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お盆休みは主に家で映画を観て過ごしました。
終戦記念日と重なることもあり、平和の有難さを認識しなおすためにもと、太平洋戦争をテーマとした「父親たちの星条旗」、「硫黄島からの手紙」、「男たちの大和」を鑑賞しました。

全て10年以上前の作品です。私は「父親たちの・・」と「硫黄島・・」は上映時に映画館で観ており、Amazon primeで再視聴。スティーブン・スピルバーグがプロデューサー、クリント・イーストウッドが監督を務め、太平洋戦争の激戦地となった硫黄島での戦いを日米双方の視点から描いた二部作です。

当初イーストウッド監督は「父親たちの星条旗」の原作を読んで、それをのみ映画化する予定だったようです。しかし、映画製作の過程で日本側にも硫黄島戦を指揮した栗林中将という大変立派な司令官がいたことを知ります。それでアメリカ側からと同様に日本側からも、「母国のために戦った若者たち」の姿を描いてみようとなった・・・という経緯があったそうです。

両作品にいえたことですが、戦争の残酷な現実を冷酷に、淡々と伝えています。そこには戦争を「美化」するものは一切なくて、これが戦争というものです、という強烈なメッセージが伝わってきます。そして戦場で戦うのはどちらも若いひとたち。どちらが正しくどちらが悪ということはなく、ただ自分の国のために命懸けで戦っていた、それだけが事実であるということです。

戦争の末期、日本軍は補給も殆ど途絶え、もう負けること必至の状況だったのですが、敵の日本上陸を一日でも遅らせるため、兵士たちはその目的のための捨て駒として死んでいきました。当初、米国側は硫黄島は3日もあれば陥落できると楽観視していました。しかし栗林中将の指揮下で日本軍は1か月以上持ちこたえ、米軍側に対して太平洋戦争最大の犠牲をもたらしました。こんな絶望的な状況にありながら2万人を超える軍を指揮した栗林中将の姿に大変感銘を受けました。

翻って、米国側(父親たちの星条旗)。容易に陥落できると思っていた日本軍は決して容易ではなく、米国兵士からみた日本軍の攻撃が非常に恐怖であったことが映像から伝わってきます。死と隣り合わせの戦場から生きて母国に戻った若者たちは、そこで日常に戻れるわけではなく、今度は戦争継続のための戦時国債の資金集め、国威発揚のために利用されるだけ利用されます。そして終戦と共に用済みとなり、捨てられてしまいます。星条旗を抱えている6人の若者のうち3人は戦死、生き残ったうち1人はその後、アル中で亡くなり、もう1人も歯車が狂った人生となり、結局は不幸なその後だったと。勝者の側にいた彼らもまた犠牲者であり、人間の生活のあらゆる側面を破壊してしまうのが戦争であることを感じました。

12年前、この映画を観た後で、原作を取り寄せて読みました。


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星条旗を掲げている若者たちの一人を父に持つ著者が、父親の死後、遺品整理をしていた時に戦時中の資料を見つけます。それら資料や、かつての戦友から聞いた話をもとに書かれた一冊でした。硫黄島の山頂で撮られたこの写真はピューリッツア賞写真部門を受賞して有名になりました。

著者は子供時代、学校の先生をはじめとする大人たちから「あなたのお父さんは英雄だ」と誉めそやされてきたそうです。でも実際の父親はいつもその話題をふると嫌そうな顔をし、家庭内では戦争の話はタブーであり、生前は一度として戦争の経験を語ってくれたことはなかったと。著者は取材を重ねるうち、父親の沈黙の裏にはとてもとても言葉にできなかった悲しみがあったことを知ります。それがこの映画で描かれている内容でした。

10年以上経って見直してもやっぱりすごくいい作品だと思いました。米国人が監督した映画とは思えないくらい日本人の心情も穿っています。イーストウッド監督は日本とかアメリカとかの国籍を超えた「人間」というレベルで当時の若者をみていたからではないかと感じました。


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これも10年以上前、上記2作と近い時期に上映されていた作品です。
当時、周囲にいた人たちから「感動した」「よかった」と聞いていたのに
映画館に足を運ぶ機会がなくて見逃していました。

今回鑑賞してみて、残念ながらこの作品に対する私の評価はかなり低かったです。
ハリウッド作品2本の後に観たということもありますが、映像の全てがあまりにも「ちゃっちい」のです。戦艦大和の壮大なスケール感がどうも伝わらない。

それから一部の戦闘場面を除くと流れが悠長すぎてあまり戦時中という緊張感が伝わってこない。特攻計画が実行されはじめた絶望的な戦争末期のぼろぼろな雰囲気も出てない。あと、これが致命的(と私が感じたのですが)なのは、作品全体が常に感傷的な視点からのみ描かれていることでした。戦争を美化していると解釈されかねない危うい感じ。ヒューマニズム的な面にフォーカスした場面がたくさんあります。一見、感動させようという意図まんまんです。でもひとつひとつの心情描写がどこか「浅く」、「薄っぺら」な印象に終始しています。私には興ざめでした。やはりハリウッドのポール・ハギスの脚本に軍配があがります。