
好きな現代の作家さんのお一人で、新作が出るとチェックしようとしています。
・・・が、本当にすごいスピードで次から次に著作を出されるので
読むほうがついていけないという・・・(一一")
本当に「知の巨人」なのですね。
30代~40代の若手の論客5名、それぞれとの対談集です。
バブル経済の追い風を受けてきた世代の著者と
好景気を知らない団塊ジュニア以降の彼ら。
世代を超えた対談ですが若い世代ならではの視点など
大変興味深く読みました。
この本も付箋の添付箇所が多すぎる一冊に。
なるほど、と思い気づきを与えられた箇所をいくつかメモしておきます。
*結局ツイッターは自分が好む意見を集める、自分自身の「世間」を作るメディアだと思います。~ただそれだけだと「自分の意見は社会全体からしたら少数派かもしれない」という客観的な視点がなくなってしまいますね~
*どの世代もつい自分たちの価値観からものを見てしまいます。だからこそ話し合いやお互いを尊重して理解しあう姿勢が必要になってくる。
*スウェーデンの男女平等は国家が合理的な理由で推進してきたものです。「福祉が手厚い」というのも見方を変えれば家族の権利を国家が奪っていった歴史ともいえる。北欧は合理性を追求した民主主義の実験場といわれることがありますが、ある面ではナチスドイツが果たせなかった夢を追っているような国々という印象~
*憲法にしてもその他の社会改革にしても「何かを変えたい」という欲求を持つのは、現状に不満がある人たちです。しかし現状の不満を正しく分析もせず、ただ何かを変えたいという思いだけで進んでしまうとどうなるのか。歴史を振り返ればファシズムに行きつくことになります。いまの状況が改善される保証がなくとも「とにかく変えてくれる人」に付いていってしまう。変えることだけが目的化する。(・・・少し前の選挙を思い出しました)
*たいていの場合、おかしな言説はほうっておいても淘汰されるか、弱まっていくのですが。ただそれが時の権力者だったりすると、そのまま政策が通る。怖いよね。~政治は正確さで判断されるのではなく、その時に力のある権力者の意見が通るものですから。
*実際にいじめのターゲットになりやすいかどうかはソーシャルスキルの有無と非常に深く関係しています。~暮し向きの悪い家庭の子供ほどいじめのターゲットにされやすい傾向~教育資本の投資が少なく、ソーシャルスキルを身に着けるタイミングを逸してしまっているから~つまり、経済階層がいじめとも関係してしまう。いじめは教育問題だけでなく労働問題や貧困問題、差別問題など複数の視点から検討しなくてはならない~ソーシャルスキルは生まれつき備わっている能力ではなく社会の中で培っていく技術だから~
*いじめって圧倒的にストレスの高い閉鎖空間の中で起こりやすい。~加害者が「自分がいじめをしている」という自覚を持っていないケースも多く、結果として被害者の声は残りません。するとその場所では「もともと、いじめはなかった」ということになります
(経済学者A・ハーシュマンのExit(退出・離脱)、Voice (発言・抗議)の分析概念)
とどまった人間のVoiceだけが残されていれば偏った風潮であっても「伝統」「社風」という言葉で片づけられてしまう。「残った者にとって居心地のいい場所」として温存されていき異物は排除される。
著者がかつて身をおいていた外務省の話題も。
他人を(文字通り)見殺しにしてしまう外務省内での
殺伐とした会話のやりとりが澱のように
ココロに残っています。省内での陰湿過ぎるいじめや
パワハラの話なども本当にあった話なんだろうな・・と
想いながら読みました。(´・ω・`)

著者の作品では社会問題、政治問題を扱ったものが多いですが
個人的にはご自身の過去を振り返った学生時代のこと(「先生と私」、「同志社大学神学部」)や
英国留学時代のホームステイ先での少年との交流を描いた「紳士協定」などがとても好きです。
この作品も著者が外務省に入省してから英国留学時代の現地で出会った人たちとの交流を
描いたもの。イギリスの見えないけれど厳然として存在する階級社会の壁を感じます。
労働者階級出身のイギリス人海軍士官、チェコから亡命してきた知識階級のひとたち・・・
帝国主義を築いたこの国の中でマージナルな存在として生きる人々が多く登場します。
彼らのことをリスペクトし、互いの理解を深める佐藤さんの誠実さと知性をそこかしこに感じます。
チェコから亡命してきた古書店店主との互いの人生観に影響を与えるほどの交流を描いた箇所からは
静かな感動を得ました。
またチェコから亡命してきた神父さんが、日本政府の台湾に対する姿勢を非難する箇所が大変印象に残りました。
日本は大国中国に気兼ねするあまり台湾にたいしてあまりにも誠意のないことをしているのではないかという
神父さんの言葉。(先の書籍ではいじめについて触れた箇所がそうでしたが)強い立場、優位にあると
つい気づかずに通り過ぎてしまうことが世の中にはたくさんあると思います。
「民族間の問題」というと普段の生活からは少し遠い問題に思えますが、
その感覚を普段の生活に敷衍してみるとどうでしょう。
自身よりも弱い立場や劣位にある人に対して自分は知らず知らずのうちに
ぞんざいな態度をとっていないか・・・考えてしまいました。
それにしても他者と、これだけ深い交流ができるなんて。
そこが素晴らしい。
誰に対しても公平で分け隔てない心で接しておられるのだろうな、と。
これからも佐藤さんの書籍はずっとフォローしていきたいです。

今月の読書は全部で10冊。家に籠っていたわりには雪かきが大変だったのであまり読書に集中できませんでした(笑)そろそろ春めいてきました。ここ数日、青空がみえ気持ちも少しづつ上向いてきたこの頃です。(#^^#)