らの勇気には本当に驚くばかり。今の時代ならPTSDどころではないくらいの経験・・・。
機会あれば原作となった小説を再び読んでみたいと思いました。



原題:An Inconvenient Truth
監督:デイヴィス・グッゲンハイム
キャスト:アル・ゴア
民主党クリントン政権下で副大統領を務め、2000年の大統領選挙では共和党ジョージ・W・ブッシュ候補と激戦を展開、前代未聞の大接戦と混乱の末に敗れ去ったアル・ゴア氏。その後は、自身のライフワークとも言える環境問題、とくに地球温暖化への対策の緊急性を訴え全米を中心に世界各地で精力的な講演活動を続けている。本作はそんなゴア元副大統領の講演活動の日々に密着、豊富なヴィジュアル素材と巧みなトークで分かりやすく構成された鮮やかな講演の模様を紹介するドキュメンタリー。~All Cinema~
2006年アメリカ映画。この映画が上映されていた当時、気になっていたのだけれどやはり仕事が忙しくて映画館に足を運ぶことなく終わってしまっていました。これも観ることができて良かった。アル・ゴア氏の語り口はなんだかあまり政治家ぽくない感じがします。学者ぽいというか。正直すぎる人に思えてしまう。
見終えてまず思ったのが、「アル・ゴア氏が大統領になっていたらその後の世界は随分違うものになっていたのではないかしら」ということ。ブッシュ大統領のようにごり押しでイラク戦争に突っ走ったでしょうか。ヨーロッパとももっと協調路線を歩んでいたのではないだろうか、とか。
このドキュメンタリーの中で伝えられる温暖化の事実、とてもわかりやすく説明されています。12年前の映画だけれど環境の悪化はその時の予想通りになっているのに。温暖化問題はモラルの問題であり、政治問題であるということ。人類が本気で軌道修正すればまだ救いはあるということも。続編があるのでぜひ見てみようと思います。