
数年前に書店で購入していたのに長く本棚で眠っていた2冊でしたが
「もっと早く読めばよかった!」と思った内容でした。
本書は著者があるニューギニア人からこんな質問をされることから始まります。
「あなたがた白人はたくさんのものを発達させてニューギニアに持ち込んだが
私達ニューギニア人には自分のものといえるものが殆どない。
それは何故だろうか。」
このニューギニア人からの問いに答えるというかたちで始まり、
そのトピックは非常に多岐にわたって展開していきます。
人類が生まれたのはアフリカ大陸でありましたが、なぜ今日の世界は西洋人が
支配するかたちになってしまったのか。
なぜアフリカ人がヨーロッパを征服するという展開にならなかったのか。
またなぜ新世界(アメリカ大陸)の人々がヨーロッパ人に征服され、その逆には至らなかったのか。
長い長い人類史における民族の興亡を独特の視点から見つめる著者の姿があります。
タイトルの「銃・病原菌・鉄」はヨーロッパ人が他の大陸を征服できた
直接的な要因を凝縮して表現したものだといいます。
銃や鉄はすぐにイメージできましたが、病原菌がその要因とは?と思いました。
病原菌とはチフスやコレラ、インフルエンザなどヨーロッパ大陸の風土病、伝染病のこと。
ヨーロッパ人の新大陸上陸後、銃や鉄の武器で殺された先住民の数より
これらの伝染病に罹って死んでしまった先住民の数のほうが多かったということ、
部族ごとほぼまるまる伝染病で全滅ということもあったというのは驚きでした。
なぜ旧大陸の人間はそれら伝染病に対する免疫をもっていたのか。
病原菌は家畜から人間が罹患したことで広まるようになりましたが、
ヨーロッパ大陸では人間の数が増える以前から家畜化しやすい動物の数が多く、
世界の中でも先立って動物の家畜化が進んでいました。
彼らは長い期間をかけて病原菌に対する免疫を獲得していたのに対し、
新大陸の人間は全く免疫がなかったことが災いしました。
この他にもヨーロッパは地理的に栽培化できて、かつ栄養価の高い穀物の種類が
地球上の他の地域に比して多かったことも有利に働きました。
食糧生産が増えることで人口が増え、人口が増えることで社会は大型化、多層化し、
競争が生まれ、生活のあらゆる面において改良がみられます。
決して白人が先天的に優秀というわけではなく、
たまたま、ヨーロッパ地域が社会がより速いスピードで発達する条件に
恵まれていたからということです。
地球ができた時にあちこちで爆発があって溶岩が流れて固まってできた地形、
それが1万3000年にわたる人類の宿命を決めてしまったなんて。
読んでいて日本神話で神様がぽこんぽこん・・・と日本列島を作り出した
国産みのくだりを想起してしまいました。
その偶然の産物がその後気の遠くなるような年月をかけて
現代の大きな格差社会にもつながっている・・・という。
800頁に及ぶ大作でしたが、読み終えて感じたのは
人間を含めた生き物の本質って「競争」に尽きるのではないかということでした。
私は著者のダイヤモンド博士のことを詳しく知らずに読み進めていました。
こういう本を書かれるくらいだから文化人類学者とか歴史学者かと思っていましたが
実際のところは医学部の教授をされている方なのだそうです。
途中で専攻を医学から生物学に変更しておられるそうですが
本書では自然科学の分野だけでなく、
言語学、歴史、文化などにおいても深い言及があります。
あちこち至るところで知的好奇心を刺激されます。
本当に「知的に」面白いです。
長編で読みとおすのに結構根気がいるかもしれませんが、
投資した時間以上のリターンがある内容だと思います。
今月読んだ本は合計で11冊でした。(#^^#)
